(4)〜呪い屋の彼女〜
次の日。
「やあ、こんにちは。魔女さん」
「……何か御用でしょうか?」
カイヤは彼女の店の扉の前にやってきていた。
やはり、頭の先から足元まで真っ黒のローブに身を包んだ彼女は、冷ややかな声でそう尋ねた。
「ああいや。その…用ってほどじゃないんだけどさ。少し、君と話がしたくて。」
「そうですか。ではお帰り下さい。」
彼女は顔色一つ変えずに、カイヤにそうぴしゃりと言い放つと、バタンと大きな音を立てて扉を閉ざした。
しかし、次の日。
「……」
「やあ、魔女さん」
「お帰り下さい」
そのまた次の日。
「やあ、今日はお土産が「帰って」」
そのまた次の日。
「こんにち「来ないでよ!」」
なんてことが数日ほど続いた。
街では、徐々にカイヤが魔女の店を訪れていることが噂になり始めていた。
「カイヤが呪いの魔女に傾倒しているらしい。」「カイヤは魔女に魅了の術をかけられたらしい」
人々のそんな噂はこっそりと買い出しに街に出ていた彼女にも伝わった。
だから次の日。
「……また懲りずに来たのですか」
いつもとは違い、彼女はそう言うと、フードの下からじっと、何かを見極めるように自分より高い位置にあるカイヤの目を、鋭い目つきで見据えてきた。
だからカイヤも、真剣なまなざしで彼女を真正面から見つめ返し、
「どうしても君と話がしたいから」
ただ素直にそう答えた。
彼女は一瞬、
「………はぁ、全く。ええ、分かりました。私の負けです。」
その言葉にカイヤの顔がぱっと華やぐ。
「じゃあ!」
「ただし、ここからだと色々と面倒なので、これに書いたことに従ってくださいね」
彼女はばっと一枚の紙を押し付けると、いつものように…。
いや、この時はいつもより早口で一方的に会話を切り、ピシャリとカイヤを締め出した。
カイヤは呆気にとられてしばらく目を瞬かせていたが、やがて手元に残った紙に視線を落とした。
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