第25話


 拠点に戻ってきた俺は、それからウルフとゴブリンに拠点を簡単に紹介した。

 ……二体とも、暮らせる場所が必要だよな。


 まずはそう思い、ウルフには犬小屋を、ゴブリンにも小さな家を作ることにした。

 とりあえず、あまり木材を消費しないで済む犬小屋から作ろうか。

 ウルフくらいなら、俺の家で暮らしてもいいけど……まあ、あったほうがいいだろう。


 ゴブリンはダメだ。絶対こいつうるさそうだからな……。

 アイアン魔鉱石で作成した斧で木を切る。ゴブリンにも教え、伐採を行ってもらう。

 ……この辺りの木は幹を残しておけばすぐに生えてくるからな。栽培スキルがレベルマックスにあがったことで、かなり成長が早い。


 むしろ、不必要な木はきちんと火で焼いて処分しないと、あっという間に拠点周囲が森になってしまうほどだ。

 まあ、俺の栽培の範囲に入らないようにすればいいだけだ。


 犬小屋を作るのに必要な木材が揃ったため、先に犬小屋から作ることにした。

 俺が建築術を発動し、ウルフの犬小屋を作る。

 場所はやはり、俺の家近くがいいだろう。家の庭、玄関でてすぐのところに作った。


「がるー!」


 ウルフは嬉しそうに尻尾を振り、俺のほうに頬ずりをしてきた。その頭と顎を撫でる。

 ……モフモフにしばらくいやされていると、ゴブリンが木を運んできた。

 不服そうな顔である。


 ゴブリンはめっちゃ頑張って仕事しているのに、という顔である。


「そろそろ、大丈夫だな。ゴブリンの家も作るから……」


 それから俺の家の隣にゴブリンの家を作った。

 ……別にここを拠点にすると決めたわけじゃないが、まあいいか。

 ゴブリンの家は俺の家よりも一回り小さい。部屋は俺と同じにしておいた。


 ……布団を作るための材料がないので、あとで取りにいかないとだな。

 ゴブリンも嬉しそうに体を近づけてきたので、頭を軽く撫でると少し満足そうである。


 そのあとで、俺はお湯を用意して、二体の体を洗った。

 こいつらメスか。まあ、正直言ってオスメスの違いは特になさそうだ。ゴブリンもあるなしくらいの違いしかないしな。


 石鹸も使って体を洗ったことで、魔物たちの体にあった汚れ、臭いも落ち着いた。

 ……さっき頭を撫でたときに臭ったからな。だから、緊急で風呂を用意したというわけだ。


 最終的には風呂も作りたいものだ。

 今の季節はいいが、秋、冬になって外で体を洗うのはさすがに寒いからな。

 風呂ほど完璧なものでなくとも、お湯をすぐに捨てられて、風にさらされない程度のものくらいは作っておきたいものだ。


 土魔法もあるし、案外難しくはなさそうだが……まあ、緊急に必要なものでもないし。そんな頭使って考えなくてもいいだろう。

 建築術で風呂自体はあるが……かなりしっかりしたものだからな。そこまでじゃなくていいんだ。


 俺は庭に行き、ゴブリンとウルフに育てている作物の説明をしていく。


「まずはこれが、果物だな。モモン、オレンジイ、グレープンの実だ」


 一つずつとって、ゴブリンとウルフにあげた。……作物育てるのをゴブリンに任せようかと思ったが、ちょっと身長が足りないな。

 ……まあ、椅子を用意しておけば大丈夫だろう。


 グレープンの実は種を持ち帰った後植えて3日でできた。今は回収、耕し、種植えのサイクルに入っている。

 ……植物のすべてを食べきれるわけではないので、時々廃棄もしているが……このサイクルで作れるため、俺はそこまで気にしていない。


 次に、ニンジン、ジャガンモへと向かう。

 こっちに関しても問題なく育っている。

 虫とか出るんじゃないかって畑を持ったときは気にしていたのだが、栽培の効果なのか今まで虫を見ていない。


 虫が寄り付かない食べ物はまずいもの、と聞いたことがあるが……味に問題はないんだよな。

 ……それとも、うまいまずい以外での問題とかあるんだろうか?


 ちらと見ると、ウルフとゴブリンがおいしそうに果物を食べていた。……ゴブリンは人型だから人間と好みは似ていそうだが、ウルフはどうなんだろうか?

 

 まあ、魔物だしある程度なんでも食えるのだろうな。

 

「ゴブリンとウルフには、畑を守る仕事をしてもらうことになる。ただし、万が一強い魔物が襲ってきた場合は無理に戦わないこと。別に畑はすぐに作れるからな」


 命令はなるべく具体的に伝えておく。

 ……ゴブリンとウルフはまだこの辺りの魔物に襲われたら勝てるかわからない。

 俺が拠点にいても、ファングカウやポイズンビー、たまーにミツベアーも近くまで来るからな。

 

 奴らに挑んで死なれても困る。

 ……だからまあ、名前をつけてもいなかったんだが。

 名前をつけると愛着が出てしまう。……ゴブリンたちが俺なしで戦えるくらい強くなるまで、名前は付けるつもりはなかった。


 それから俺はアイアン魔鉱石でゴブリンの棍棒を新調した。

 棍棒なんて比較にならない。ハンマーだな。

 ゴブリンにそれを持たせて軽く振ってもらう。……うん、問題ない。


 ウルフも何か欲しがったので、鍛冶術で調べる。

 ……あっ、首輪があったな。首輪を作成してやろうか。


 首輪を作り、ウルフの首につけると嬉しそうに尻尾を振った。

 ……さて、次は稽古だな。

 二体をつれ、畑から離れた位置に移動する。

 先ほど散々伐採して、開けた空間ができていた。よし、この辺りを訓練場にでもしようか。


「ゴブリン、ウルフ。これから訓練だ。全力でかかってこい!」


 俺は念のために刃のない剣を一つ作り、二体に向ける。

 二体は顔を見合わせた後、俺へととびかかってきた。


 この稽古の目的は、二体のステータスを向上させること。

 魔物指南スキルもあるため、俺が二体を指導すればかなり成長させられるのではないかと考えていた。


 ウルフ、ゴブリンと交互に、あるいは同時に戦っていく。

 途中休憩を挟みながら、今日一日は彼らの育成に時間を割こうと思い、とにかく戦いつづけた。


 途中、ファングカウがやってきて、俺が仕留め昼食をとる。

 昼食のあとはまたゴブリン、ウルフと戦い二体のステータス強化に力を入れる。

 ある程度俺が力を出して戦ったからか、二体のステータスはずいぶんと向上した。


 名無し(ウルフ)

 主:クレスト

 

 力38

 耐久力28

 器用30

 俊敏50

 魔力7

 賢さ31


 名無し(ゴブリン)

 主:クレスト

 

 力45

 耐久力30

 器用18

 俊敏35

 魔力5

 賢さ15


 どちらもかなり強くなったな。

 あとは、実戦で少しずつ成長していけばいいんじゃないだろうか?

 というか、サハギンくらいなら二体でも十分戦えるような気がしてきた。

 

 あと少しくらい訓練すれば確実か?

 俺はそんなことを考えながら、夕食をとることにした。

 魔物、とはいえ……ようやく一人ではなくなった。


 夕食の時間、二体がおいしそうに俺の料理を食べているのを見て、俺も笑みを浮かべた。

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