第24話

 3人組の行動は分かりやすかった。


先週の中庭掃除以来、相沢さんとそこまで接点がなくなった僕は、たまに相沢さんが話しかけてきておしゃべりをするぐらい。それに関しては一条達は何も言わなかったし、僕も意識していなかった。そう、あの時のホームルームまでは。


「ではクラス委員を決めようと思う」


担任の、ジャスティスの発言がクラスをざわつかせる。


「クラスの身の回りのことをしてもらう役目だ。立候補でもいいし、推薦でもいいぞ」


ホームルーム開始直後は少しざわついて先生の声が聞きとりにくかったのだが、今は誰も口を開こうとしない。


「動いたらやられる」


そんな緊張感すらただよっていた。


1分、


2分、


だっただろうか沈黙の中で、一筋の線がジャスティスへ向かって放たれる。


「お、立候補か」


その声のする方向を見る。


「一条」


ジャスティスに向けての挙手。それが意味するもの、それは。


「推薦です」


推薦だった。推薦にはいろんな思い出がある。


小学校の時、成績だけは良かった僕。


学級委員というものには何度か縁があり、立候補していないのに何度かなったことがあった。


そう、推薦で。この時も本能的なものだろうか嫌な予感がした。


「誰を推薦するんだ?」

ジャスティスの声が静かな教室に響く。


「橘君です」


一条の口角が上がる。正確に言うと上がった気がした。こちらの角度から彼の顔は見えないが思っていた通りの展開になった。


クラスの中が少しざわつく。


「橘って。ああ、あの」


みんなの人柱を見つめるような好奇な視線だった。


「橘、推薦されているが大丈夫か?」


こういった推薦の際の確認はほぼ無意味と言っていい。小学校の頃は成績のために何度か断ろうとしたこともあったが、


推薦者から挙げられた名前は、人柱として周りの人間へと総意を促す。


翔子の言葉を思い出す。


「嫌がらせを楽しむ。これが次のテーマかな」


頭の中に何かがおりてくる感覚。


「橘、大丈夫か?」


再びジャスティスからの死刑宣告。それに対する僕の答えは、


「僕も一条君を推薦します」


ガタっ!


大きな音とともに、一条が振り返る。さっきまでの余裕のある感じではなく、


「お前、何言いやがるんだ!」


声は聞こえないが、きっとそう言っている。そんな目だ。


「おい、静かに」


新たな人柱の登場で、クラスは新たな盛り上がりを見せる。


「候補二人になったぜ。しかも一条って。あの2人何かあるのか」

「いや、知らないけど。なんかあるのかも」

いつの間にかクラスの注目は僕ら二人に集まっていったのでした。

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