第3話


 魔物を倒せばポイントが入ると分かった。

 だから、とにかく魔物を探さないといけない。

 やることが決まったため、すぐに動きだす。

 

 この辺りにいるのはウルフが多いようだ。

 先ほど倒した死体の臭いにつられたようで、ウルフと交戦する。


 敵は一体だった。問題なく勝てた。

 ……ただ、少し心配もある。

 ここで怪我をすると、どうしようもなくなるということだった。


 回復魔法スキルが手に入れば、傷の治療もできるだろうが……。

 とにかく、怪我をしないように立ち回る必要がある。

 問題はそれだけじゃない。


 暗くなる前に安全な場所を見つけないと、休めない。

 さすがに不眠不休で魔物と戦い続けるわけにもいかない。

 欲しいスキルは山ほどある……。


 けど、このガチャでそれらが手に入るかどうかは分からない。

 それから俺は、魔物を探して歩いていく。

 慎重にウルフを仕留め、ポイントを稼いでいく。


 とりあえず、一体倒せば100ポイントが手に入る。

 そうして……ようやく500ポイントをためることができた。

 ガチャ画面を開くと、きちんと右上に500ポイントと表示されている。


 これで、一回ガチャができるな。

 ……けど、右の十一回ガチャで、5000ポイント、なのか。

 どうやら、まとめてガチャを引いたほうが、500ポイントお得なようだ。


 ……スキルをさっさとゲットすれば、魔物狩りの効率があがるかもしれない。

 けど、今のペースで魔物狩りができなくなったとき、この一回分のガチャは非常にお得なものになる。


 俺は改めて、ガチャをよく観察する。

 4月1日から4月30日までこのガチャは引けるようだ。

 ……今日は4月14日だ。


 まさか……4月が終わったらこのガチャはなくなるのだろうか?

 さらに、ガチャを見ていく。


 ……ピックアップ、と書かれているスキルがある。

 ピックアップスキルは、薬師、鑑定、栽培の二つだ。


 よく見ると、ガチャには『薬師ガチャ』と書かれている。

 ……つまり、今はこの三つのスキルが出やすいガチャ、ということか?


 薬師といえば、ポーション製造のためには必須のスキルだ。

 鑑定だって、超万能スキル。

 ……この二つがあれば、このサバイバル生活を生き抜くことだって不可能じゃなくなる。

 

 特に、怪我をしてもポーションで回復できるとなると、心強い。

 ……とりあえず、もうちょっと魔物狩りをして、ポイントを稼いでみよう。

 頑張って5000ポイントまで溜められれば、そっちのほうがお得なんだからな。


 俺はウルフの死体を並べ、それから周りに小さな穴を作る。

 そうして、獲物を待つ。

 

 現れたのはゴブリンだ。

 ウルフの死体を食べようとしたのか、近づいてくる。そして、僅かなくぼみに足をとられたようだ。


 子供の悪戯みたいな罠だったが引っかかってくれたな。

 足をとられている間に、駆けだす。

 俺を見て慌てた様子のゴブリンが体を起こしたが、それより先に剣で首を切り落とした。


 ……入ったポイントは100ポイント。

 とりあえず、この調子で魔物狩りをしていこう。


 ゴブリンの死体をまた罠とするため、風上に置く。

 風が吹き抜け、向こうからやってくる魔物が罠にかかるように軽く穴を掘って、そこに枯れ葉を置いた。


 そうしてまた、姿を隠す。その間に、俺は薬草なども探していく。

 ……一応、知識はあるが……自信をもっては答えられない。

 ……鑑定と薬師。そのどちらもが手に入るのを期待して、俺は魔物狩りを行っていく。


 朝から暗くなるまで、必死に魔物狩りを続けていく。

 昼を過ぎたあたりで、腹が鳴った。……一応、屋敷から出る前に食事はさせてもらっていたが、ずっと体を動かしていることもあって腹が減ってきてしまった。


 ……火を起こす手段も探さないとな。

 俺は見つけた川で水分補給をしながら、魔物狩りを再開する。

 魔物狩りの調子は悪くない。今ポイントは2000まで来た。


 太陽の位置を確認しながら、再び魔物狩りをする。

 川伝いに森を移動しながら、体を休める場所も探していく。

 ……どこか、いい場所があればいいんだが。


 もちろん、その途中でも魔物を討伐していく。

 ……一時間で5体程度のペースで狩れれば、暗くなる前に目標の5000ポイントに到達する。


 ……森にはかなり魔物がいるので、ペース的には決して難しくはない。

 ……移動、戦闘、移動、戦闘を繰り返していく。

 騎士として訓練を積んだことがあるとはいえ、さすがにこれだけ連続で戦闘を繰り返すのは体への負担が大きい。


 けど、泣き言は言っていられない。

 ここで妥協してしまえば、朝日を見れないかもしれない。

 俺は汗をぬぐい、魔物を倒していく。


 ……だが、そこで問題が発生した。

 俺がウルフを倒してポイントを確認したとき……ポイントが増えなかったのだ。


 ……どういうことだ? そのあと、確かめるためにもう一体のウルフを仕留める。

 ……やはり、ポイントが増えない。

 何が、どうなっているんだ?


 考えられるとしたら……同じ魔物で稼げるポイントには、制限があるのかもしれない。

 ……くそっ。想定外だ。ただ、同時にガチャをすぐに回さなくても良かったとも思う。


 どれほど魔物の種類がいるかは分からないが、俺は無限にガチャを回せるわけじゃないのだ。

 ならば、一回とはいえお得な十一回ガチャを回すべきだ。


 ウルフとの戦闘はやめ、ゴブリン……さらに新たに発見したファングラビットを倒していく。

 ……この辺りはどうもウルフが多いようで、ポイント稼ぎに問題が出始めてきた。


 そうして――陽が沈み始めたときだった。

 俺はファングラビットに剣を振り下ろし、動かなくなったのを確認してからガチャを開いた。


 5000ポイント。という文字を確認して、思わず拳を固めた。


「……やった。……って、早くガチャを回して、拠点に戻らないと――!」


 途中見つけた洞穴で、今夜は休むつもりだった。

 俺はすぐにガチャ画面を開き、それから軽く祈りをささげる。


 何がでるかは分からない。俺を嵌めた神に祈るというのも悔しいが、仕方ない。

 そもそも、ガチャに入っているものは、鑑定と薬師以外は何も分からない状態だ。


 お願いだ……っ。せめて今夜を乗り切れるだけのスキルを俺に与えてくれ!

 強く祈りながら、俺は十一回ガチャのボタンへと指を伸ばした。

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