第18話 私の気持ちは
「ち、ちが――」
「あ、そう」
りんらしくない冷たい声が耳にこびりつく。
もう顔を見るのも怖くて思わず顔をそむけてしまう。
「私ね、伊月くんとは瑠香ちゃんがいなくなった後すぐ付き合い始めたんだー」
ニコッとこっちを見たのがわかる。
けど、私は顔をそらしたまま。
「どっちから告白したと思う?」
そんなの――
「私からだと思った? ブッブーはずれ。正解は伊月くんなんだ」
伊月が……?
だって、伊月、女の子には興味なさそうな……、違う。気持ちよさそうに頭をなでていたのは伊月ではなかったか。
伊月は前はあんな人じゃなかった。
私の思っている伊月は違う人だった。
「伊月くんね、結構積極的なんだぁ。えへへ、ちょっと恥ずかしいんだけどね、って、瑠香ちゃんは見ちゃったのか」
りんは無理やり私と目を合わせて
キスしたところ
とあえて口パクで伝える。
そうすると唇に嫌でも目がいっちゃって。
その唇に伊月のそれも重ねられていると思うと、いやで……。
「キスだって、何回もしたよ。抱きしめるのなんて日常茶飯事だしって、キスもか。家にだって呼んだことあるよ。誰もいない場所」
「……りんは、そんなこと言ってどうするつもりなの」
「だから」
氷のように冷たい瞳。
「伊月のこと好きでいるのはやめて?」
私は何も答えられない。
そもそも私が知っている伊月はもうその伊月じゃなくて。
じゃあ、私は彼の何が好きかって、わからないし。
私は彼のことを好きなのかすらもわからない。
「へえ、答えられないってことはやっぱり伊月のことが好きだったのか。っていうか、無理だよ? あきらめな? 伊月は私以外のことなんて見てないし」
「……もう、帰っていい?」
「いいよ。伊月のこと忘れるって約束するのならね」
「私は……、伊月のことなんて、好きじゃないから」
キスしたからって、なんだ。
ハグしたからって、なんだ。
それで、本当に愛し合っているかなんて、わかるもんか。
「よかったー」
心底ほっとした様子で。
「じゃあ、もう関わらないでくれるかな? 幼馴染だったただの同級生さん」
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