第4話


 十一回ガチャを押した瞬間、宝箱がきらきらと輝いた。

 それから、ぽんっと十一個の玉が出現する。

 う、うん!? 銅色、銀色、金色、虹色の四種類があるぞ!?


 銅色は4つ、銀色が4つで、金色が2つ。

 そして、虹色は1つだ。


 そういえば……俺は夢でみたガチャスキルの解説を思いだす。

 ガチャスキルにはレアリティがあるんだったか。

 虹色が一番良く、金、銀、銅という順番だ。


 つまり、とりあえず最高レアリティのアイテムを一つ獲得できたということになる。

 まずは銅色のスキルが一斉に表示された。


 力強化 レベル1

 魔力強化 レベル1

 俊敏強化 レベル1

 力強化 レベル1

 

 ……銅色の結果は以上だった。

 なんだこの力強化っていうのは。それも2つも被るとか……明らかにこれはハズレな気がしてきた。


 次は銀色だ。銀色のスキルが一斉に表示される。


 剣術 レベル1

 短剣術 レベル1

 採掘術 レベル1

 剣術 レベル1


 ……剣や採取系スキルが、この銀色の玉から出るのだろうか? まだ断定はできないが、補助系のスキルというのは間違いなさそうだな。


 ま、まあ悪くないが……短剣術は現状使い道がないな。

 次は、金色の玉だ。……これまでのスキルだと、正直言ってそこまでの強さはない。

 頼む……っ!


 土魔法 レベル1

 火魔法 レベル1

 

 ……魔法か!? これは決して悪いものじゃないな! どちらも生活の基礎を作るうえで必須のスキルだ。

 それに火魔法が使えれば、肉を焼ける。

 これで、どうにか生活できそうだった。


 そして最後だ。虹色の玉が光りを放ち、スキルが表示される。


 鑑定 レベル1


 ……鑑定か!

 これは大当たりだ。

 ……予想にすぎないが、虹色はピックアップされているスキルが出るんだろうか?


 まあ、なんでもいい。

 俺はさっそく鑑定を使用する。

 ……やばいな。視界のものすべてが一気に変化した。


 食べられるものかどうかもこれで調査できる。ただし、レベルが1だからか、調査できるものには限りがあるようだ。

 このレベルについても俺は夢で簡単にではあるが知識を与えられていた。

 

 被ったスキルは合成することで、レベルを上げられるんだ。

 ……ガチャから出るスキルは、すべてレベル1みたいだから、レベル上げのためにも何度もガチャを回す必要が出てくるな。


 鑑定で自分の体を見ていたときだった。

 自分の能力が表示された。

 

 ステータス

 力30(+1)

 耐久力20

 器用24

 俊敏30(+1)

 魔力22(+1)


 これも……夢でみたかもしれない

 確か、俺の能力だったはずだ。

 ……この()内の数字は、おそらく銅色のスキルが関係しているんじゃないだろうか?


 まだスキルレベルが1だから、大した強化はされていないようだ。


 ……それにしても、このステータスというのが高いのか低いのかわからないな。

 ほかに比べられる人もいないからな……。


 ガチャ画面以外に、スキル一覧というのが表示される。

 ……スキル。

 現在俺が持っているスキルは、先ほど獲得した十一個のスキルだ。

 

 けど、かぶったものはスキル合成ができるそうだ。

 合成……か。合成するとレベルアップするようだ。

 とりあえず、それで整理する。


 力強化 レベル2

 魔力強化 レベル1

 俊敏強化 レベル1

 

 剣術 レベル2

 短剣術 レベル1

 採掘術 レベル1


 土魔法 レベル1

 火魔法 レベル1


 鑑定 レベル1


 ……とりあえず、力強化がレベル2にあがった。けど、ステータスが強化されているということはなかった。

 このステータス補正に関しては、気休め程度に考えていたほうがよさそうだな。


 つまり、まとめるとこうなるのか。


 銅色は力などの能力強化。

 銀色は剣術、採掘術系などの補助系。

 金色は魔法系。

 虹色はピックアップされたスキル。


 銅色の補正は今のところほとんど効果は実感できない。

 だから、銅色以外がガチャで出てくれればうれしいな。

 とりあえず、今の俺がやるべきことが決まった。


 魔物を倒し、ポイントをためる。

 そうしてポイントがたまったところでスキルガチャを回す。

 ……スキルガチャで新しいスキルを獲得し、どんどんスキルを強化していく。


 とりあえず、何とかなりそうか?

 洞穴に移動する前に、俺は木々を集める。

 ……それから火魔法を使用する。


 ……片手に乗る程度の火しか出せなかった。これが火魔法レベル1の性能なんだろうか。

 それでも、木々を集めれば十分な炎になってくれた。


 食べられるものは、鑑定で見極められる。ウルフの肉は問題ない。


 ウルフの肉を食べやすいサイズに切り分け、木の枝に突き刺す。

 ……それで肉を焼いていき、全体的に火が通ったのを確認する。

 これは鑑定でも可能だった。便利だな。


 口に運ぶと、肉汁がじゅわりとでた。

 うま!? 魔物の肉は非常に美味と聞いていた。市場に出回ること自体まれで、高額で取引されている。

 俺も小さい頃に誕生日で一度だけ食べさせてもらったことがある。


 ……調味料がなくてもこのおいしさか。

 調味料が作れれば……。確か、そういったものは料理スキルで作れるんだったか?

 

 ……いつか、そんなスキルが出てくれるかもしれない。

 鍛冶や大工系のスキルなども手に入る可能性がある。

 そうなれば、武器の新調もできるし、家だって造れるかもしれない。


 ……楽しみだな。

 腹を満たした後、俺は鑑定を使いながら森を移動していく。

 ……結構、食べられる木の実とかあるんだな。鑑定のおかげで、そういったものがわかる。

 

 見た目は桃のようだが、明らかに大きいサイズのそれを手に取り、一口かじる。

 ……大きいのに、味がしっかりとしていてうまい。上界のものよりもおいしいな。


 下界は悪いことばかりじゃなさそうだな。

 俺は見つけていた洞穴へとたどり着き、そこで土魔法を使用する。

 ……洞穴の入り口を隠せれば、と思ったがさすがにそこまでの土は作れない。


 魔力をたくさん消費して、せいぜい洞穴の半分くらいを埋めるのが精いっぱいだった。


 ……まあ、いいか。

 俺はそこで横になる。

 目を閉じたときだった。


『あなたみたいなクズで落ちこぼれの婚約者、わたくしでなければ貰い手なんていませんわよ。ですから、わたくしの言うことは……すべて聞きますのよ?』

『勝手にわたくしの前から去るということは考えないほうがいいですわよ?』


 ぶるり、と一瞬体が震えた。

 周りには誰もいない……。

 それに安堵した俺は、改めて目を閉じなおした。


 俺には幼馴染にして、婚約者のエリスがいた。

 彼女は本当にわがままで、俺を奴隷のように扱っていた。


 ……だが、もう俺は自由だ。

 家から追放される直前――俺はエリスに言ってやったんだ。


『俺は、おまえの奴隷にはならない……!』


 俺はここで……新たな人生を始める! のんびり、誰にも邪魔されず暮らしてみせるんだ!

 

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