第3話

日曜日の朝は気分がいい。人も車も少ないし、空気もおいしい。

こういう日に最初に向かうのは図書館。

勉強のために通い始めたのがきっかけだが、ちょっとした分からないことがあった時も図書館が答えを教えてくれるときがある。


「本っていうのは人の先生なんだ」


父の口癖だった。橘はじめの勉強とゲームだけに偏った生活を何とかしようと思って放った彼の一言だったが、はじめ少年は素直に受け入れて本を好きになった。

「おはようございます」

「おはようございます」

いつもの受付のおばちゃんと挨拶を交わしながらロッカーのカギを受け取る。大きな図書館はロッカーに荷物を預けてから、席で勉強をする。席もキープして、早速目的の本を探しに行く。


高い本棚の間を通り抜けながら、本の選択にいそしむ。

ゲームの世界では「仲間」という言葉の方が馴染みが深いが、「仲間の作り方」みたいな本はなかなかない。仲間という言葉自体も集団を指す言葉であって、今まで友達もいなかったはじめにはハードルが高いような気がした。

「友達」

頭の中のもやが晴れていく感覚。

そうだ!。友達だ!

「仲間になってくれ」

知らない人に言われると警戒する言葉だが、

「友達になってくれ」

の方がまだソフトかもしれない。

早速、友達と書いてある本を探してみる。

あったこれだ!



「友達の作り方」



B5サイズで総ページ数が約560ページ。表紙には大きくタイトルが書かれている。早速手に取り、キープしていた席に戻る。ガラガラだった図書館も午後に近づくにつれて人が増えてきた。目次に目を通しながら、なんの情報を得られるか精査する。情報によると、

「どんな人でも友達が作れる」

といった内容らしい。はじめにとって心強い響きだった。本を広げ、さらに読み進める。



「ねぇ。友達になってあげようか!」



声が聞こえる。



「ねぇってば!」



自分の右肩に何かがのしかかるような感覚。

その重量が気になって、振り向くとそこには髪の長い女性が立っていたのだった。

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