第39話

ゲームに見る主人公の哲学 39


もうすぐいつものトイレ。


3人がかりで僕を中傷し殴る。一条達の目的は分かっている。


「複数の人と同時に戦ってはいけない」


師匠の声が警告のように、何度も鳴り響く。


どうやって逃げよう。


ゲームなら確率はおよそ50%。


たたかう

にげる


それしか選択肢がないのはどうかと思う。


現実世界で同じような出来事に遭遇した時、何の参考にもならないからだ。


お手本がないのなら、自分で見つけ出すしかない。


たたかう


という選択肢も思い浮かぶ。僕もできる事ならにげたくない。


ただ、複数でたたかうというのは危険だと本能的に理解できた。


時折ポキポキと鳴らす彼らの指が、自分の不安を膨らませるのだ。


トイレに行くまでに図書室の前を通る。


図書室は「静かに」が原則の砦。


クラス委員の図書週間の件もあるので、図書室の先生とは顔を合わせたこともあった。


優しそうな女性の先生。名前は、、忘れた。


彼女のところまで行けば助かるかもしれない。


抜け出すにはポジションが重要だ。


一条、僕、取り巻き2人。


某RPGのように1列に並んでいる。友人なら横に並ぶのだが、


敵なら縦に並ぶ。そう考えると今の状況がおかしく感じられた。


「なに笑ってる?」

「なんでもないよ」


一条からのツッコミが入る。結構見張られているのが分かる。


一瞬の隙をつかなければならない。


図書室の扉が開き、そこに飛び込む一瞬の隙を。

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