(13)〜新たな生活とカイヤへの招集〜
セレスタイトと名付けられた子はスクスクと成長し、徐々に一人で歩けるようになってきた。
その頃、クレアとカイヤはセレスタイトに魔法を自身の力として扱うことができるように。
つまり、魔法を教えるために、人の少ない街の外れに家を建てそこで暮らすことにしたんだ。
彼らの新しい家に引っ越して、僅か数日。
カイヤにギルドからの魔物討伐隊の一員として、招集がかかった。
内容は街に近い森で月に二、三回現れる魔物の見回りをするためだった。
ギルドの招集に応じて、出発準備をするカイヤを、セレスタイトを抱き抱えたクレアは心配そうな顔をしていた。
「大丈夫だよ、クレア。討伐隊の見回りなんて珍しいことじゃない、君も知ってるだろ?」
「分かってる、分かってはいるんだけど…」
クレアはその日、妙な予感を感じていた。
それが今までの生活が変わったからなのか、はたまた他に理由があるのか、当時のクレアはそれを図りかねていた。
「それに俺はもう、ただ『この街が好きだから』ここを守ろうと思っているんじゃないんだ」
「えっ?」
それはクレアにとって意外な一言だった。
カイヤは立ち上がると、彼女の不安そうな瞳を見つめ、穏やかな笑顔を浮かべると彼女に抱かれているわが子の髪をそっと撫でた。
「俺は、君とこの子のためにここを、そしてこの生活を守りたいと思うんだ」
「……あなたってホントにずるいわよね、昔から。」
「ありがと、クレア」
「気を付けてね、待ってるから。この子と二人で」
「ああ、もちろん」
そうして、カイヤは依頼を出したギルドへと発っていった。
数日後。
帰ってきたのは、ひどい傷を負ったカイヤの姿だった。
後に彼を助け出した仲間が言うところによると、『彼は見回り中に出てきた上位の魔物から仲間を逃がすために
クレアは、仲間に担がれて帰ってきたカイヤに自身の魔力のすべてを込めて懸命に治癒魔法を施した。
しかし、
彼が、カイヤが、回復することはなかった。
彼は最後に意識を取り戻し、ただ一言。
「ごめ、んな…クレ、ア。……セレ、ス、タイトを…あの子を、頼ん…だ……。」
そう、弱弱しい声で言い残し、息を引き取ったんだ。
ーーー街は英雄を失った。
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