第42話
ゲームに見る主人公の哲学 42
公園に到着。来ていた上着を脱ぐ。
もうすぐ5月。徐々に暖かくなるとニュースで聞いてはいるが、
家を出る時はいつも肌寒い。
広場の隅にある青いベンチ。そこがいつもの場所である。
人通りは少ない。
「やろっか」
声のする方に視線を戻すと、
左腕と右腕をあご先に配置している姿が見える。
臨戦態勢だ。
静かだ。
審判がいない戦い。これからどう教えられるかも分からない。が、恐怖はない。
この1週間。ボクシングというものを一通り学んだ。
ジャブ、ストレート。
そう言われていたが、フックという攻撃方法も覚えた。
自分が変わっていく。レベルアップする感覚が楽しかったからである。
どうやって翔子を驚かそう。どんな褒め言葉を。。
空だ。
青い空。
目の前には青く広がる空がある。
彼女の構えを真似して、向かい合う。
「いくよ!」
から記憶がない。空がある。
「起きた?」
空の左に顔が見える。口元が動いている。
「ちょっとやり過ぎちゃったね」
やり過ぎたのが何なのかも分からない。
「人が見てるから、とりあえずベンチまで来て」
上体を起こし、視線が彼女と同じになる。
自分が倒れていた事実に気付く。
「頑張れ」
ただベンチまで行くだけ。それだけなのに。
彼女の応援が恥ずかしかった。
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