第22話 女奴隷達に生きる力を与えたよ

今日でこのキャンプ地で治療を始めてから3日が過ぎました。

そして、取り合えず全員とも死なない程度までの治療は終わったんだ。


でも、ここで問題にぶち当たってるんだ。

それは、女奴隷達が生きられる様に成ったのに、一向に生きたがらない事だ。


まあ、まだ生命の危機を脱した段階で身体に与えられた破壊の後はそのままですから、なかなか生きる気力も湧きにくいと思います。


でも、あまりに生への執着が無いと、女奴隷たちの心が壊れたままで終わるのではないかととても心配になるのです。


僕は、彼女達に生きるという意志を示してほしいんです。

この問題は僕だけの手には余ります。

なので、父さまに相談してみました。


「父さま、父さまにご相談したい事があるんです」


父さまはちょっとびっくりしてますね。

そう言えば、こんな風に父さまに頼るのは初めてかも知れません。


「なんだ、オイゲン。父さまに出来る事なら何でもやってやるぞ」


父さまが嬉しそうですね。

やっぱり、子は親に頼らないといけませんね。


「ご相談したいのは女奴隷達の事なんです。

オイゲンは頑張って女奴隷達を助けたと思うんです」


「そうだな、オイゲンがいなければみんな死んでいたな」


「はい、でもそれはオイゲンが彼女達を必要としているからで、別にオイゲンは彼女達に感謝されたいわけではないんです。

でも……」


「でも、なんだ」


「なんだか、オイゲンは自分だけが空回りしている気がするんです」


「空回りか、なんでそう思うんだ」


あれ、意外に父さまは相談事に慣れていますね


「ハイ、彼女達の無気力な瞳がオイゲンに伝えてくるんです。

余計な事をして、私達は死にたかったのにって」


「そうか、瞳が死にたいと言ってるんだな。でも何で瞳は死にたいって言うんだろうね」


「オイゲンは死にたいと思った事が無いので判らないです」


「なら、オイゲンは何のための生きたいと思うんだ」


「なんの為に生きたいかですか?

オイゲンには難しすぎる質問ですね。

死ぬ事を考えた事が無いオイゲンには、生きると言うことは当たり前ですから」


「そうか、オイゲンはまだ生きる事に意味を必要としないんだな。

では、彼女達はどうなんだろうね。

生きる事を諦めた彼女達は今更生きる事に意味を見出せるのかな」


彼女達の生きる意味ですか?

父さま、難しいです。

でも、オイゲンは生きる意味が彼女たちを救うキーワードな気がするのです。


だから、企みます。

題して、貴方は此処まで綺麗に治る(ベンチマーク提示)大作戦です。


まあ、要はひとりを先行して徹底的に治しちゃおうという企画です。

徹底的に治った子を見て、自分も幸せだった頃の自分に戻れると感じた時。

その時、過去の輝いていた自分を思い出して、思い出した過去の自分から生きる意味を気づいてもらう。

そんな作戦です。


父さまに相談した次の日の朝、僕は女奴隷たちを寝かしている掘立小屋に向かいます。

そこは、藁の上に布を敷いた簡易なベッドが並んでいるだけの部屋です。


まずは、乱暴ですが、掘立小屋の壁の一面を取り除きます。

これはとても簡単に終わりました。

だって、壁って言っても藁が立てかけてある程度のものですから。


それでも、薄暗くよどんだ空気に満ちていた部屋は明るく、風通しが良い部屋に変わります。

これだけでも生きる力が湧くんじゃ無いでしょうか。


「みなさん、僕を見てください」


僕は女奴隷達に声を掛けます。

壁が無くなったことに驚いていた女奴隷たちは緩慢な動作ではありますが、顔を動かして声を上げた僕を見ようとします。

でも、その瞳には生気はありませんね。


「みなさんは、本来であれば、もう全員が死んでいるはずの状態でした。

でも僕はそんな貴方たちも命を救いました、救ったと思いました。

でも僕は貴方達を救えていませんでした。

だって、貴方達は生きようとしていませんからね。

まだ死にたがってますよね」


ここで一息です。

僕は彼女達を見まわします。

僕の言葉は届いたんでしょうか、ダメそうです。

いや、ひとり僕の言葉に反応している子がいますね。

ああ、あの子は最初に手当てをしたミルですね。

では、あの子に賭けてみましょうか。


「みなさん、皆さんは過去の自分、未来に色々な希望を持っていた自分には決して戻れないと思ってますよね。

でも、そんな事はないんです。

戻れるんです。


その為に僕は、貴方達の美しい顔を取り戻して上げます。

焼けただれた皮膚を元の美しい皮膚に戻して上げます。

失った目や鼻、指も取り戻せるんです」


ああ、良いですね。

片方だけ残っているミルの目に生気が戻っています


「でも、過去の体を取り戻した貴方達に未来への希望は、生きる意味は、それは僕では与えられないんです。

だって、それは貴方達の心の中にあるんですから」


僕はみんなの瞳を見つめます。


「僕は貴方たちにチャンスを与えられます。

でも、貴方たち自身がそう願わなければ、それは手に入りません。

貴方たちはそれを欲しますか」


ああ、やはりミルだけですか。

彼女だけには僕の言葉が届いたようです。


彼女は腕を一本失い、他の手足も骨を折られていました。

それほどの重症でしたから、まだ、立って歩けるほどには回復していないのです。


でも彼女は僕を見つめて、瞳に希望を宿します。

そして自分の力で自分を取り戻す為に、なんとか僕の元に来ようと足掻いています。


ゆっくりとですが這いながらミルは僕に近づいてきます。


ずり、ずり、ずり、ずり


この音はミルの生きる希望が生み出す音です。

僕の言葉を届かなかった女奴隷達達にももミルの出すこの音には届いています。


「はっ、はっ」


ずり、ずり


「はっ、はっ、はっ」


荒い呼吸を整えては、残された片手で身体を前に押し出しながらミルは近づいてきます。


「はっ、はっ、はっ」


ずり、ずり、ずり


彼女の寝ていた所から僕の足元までは数メートルでしょう。

僕が歩み寄れば、10歩程度の距離です。

でも、僕は動きません。


「はっ、はっ、はっ」


ずり、ずり、ずり


どの位の時間が過ぎたでしょうか。

遂にミルは僕の足元にたどり着きます。

そして言うのです。


「私は貴方を信じます。どうぞ私を救ってください。私の愛しい天使様」


そして、私への最大の敬意としてミルは僕の足先にキスをします。

素晴らしい、合格です。

僕は全力でミルを直しましょう。


「ミル、よく頑張った。ミルはよく頑張ったよ」


そうミルに声を掛けて、抱き起こします。

と言っても僕は5歳ですからね。

実際に抱き起こしたのは父さまです。


「ミル、ミルを治すためにおっぱいを吸うよ、良いよね」


最初にミルの身体の欠損を直すんだ。

僕は、心に強く念じてミルのおっぱいに吸い付きます。


ミルと僕の強い思い。

ミルからもらった魔力はその思いに答えてくれるはずです。


ミルからもらった魔力が指先に満ちてきます。

でも、足りません

僕の持っている魔力も足しましょう

そして、光の中から二本のポーションが現れます。


身体の欠損を治す飲むポーションと掛けるポーションの2本です。

先ずは飲むポーションをミルに与えます。


ミルがポーションを飲み干したので、僕が掛けるポーションを治したい欠損部位に掛けてゆきます。

まずは、潰れている目。

この目にポーションを掛けましょう。


僕がポーションを目に掛けると、ミルの潰れた目が修復されて目に光が戻ります。

醜く潰されていた目が綺麗なライトブルーの瞳に戻ったのです。


「見えます、見えます。ああ、天使様、ありがとうございます」


美しく戻ったミルの瞳から涙が溢れます。


でも、まだ始まったばかりです。

次は焼けただれた頭皮です。

僕がポーションを掛けると焼けただれた頭皮は綺麗に皮膚に戻り、髪の毛も10CMほど生えてきます。


「ミル、君は美しいね」


僕が掛けた声でミルがハニカミます。

そして、掘立小屋の中の女奴隷たちの驚きの声も聞こえてきます。


「奇跡よ、奇跡だわ、ああ、なんてことでしょう。美しいミルが戻ってくるなんて」


そんな声が聞こえてきます。

そして、先ほど飲んだポーションが効きだします。

ミルの口の中や、指が光りだします。


折れた歯や切られた腱が復元してゆきます。

それを見た女奴隷達は言葉を失った様です。

只々畏怖の念でミルと僕を見ています。


まだまだ、これからです。

僕は残りのポーションを乳首が食いちぎられ醜い傷跡が残る右の乳房に振りかけます。

ミルの胸が光、その光が消えたミルの右の乳房は、左の乳房と同じ美しさを取り戻していますり

ミルの胸に美しい双丘が戻ったのです。


さて、ポーションは無くなりましたが、まだ治すところは残っています。


「ミル、体調は大丈夫かい」


「ハイ、大丈夫です」


力ずよい返事が返ってきます。


「では、君の未来の夫に僕は贈り物をするよ。

だから、もう一度おっぱいを吸わせてね」


さて、ミルの双丘を見るとポーションを得るために咥え続けている左の乳房が修復した右の乳房より大きくなってますね。

ここはバランスを取るために右の乳房から魔力を貰いましょう。


そう思い、ミルの右の乳房に手を伸ばすと、ミルはその手を左の乳房に導くのです。


「左の大きなオッパイは天使様の治療の証です。どうか続けて左のおっぱいを使ってください」


ミルは大きくなった左のおっぱいを誇りに思ってくれていますね。

僕はミルの心をくみ取り左のおっぱいに吸い付きます。


そして、4本のポーションを作り出し、そのポーションを使い残りの部分を直しました。

将来のミルの夫となる男に映るミルの身体は誰にも蹂躪されていない美しいものとなったのです。


ミルは未来の夫から初めての喜びも受け取る事でしょう。

僕がそう告げると女達からどよめきが上がります。

将来の夫に清い自分を捧げられると解ったのですから。


では、仕上げです。

最後のポーションを飲ませるとミルの全身が輝きます

衰えた体力をこの光が取り戻させたはずです。


「さあ、ミル、立つんです」


ミルが立ち上がります。

切り落とされた左腕こそそのままですが、それを除けばミルは美しい17歳の少女に戻っています。

そんな自分の身体に感激してすすり泣くミル。


そして、ミルの奇跡を見た女奴隷たちは嗚咽をあげながら、涙で滲む目に生気が戻っています。


「「「天子様、私にも奇跡をお与えください」」」


その声には生きようという意思がこもっています。


どうやら、僕の企みは成功したようです。


PS.

この日は結局あと1人同じ様な治療をして終えたんです。

そして、次の日、僕が思っている以上に女奴隷の皆さんは治療に積極的です。

ミルに心当たりはあるのかと聞いたところ、散々渋られた後で、真っ赤な顔で教えてくれました。


自分が清い身体を取り戻した事がどうしても確認したくて、治った2人で確かめ合ったんだそうです。

そして、お互いに相手にそれを見つけて、それがうれしくて大騒ぎをしたそうです。

そんな、2人の様子を見て、他の女奴隷達も奇跡を心底信じてくれたみたいです。


ちなみに、どうやって確かめたかと聞いて見たんですが真っ赤な顔で俯かれて教えてはもらえませんでした 。

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