第11話 恐怖

 教室の中。私は1人、読書をしている。


 いつもなら集中できるはずの読書が今日は集中できない。


 なぜって、


「おはよー。瑠香ちゃん」


 耳元でささやかれて私は飛びのく。


「ひどいなあ」


 今ちょうど考えていた人物が目の前にいることがわかる。


「はやと、さん」


 女子たちから悲鳴が上がる。


 ざわつきはじめ、付き合ってるとか、カレカノなんて言葉が聞こえてくる。


「ち、ちがいます!」


 私はクラスのみんなに大声で否定する。


「何言ってんの、。僕たち、付き合ってるでしょ」


 男子たちからおおーという声が上がる。


 そしてまた大きな悲鳴が上がる。


「だからちが……んーんー!」


 急に口をふさがれて私は足をじたばたさせる。


「瑠香、ちょっとこっちにこよっか」


 ◇◆◇


 連れてこられたのは放送部室。


 やっと口を解放された。


「ちょっと、どうしてこんなうそをつくんですか!」


 やっと言えた。


 そうしたら隼人さんはなんだかおもしろそうな感じで笑う。


「な、なに」


 私は思わず一歩下がると行き場がなくなる。


 ドンッ。


 隼人さんの顔がすごく近くに迫ってくる。


 これ、少女漫画だったらすごくいいシーンなんだろうけど、恐怖でしかないっ!


「やめてくだ――」


「瑠香ちゃんはさーと付き合う気、ないわけ?」


「へ?」


「俺はさ、瑠香ちゃんのこと、すごく可愛いなって思ってて」


 顔をくいっとあげられる。


「付き合いたいんだけど、どうかな?」


 ふと、昨日のあの気持ちがよみがえってきて――。


 私は、私の好きな人は。


「だめか」


 え?


「瑠香ちゃん、伊月のことが好きなんでしょ」


「え、あの、ち、違います!」


「じゃあさ、俺と付き合ったって、問題ないよね?」


 隼人さんはにやっと唇のはしを持ち上げる。


「も、問題ありまくりです!」


「なんで?」


 なんでって……。


「ほら、いえないでしょ? じゃあ僕の勝ち。そういうことでよろしく。今日の帰りも一緒に帰ろーね!」


 隼人さんは無邪気に笑う。


「ほら」


 そう言って私の手を引く。


、瑠香のこと、好きだよ」


 全身に鳥肌が立つ。


 これ、なに?


「あ、僕のことも隼人って呼んでね」


 隼人さんが微笑んだ。


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