第10話 最悪な日(2)
やがて伊月とりんは唇を離し、伊月がりんを再び抱きしめる。
りんの頭を気持ちよさそうに撫で、
手を軽く振っている隼人さんに気が付く。
伊月は目を大きく見開き、りんから静かに離れる。
りんは不思議そうに伊月の顔を見上げ、
伊月の目線をたどる。
りんの目も大きく見開かれる。
なんでだろう。
なんだか裏切られた気がして、胸が苦しい。
伊月とりんがどこで何をしようかなんて、勝手なのに。
私は伊月が好きなわけでも、なんでも、……。
私は、伊月が好きなの?
隼人さんはそのまま部室に入っていく。
「いやあ、熱いですね~」
私も慌てて隼人さんについていく。
りんは動揺したように手を口に当てずっと下を向いている。
「部室棟で先生だったり生徒の目が少ないからって、学校でそんなことしますかね?」
と言いつつも隼人さんは責め立てている様子はなく、むしろ面白がっているように見える。
突然りんは、はっとした感じで私のほうを見る。
「瑠香ちゃんは、隼人くんと付き合ってたんだね!」
どこかほっとした様子でそしてなぜか誇らしげに伊月を見る。
「ち、ちが」
否定しようとする私の手が誰かにつかまれた。
隼人さん?
「そうだけど、なにか」
えええええええ!
やめてください、嘘つくの!
私は慌てるが、どうしてか、声が出ない。
私はりんのことをじっと見つめる。
「あ、瑠香ちゃん、今朝のこと忘れてた」
ごめんねぇ
ほんとは今日伊月くん先に帰るって言ってたから。
私と瑠香ちゃんだけで話す予定だったんだけど。
本当に?
私に2人の関係を見せつけたかったからなんじゃないの?
「でもとりあえず、よかった。伊月くん、これでクリスマス、一緒に過ごせるね。
瑠香ちゃんも隼人君と付き合ってるなら早く言ってくれればよかったのに」
だから付き合ってない……。
私はどうしようもなくて
部室から駆け出した。
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