第28話

ゲームに見る主人公の哲学 28

 

放課後。


「2人で職員室に来るように」


言われた事を実現しなくてはならない。


一条にトイレで絡まれて、うまく逃げられたもののさらなる試験が待っていたことを思い出した。


彼の机に目を向ける。


いつもの2人が集まり、いつものフォーメーションを形成している。


またトイレに行かされるのも面倒だし。


よし!


僕は席から立ち上がり職員室へ向かうことにする。


「2人で来るように」


という言葉は、「2人一緒に来るように」とは言っていない。


僕は昔のなぞなぞが得意なお坊さんの話を思い出す。


職員室への足取りは軽い。


自分は悪いことをしていないからだ。


突然トイレに連れて行かれ、ただ一方的な脅しと空振りの右ストレート。


僕が悪い要素が見つからない。


そう考えると、自然に職員室へ向かうのは楽しいことに思えた。


ゲームの中で王様に戦果を報告しにいくのと一緒だ。


そう考えると楽しくなってきた。


あの3人を見るまでは。


職員室の前に3人がいる。


僕が教室を出るときには教室にいたのに。


驚いた。テレポートは魔法だけの世界だと思っていたのに。


急に彼らに興味が湧いた。


一条が2人になにか言い聞かせている。


僕に気づいたのか、2人は立ち去り1人になった。


一条は微笑みを浮かべている。


トイレでの1件からの微笑みはありえない。


なにかある!


僕の中のエネミーセンターがそう告げる。


おそるおそる職員室の前に足を運ぶと、


ガラガラ!


「おお、来たか。入れよ~」


ジャスティスが現れた。


「2人一緒に来たな。よし、話をするぞ。」


彼はこの間の僕との交渉に使った、応接室と思われる場所に僕らを案内したのだった。

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