第2話 そのカノジョ

 そのカノジョというのは井上亜美,栗生高校に通う高校一年生だ。栗生高校は地元の栗生中学校のすぐそこにある一般的な高校だ。


 その高校の中で亜美は明るくとても人気があった。明るいといっても挨拶するときに笑顔になるだけだが。そんなカノジョについたあだ名は笑顔の天使。持ち前の美貌と合わさった笑顔はどんな男子生徒も ”おっふ(oh)”と言わせるほどの破壊力であった。


 もちろん告白は何度も受けている。入学直後にイケメン生徒会長に告白されるくらい亜美は全校生徒を虜にしていたのだ。

 

 だが亜美自身は自分がモテているとは気づいていなかった。なぜならカノジョはものすごく 鈍感 だからだ。何人もの同級生からアプローチされるも全く気づかず、軽くあしらっていることから彼氏がいるのでは?と噂されるほどだ。だが実際はまだ彼氏はいないのだ。彼氏がいないのはもちろんカレを待っているからだ。

 少し内気な亜美はヒトとしゃべるのはあまり得意ではない。

 

 ”天使今日も相変わらず美しいなー。”

 

 ”俺今日告白しようかな!”

 

 ”無理だ。諦めろ。お前じゃ無理だ。”

 

 ”おい!友達だろ少しはフォローしろ!”


 ”亜美さんは鉄壁と言われてるんだよ。どんなイケメンが告白しても。ごめんなさいとしか言わないんだよ。”


 その内気な性格が笑顔の天使とは真逆の鉄壁という異名もついたのだ。そんな男子の会話を聞いて親友の松本ななみ亜美におもむろに聞いてみた。

 

 ”ねぇねぇ亜美”

 

 ”おはよー。ななみ。”登校して席についた亜美にななみは聞いた。

 

 ”亜美はなんで彼氏作らないの?”

 

 ”そ、そんな彼氏なんでできないよ。私には。ほら私少し暗いしさ。”


 ”いや学校じゃバリバリ天使みたいに明るいじゃん!でも亜美気づいてるでしょ?何人も告白してくるじゃん?そうそうこの前の野球部のキャプテンで通算37人目だっけ?”

 

 ”何よその具体的な数字。たしかにそうだけとさ。まだ心の準備ができてないと言うか。。。”亜美は胸の前で人差し指をくねくねして小さな声でそういった。

 

 ”鼻血でそう”

 

 ”ななみ大丈夫?保健室行く?”

 

 ”ほんとに鈍感だね。冗談だよ!冗談!全く、漫画の世界じゃあるまいしそう簡単に受け入れられると困るんだけど。”

 

 ”え、漫画?”


 ”とーもーかーく、じゃあ亜美は好きなヒトはいないの?”


 ななみは亜美の顔を覗き込むように見た。身長165cmのななみに対して亜美は157cm。その身長差によって亜美はいまななみの襲われているようにも見える。次の瞬間亜美の顔はものすごい速度で赤くなった。

 

 ”い、い、いなないいよお!そんなまさかね!私好きなヒトがいるわけ無いじゃん!ほら私暗いしさ!”


 と明らかに動揺しなぜかさっきと同じセリフをいった。そんな亜美を見てななみは確信した。そしてニヤニヤしながら問い詰めた。

 

 ”絶対いるじゃん!誰々?先輩?同級生?はたまた女子?”

 

 ”だだからいないって!最後の選択肢イミフだけど!”

 

 ”教えてよー。誰にも言わないからさ!ね?ね?”

 

 ”その好きと言うかなんと言うか。。。”


 ”そういう感情は好きっていうの。ほら親友でしょ?教えて。”


 ”えっとその涼真くん。。。”


 ”ん?涼真?そんなヒトこの学校にいたっけ?”

 

 ”だから!中1に転校した涼真くん。”もう亜美のかおはトマト以上の赤くなっていた。

 

 ”涼真くん?えーー!その涼真くん?でも3年前に転校したヒトだよ?まだ好きなの?”

 

 ”そ、そうよ。なにか悪い?”

 

 ”いや、暗い亜美とのギャップがすごいなって。そんだけ涼真くんのことアツアツに好きなんでしょ?”

 

 ”アツアツなんかじゃないって!からかわないでよ!ふん!”そういった亜美はぷいっとななみから顔をそむけた。その仕草は実に可愛いものだった。”おっふ”そんな言葉が至るところから聞こえてきたのだ。

 

 それ以降ななみの追求を軽くあしらった亜美は駆け足で家に戻ったのだ。なぜなら涼真からメールで ”今日放課後帰ったら大事な話があるんだ”と言われたからである。亜美はまだしらない。数日後の愛おしい涼真が帰ってくるのだと。





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