第2話

中学校に入学して数日。

登下校の際、橘はじめは考える。

中学校生活を満喫するためにはどうしたらいいか?

ゲームの展開だと、酒場などにいって仲間を集めるか?。

もしくはイベントが発生して仲間になるとか。

そういった展開が望めるのだが・・・。


母親に言われた通り生きてきた彼にとって、友達というのは勉強の妨げになるとしか教えられてこなかった。

ゆえに彼には友達がいない。


彼は考える。どうすれば仲間ができるのか?。

こういう時主人公は・・・。


そうだ! アイテムだ!


相手にとってメリットのあるモノを渡して仲間にするというのを見たことがある。

あの伝説の英雄「ももたろう」でも、イヌ・サル・キジをきびだんごで従わせていた。

きびだんご1つで、鬼ヶ島まで行き、命がけで戦わされる。

あの当時は3匹の忠誠心をすごいと感心したものだったが、今となっては「ももたろう株式会社」という名のブラック企業だったのではないか?。と疑ってしまう。

とりあえずキーアイテムを探そう。

そこに答えがある。そんな気がする。


日曜日。

いつものように朝の勉強を終えて、朝食を食べる。

「学校はどう?」

「普通」

「そう。お友達はできた?」

「これから」

「そう。頑張ってね」

母との何気ないやり取り。

というより、接し方を知らないというのもあるのかもしれない。


ゲームで見る家族関係は、主人公はしゃべらないし一方的に母親キャラが喋ってくる。

だいたいは気遣うような話とHP回復の宿屋の印象。もちろん、身内なのでお金を取られない。なので最初のうちは自分の家を拠点として活動する。今の自分がそうだ。

現実の母親はいろんなことを話してくる。橘はじめの母もその一人。


「ただいま」

「おかえり」

「今日、学校でね!」

「テストはどうだったの?」

「うん。満点だったよ」

「よかったわぁ~」

「ママ、聞いて」

「次のテストも頑張らないとね」

「うん・・・」


小学校の時に何度も続いたやり取り。

さすがに彼女の主張が繰り返される中で気づいてしまった。


この人は僕の成績にしか興味がない


そんな母と成績以外で何を話したらいいんだろう。

答えはゲームの中にはなく、

「自由」という現実世界の中で見つけていくしかない。


そんな事を思いながら、橘はじめはアイテム探しに家を旅立ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る