第22話

ゲームに見る主人公の哲学 22

 

図書館での翔子の指導の後、家に帰り鏡と向き合う。

「自分の子どもを大切に思っていないお母さんはいないんだって」

彼女の言葉を思い出し、自分の顔を見る。ここ最近は全く会話がなかった。

向こうが話そうとしているのは分かったし、学校のことを気にしていることも知ってる。

でも、お母さんが何を考えているのか。僕にはわからなかった。

「はじめ。ご飯よ」

下の階から母の声が聞こえる。

「よし!」

鏡にうつった自分に喝を入れながら、階段で下に降りていく。


 食卓には僕一人分の食事。母さんは同時に食卓には座らない。僕の食事を用意した後、自分のご飯を用意する。会話が少ないのは、このサイクルが原因の一つなのかもしれない。母さんが座るまで待ってみる。

「食べないの?」

少し首をかしげて作業を止め、不思議そうに聞いてくる。

「いや、母さんと一緒に食べようと思って」

「あ」

小さな声とともに、母の動きが早くなる。待たせて悪いと思っているかもしれない。


準備も終わり、母も食卓に着く。

「いただきます」

二人で手を合わせてご飯を食べる。今日は牛肉コロッケだ。幼いころから作ってくれたコロッケ。僕が小さいときにハンバーグのことをコロッケと間違えたため、母は今でも僕の好物はコロッケだと思っている。

「最近、学校はどう?」

母が話しかけてきた。ここ数日。学校が始まってから進んで話しかけてきたのは初めてかもしれない。

「友達ができたんだ」

母の目が大きくなる。まゆも徐々に上昇していく。相当びっくりしているらしい。

「はじめに?」

「僕以外に誰がいるの?」

「すごーい。おめでとう!」


以前の母は友達よりも成績の話だった。が、今の母はやっぱり純粋に喜んでくれている。

やはり母は変わったのかもしれない。

「心配してたのよ」

「ごめん」

「私の方こそごめん」

母は泣いていた。

何で泣いてるのか。

何に泣いてるのか。

僕にはわからなかった。だけど、


「友達ができて本当に良かった」

その一言に、「自分の子どもを大切に思っていないお母さんはいないんだって」翔子の言葉を思い出した。


僕の問題は彼女の手によって、また一つ解決したのでした。

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