第19話

ジャスティスは必死の形相で駆け寄り、

「何やってる!」

3人と僕の間を中を割るように入ってきた。

「一条、倉田、高橋」

ジャスティスが名前を呼びながら、3人の顔を確認する。

どうやら、それが彼らの名前らしかった。

「何もしてませんよ。なぁ?」

一条がこちらに目配せしてくる。


▷言う

▷言わない


頭の中に選択肢が浮かんだ。


「どうなんだ、橘」

「何もないです」


一条達の顔がゆるんだ。やはり先生に怒られるのが怖かったのだろう。

「本当か?」

再び聞いてくるが、

「本当に何でもないです」

「そうか」


ジャスティスは残念そうな顔になったが、すぐに普通の表情に戻り、

「お前ら、今日は遅いから早く帰れよ!」

「はい」

3人組は足早に去っていく。


「橘、本当に大丈夫なのか?」


三度目の質問。

「大丈夫です」

「そうか。それにしても」

ジャスティスが周りを見渡して、「一週間よくやったな」声を出しながら、僕の頭の上に手を乗せてくる。

「約束なんで」

「そうだな。約束だな」

その言葉に満足そうにジャスティスは3人の去っていった方向を眺めている。

「それでは僕は帰ります。さようなら」

「ああ」

先生に背を向けて歩き出す。

「橘」

「はい」

背中からの呼びかけに思わず振り返る。

「先生、力になるからな。なんでも言えよ」

「はい」


こうして僕の一週間が終わった。



「やっぱりすごいじゃない!」

場所は再び図書館の休憩室。話をずっと聞いていた翔子が声を再びあげる。

「なんか、冒険の話を聞いてるみたいだった。ワクワクしたもん」

彼女は思い出しているのか、視線を左上に向けながら色々考えている様子。

「一週間でいろんな体験したね。恋も生まれそうだし、ライバル出現。そして、味方になった先生」

「恋って・・・」彼女は目を輝かせて前のめりになる。

「恋よ!!」


重要なポイントなのだろう。試験に同じ問題が出るぞと教えてくれる先生の時と同じくらいポイントだという感じを出している。


「これからどうなるんでしょう」


今回の件がいい方向に進んでいるのか悪い方向に進んでいるのか分からない。


「ふふーん。また翔子先輩がアドバイスしてあげる」


そういうと彼女はカバンからノートとシャープペンシルを取り出したのでした。


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