第38話
放課後。
クラス委員での話し合い。
相手はもちろん一条だ。
「読書週間」
と書かれたプリントが1枚机の上にある。
それを2人で向かい合い、話をする。
放課後の生徒の行動。そのまま帰宅か部活。
教室に残るのは珍しく、僕と一条の他には数人。
その数人というのも、
一条の取り巻きだけだ。
クラス委員の仕事は読書週間に本を1冊以上読んでもらう。
という方法を考えるものだった。
「何か案はあるかな」
彼が何を考えているか分からないので話を聞いてみる。
向かい合う中、つまらなそうな顔で机の中心を見つめて一言。
「ない」
関心がない。それがすぐに分かる言葉だった。
「じゃあ、こっちで決めておくね」
このクラス委員という、一条と一緒にいなければならないという作業が苦痛だった。
こちらが作業を請け負ってしまえばもう彼と関わることもない。
「勝手に決めんな」
予想に反し、彼は言葉を続ける。
「お前、あれからも相沢と仲良くしてるよな?」
「仲良くって挨拶だけだよ」
想定内の質問だが、なぜか声がうわずった。
「近づくな」
一条の目つきがするどくなる。
「そういったよな」
ガタっ
音のする方に目を向けるといつの間にか一条の取り巻きがこちらに近づいている。
「どういうつもりなんだ」
「どういうつもりも何も」
「とりあえず行こうぜ」
矢継ぎ早に繰り出される言葉。
右手、左手、前方。3人に囲まれる形になる。
僕はそのままいつもの場所に連れて行かれる。
「まず複数の人間と戦うのは避けること」
彼女に言われた言葉を思い出す。
「え?」
「もともと3人組なんでしょ。相手のその。。」
「一条」
「そう!」
クイズの正解が分かったかのような満面の笑み。
「複数の人と同時に戦うっていうのはプロでも難しい」
思っていた通りだ。
「何が1番大変か分かる?」
複数で戦われるってことは。
「同時に攻撃されるって事かな」
思いつきで答える。急に彼女の視線が冷たくなる。
「同時に攻撃ってそんなの見た事ある?」
「ゲームで」
「ゲームでしょ」
食い気味で言われてしまった。同時攻撃という案はかなり稚拙なアイデアらしい。
「同時攻撃っていうのは近距離と遠距離とかそういう奴でしょ」
まさしく思い浮かぶ光景があったので「はい」と瞬時に答える。
「中学1年が近距離以外の攻撃方法を学校に持ち込めると思う?」
「あ」
よくよく考えればそうだ。校内への武器の持ち込みは禁止だし、
そもそも学校でケンカをするという行為自体、僕もあまり見かけたことがない。
あっても口喧嘩。実際に殴り合いに発展するケースというのはほぼない。
「複数で戦って1番問題になるのは体力」
「体力。。」
イメージが湧かない。
「人を倒すのって結構大変だよ」
彼女の倒すというのは押して倒すとか、そういったたぐいのものではなく、ノックアウトの事を指していた。
テレビで見ていたボクシングの試合を思い出す。
カメラのフラッシュを浴びる、鍛え抜かれた腹筋。それに裏づけされた強烈なパンチ。
それほど強力な武器を携えても、引き分けに終わる試合もある。
「とりあえず、1番重要なのは複数と同時に戦うのは避ける事!」
そんな彼女の警告を思い出しながら、僕は3人に連れて行かれただった。
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