第14話
2人で黙々と掃除を行い、中庭はすっかりキレイになる。
「掃除って今日だけなの?」
「いや、一週間」
「それなら明日もだね!」
相沢さんは笑顔で微笑んでいる。
「それじゃ、お疲れ様~」
おでこにかいた汗を拭いながら、彼女は立ち去っていった。
一人になり考える、今日1日の出来事を。
朝の笑顔の練習から始まって、あいさつ。
そして、先生ジャスティスとの戦い。
こんなにいろんなことがあった1日は初めてだった。
小学校の時は家と学校の往復だった。
同級生と一緒に帰るという、学生として当たり前の行動も送り迎えの母の車に阻まれた。成績の話で母はすぐに感情的になったし、そんな母を悲しませないために一生懸命勉強した。
でも、それだけだった。
当たり前に学校へ行き、当たり前のテストに当たり前の結果を目にするだけ。
心臓が今でもドキドキしている。
先生と一対一で自分の要望を伝えた経験などなかった。新しい経験がたくさん。これが生きているということなのかも知れない。僕は新しく始まった1日をかみしめながら家に帰宅した。
中庭掃除3日目
「今日も頑張ろうね!」
「はい」
放課後の相沢さんとの合流も日常的になっていた。
「今日の授業おかしかったよね~」
彼女はいつものように授業の感想を言う。
あの先生がこうだとか、教え方がうまいだとか。そういった話が中心だ。なぜそう思うのかたずねると、さらに楽しそうに身振り手振りで彼女は話し始めた。
新入生代表をするぐらいだから優等生なんだろう。そんな事を思っていた僕は彼女の活発さに驚かされる。
「そういえば、橘くんは何部に入るの?」
ん?
「部活、入らないの??」
「部活・・・」
考えたことがなかった。
小学校の時は4年生になった時点で部活に入るという決まりがあったが、
成績をある程度とっているという母の主張で先生は説得され、僕には部活に入る機会が与えられなかった。
「相沢さんはどこに入るの?」
「私はね~」
顔を赤くして、恥ずかしそうに「バスケ部」と答える。
「へぇ~。相沢さんって運動できるんですね!」
「えへへ。本当はそんなにできないんだけど、憧れの先輩がいて。その人と一緒にバスケやりたいなって。」
彼女は目を閉じて思い出しながら話している。よっぽど好きなんだろう。
「今ならいろんな部活の先輩達が勧誘とかしてるから、聞いてみるのもいいかもしれないよ」
「そうですね」
友達を作るには「ギルド」ゲームでよくある展開。
部活に所属して友達を作るのもありかもしれない。
僕の中で新たな考えが生まれたのでした。
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