(11)〜クレアとカイヤ、二人のそして。〜
カイヤの願いを聞いた後。
クレアは呪い屋をやめた。
そしてクレアは、かつて拾ってもらった「
---いや、違うな……あれは使わなくなったんじゃない、もう二度と使えないように誰にも知られないままにひっそりと、彼女自身が苦手とする浄化魔法を自身に施して封じたんだ。---
「呪い」を手放した後、クレアは店と住居として借りていた倉庫から、カイヤが新しく借りた借家へと居を移し、二人は共に暮らし始めた。
この時、カイヤはクレアにある贈り物をした。
それは今まで彼女が持ち合わせていなかったもの。
各所に美しい花の意匠の細工が施された仕掛け鏡台だった。
彼女は自ら「自身のできること」を探すようになり、以前からカイヤの為によく作っていた傷薬を、カイヤを通してギルドに納品するようになっていた。
クレアはカイヤの周囲に彼が「呪い屋の魔女」と暮らしていると気付かれることを必要以上に恐れた。
だから、彼女はカイヤに自分の名は絶対に出さないようにと言っていた。
ーーー後に彼女はこのことを後悔することになるのだけれど。ーーー
しばらくして、実体がなくなり、噂を頼りにやってきていた依頼人のさえ来なくなった「呪い屋の魔女」は街の人々から忘れ去られた。
そこでようやく、二人は街外れの小さな教会で結婚式を挙げた。
それはとてもとても小さなものだった。
参列者は誰もいない。
クレアはもともと孤児であったし、カイヤはクレアと出会う前、各地を巡る旅のそのすこし前に両親を亡くしていたから。
その日、その教会には、立ち合い人の神父、いつもより少しだけ改まった格好をし、緊張した面持ちのカイヤ、持っている中で一番白いワンピースに身を包み、真っ白なベールを被ったクレア。
たった三人だけだった。
でも、それでもこの日。
二人は確かに幸せで。
二人はこの幸せが永久に続くことを望み、願い、誓いあったのだった。
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