第18話

喜ぶ翔子の顔に橘はじめからも笑顔がこぼれる。


「ありがとう、ございます」

「ん? 何かあった??」


彼女は違和感に気づいたのか言葉を重ねてくる。


「実は」


昨日の出来事を思い出しながら橘はじめは言葉を続けていく。



昨日の中庭掃除。

「今日で最後、さっさとやっちゃおうか!」

相沢つぐみも張り切って腕まくりをしている。

「そうですね」

「あ、また敬語」

彼女からの鋭い指摘に「おう」とちいさなあいづちで言葉を返し、掃除が始まった。


ザッザッザ


1週間も一緒に掃除すれば行動は似てくるのだろうか、2人のほうきはメロディを奏でるようにリズムを刻んでいる。


あうんの呼吸とでも言うのだろうか、2人が張り切っているのもあってあっという間に終わっていった。


「それじゃ!」


つぐみは余韻もなく、手を振ってこの場を去っていく。


「また来週~」


少しさみしく感じながら彼女の遠ざかる背中を見送っていく。


またという言葉の意味が関係の継続をあらわす事を僕はこのとき初めて知った。今までの僕だったらそんなことも感じなかったかもしれない。

その場の余韻を楽しみながら帰り支度の準備をする。

「おい」

ふいに声をかけられた。自分に投げかけられた言葉かも分からず、辺りを見回す。

開けていた掃除用具ロッカーの後ろに男の子が1人、2人・・・3人立っていた。

顔に見覚えがある。確か同じクラスの、

「おい!」

男の子の語気が強まる。僕の反応がないことに苛立ちを覚えたようだった。

「なんでしょう?」

3人の顔を確かめながら、敬語で答える。友達以外は敬語。心のなかで決めていたルールはこういった状況でも生きるんだと僕は初めて知った。彼らは僕を取り囲むように立っている。

用具ロッカーを背に僕は囲まれた状態だ。

「お前、つぐみに近づくなよ」

真ん中の男の子が口を開いた。

「つぐみ?」

「相沢つぐみだよ!」

僕が疑問を持って聞き返したのが不愉快だったのか、さらに彼の語気は強まった。目にも怒りの感情が伺える。


どうやら彼のイライラには相沢さんが関係しているらしい。でもそれなら、


「相沢さんは中庭掃除を手伝ってくれただけなので、来週からは一緒に掃除しないので大丈夫です」

「本当か?」

「はい」

「ウソをついたらどうなるか分かってるだろうな」


ウソ?。ウソをつく理由もないのでどうなるのかを頭の中で考える。


「おい、聞いてんのか!」


そう言った直後、


「お前ら!!」


突然大声が中庭に響き渡る!


「何やってる!」


声のする方向に目をやると、ジャスティスがこちらに向かって走って現れたのでした。


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