49 日々、探求を怠らない

 体育祭、文化祭、修学旅行とイベントが目白押しだった秋が終わり。


 とうとう、冬を迎えた。


「とりあえず、クリスマスと年末年始が楽しみな感じかな?」


 俺は言う。


「その前に、期末テストがあるでしょう? ちゃんと勉強しなさい」


「安心しろ、ちゃんと勉強しているから」


 俺は先ほどから、桜子の部屋にてノートに鉛筆を走らせていた。


「確かに、さっきから随分と熱心ね。何の科目かしら? 国語? 数学?」


「いや、桜子だよ」


「へぇ、私について勉強を……えっ?」


「ほら、この前、また桜子の体を探求させてもらっただろ? おかげで、桜子がどのポイントで感じやすいのか、勉強できたんだ」


 俺はそう言いつつ、ノートに記した内容を見せる。


 そこには桜子の体の図が描いてあり、点でそのポイントが示してある。


「とりあえず、局所が感じやすいのは当然だとして。この辺りとか、意外なポイントで面白いよな」


「あなた……何を考えているの?」


「お前のことだよ、桜子」


「ドズキュン……って、バカ! ちゃんと勉強しなさい!」


「してるよ」


「してない!」


「ったく、うるさいなぁ」


 俺は鉛筆の平らな方で桜子の胸の上の部分を突いた。


「あんっ!」


「胸よりも、ちょっと上の所。筋肉と脂肪の境目の辺りがポイントだな。ちょっとズレると痛みが走るけど、的確に突いてやれば……」


 ぎゅっ。


「んああああああああぁん!」


 桜子は声を上げる。


「こんな風にエロく鳴く」


「バ、バカぁ……何をするのよぅ」


「それから、腕の肩の付け根に近い場所。ここも押してやると……」


 ぎゅっ。


「はううううううううううぅん!」


「中々に感じやすい」


「はぁ、はぁ……この前、あなたに体を好き勝手にさせたのは失敗だったわ」


「ふふふ、油断したな、桜子さん。もうお前の体は、俺のモノだぞ」


「そんなの、とっくになっているから……」


「ほう、殊勝な心がけだ。将来は、従順な嫁になりそうだな」


「この変態……もう好きにしなさい」


「いや、ちょっとくらい嫌がってくれないと、あまり興奮しないんだけど」


「ちょっとワガママじゃない!?」


「嘘だよ、素直な桜子は誰よりも可愛いさ」


「も、もう、またそんなことを言って……」


「それからな、このおへそ周りも感じやすいんだよ」


 ぎゅっ、ぎゅっ。


「あんっ、あんっ♡」


「ほら、お前も乗って来ただろ?」


「べ、別に……」


「ん~? 素直になったんじゃないのか?」


 ぐりぐりっ。


「うっ……きゅうううぅん!」


「痛いか?」


「……イタ気持ち良いです」


「そうか、それは実に良いことだ」


「この変態」


「お前もな」


「あなたのせいよ……」


「桜子、ベッドに行こうか。仰向けに寝転がって」


「勉強しなくちゃいけないのに……」


「お前はする必要ないだろ」


「あなたの話よ、バカ」


 俺は桜子の戯言など無視して、仰向けになった彼女の体に没頭する。


「手の平を向けて……そう。んでもって……こうする」


 ぐっ、ぐっ。


「んあっ……」


「手と足には色々なツボがあるからな。そこをグリグリしてやるだけで気持ちが良いし、お前はもっときれいになる。内面からな」


「本当に?」


「ああ。内面がドロドロしている桜子さんには持って来いだろ?」


「ぶっ殺すわよ」


「ハハハ」


「笑ってごまかさないで、腹の立つ男ね」


「よし、次は下半身を攻めようか」


「か、下半身って……」


「まずは太ももの……この真ん中辺り。筋肉が発達している箇所な」


 ぐっ、ぐっ。


「あんっ、あんっ」


 ぐりぐりっ。


「ああああぁん!」


「良い声で鳴くな」


「う、うるさい」


「けど、さすがだな。一見すると細いけど、しっかりと筋肉もある。しなやかで美しい体だよ、桜子は」


「え、そう? 照れちゃう」


「その上で、乳はデカいと来た」


 ツンツン。


「あんっ! ちょっと、今は下半身の番でしょ?」


「すまん、すまん。俺は山が好きなんだ。まあ海も好きだけど、水着が拝めるから」


「もはや意味不明だわ」


「ハハハ」


「その笑い方やめてちょうだい」


「ちょっと膝を曲げて……そう。んでもって、ふくらはぎのここを……」


 ぎゅっ。


「くっ……んあっ」


「ちょっと痛いけど、気持ち良いだろ? ほら、こむらがえりした時みたいな感じ」


「朝とか寝起きにふくらはぎがつっちゃうアレね」


「そうそう。痛いと気持ち良いは紙一重だから。俺はいつも桜子さんを苛めているんだよ?」


「とうとう言い切ったわね、この男。本格的に殺しても良いかしら?」


「同時にこむら体験」


 ぎゅっ。


「んっはぁ! ヤ、ヤバいこれ……痛いのに……気持ち良い」


「エロい女だな、お前は」


「ぶ、ぶっころ……」


 もはや、その言葉に力はない。


「じゃあ、最後はお待ちかねの……足つぼマッサージだな」


「へっ? 何よそれ? そんなの聞いてない……」


 ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぎゅうううううぅ!


「あんっ! あんっ! あんっ! あんっ! あああああああああああぁん!」


 桜子さんはひと際大きな声を出す。


「……チーン」


「あ、お亡くなりになった」


「……彼女を勝手に殺すな」


 今日もまた、桜子に対する理解が深まった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る