第6話   到着からの出会い

 瑞江の猛攻をなんとかしのぎ涼真と両親は日本についた。12時間もありとあらゆるところを触られ、なめられ、揉まれた涼真は当然憔悴しきっていた。だがそんなことがあったとは口がせけても誰にも言えなかった。


 瑞江は何事もなかったかのように涼真に軽くウィンクをしていき去っていった。当然マチコは気づき涼真に聞いた。

 

 ”涼真どうしたの?顔色悪いわよ?” 涼真はあえて驚かずに

 

 ”いや、乗り物酔いでさ、あまり眠れなかったんだ。家についたらたっぷり寝るよ。”と返した。

 

 ”ならいいけど。”


 とマチコは言いながらカズオを見て”なにか言わないの?”遠いタゲに首を傾げた。


 カズオは何があったか大体想像はついているがあえて何も言わずに

 

 ”そういうこともあるだろ。”といった。


 家庭の輪が少し崩れているようにも見えたが

 

 ”そう。じゃあまずはどこかで美味しい夕食にでもしようかしら!イタリアンにしようかしら?フレンチも捨てられないわね!カズオどうする?”とマチコが明るく喋り始めた。涼真とカズオも安心し

 

 ”せめてお寿司で我慢してくれ。。。”とカズオは財布を開けながら言った。


 ”お父さん奮発してくれよ!よし、俺がうまそうなイタリアンの店を探すよ!”と涼真は言い検索し始めた。そこには小清水家本来の明るさが戻っていた。この選択があるヒトとの再会を早めるとも知らずに。



 涼真たちは空港近くにあったホテルに付属するイタリアンレストランにいた。むろん高級レストランであり、床には真っ赤なカーペット、シャンデリアもかかっており、店員は皆紳士的だった。

 

 ”きゃあー!嬉しいわ!久々ねイタリアン!アメリカのイタリアンはホントひどくてなかなか行けなかったのよね!”と少しカズオをにらみながら言った。それもそのはず。


 言い方が悪いがアメリカのイタリアンのレベルは小学校の給食レベルだ。そんなこんなで小清水家はめったに外食はせずに自炊をしていた。マチコが毎日料理してくれている恩を返すためにもカズオは今日奮発することに決めた。


 涼真たちはふかふかのソファーのある席に案内されメニューとにらめっこをしていた。3人ともこの機会になにを食べようか必死に考えた。15分以上無言でメニューとにらめっこをした末に涼真はカルボナーラ、マチコはタイのカルパッチョ、カズオは400gの特大ステーキにしたのであった。注文も終えようやく家族の団らんのときとなった。

 

 ”涼真は誰と会うのが一番楽しみなの?”とマチコは聞いた。

 

 ”うーん。まずはサッカー部のみんなかな。それと亜美にも早く会いたいなー。”涼真は顎をさすりながら言った。

 

 すると斜め後方の席でビクッとしている可愛らしい女性がいた。その女性はバレないようにさらに盗み聞きを続けた。

 

 ”涼真は亜美が好きなのか?そんなに会いたいってことは。”カズオは少しにやけながら聞いてきた。

 

 ”ち、ちげぇーよ!ただ仲が良かったから久しぶりに会いたいだけで好きとかじゃねぇし!”と頬を少し赤らめながら涼真は言った。ビクッとまたその女性が反応していた。そんなことも知らずにカズオは追求を止めなかった。

 

 ”おいおい、どうした?顔が赤いぞ?素直に慣れよー!”

 

 ”違うって!からかうな!もう!”


 と涼真が言い放った次の瞬間、涼真の斜め後方でドスンと誰かが椅子から落ちる音がした。涼真が振り返るとそこにはいた。そう亜美がいたのだ。

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