第4話 Case1.ストーカー調査③

「アンタの息子って事は、ハワードだろ?そのハワードの死がジョディのせいってどう言う事だい?」シュウは女の拘束していた腕を解いてやった。

「この女はね…この女は、ハワードが少し待ち合わせに遅れただけで、ハワードの事を罵倒してたんだよ!あの日だって具合いを悪くした私の為に、薬を買いに行ってくれてね…それで待ち合わせに遅れそうになって、それで急いでたから事故に合ったんだ。この女さえ…この女さえいなけりゃハワードは死ぬ事はなかったんだ」ハワードの母親は涙ながらに訴えた。

「そんなの知らないわよ。待ち合わせに遅れるなんて人間として失格じゃない。それを責められたからって死んだのが私のせい?ふざけないで」二人の言い分を聞いて、シュウはかける言葉を失ってしまった。そんなシュウの態度を見て、シュリが口を開いた。

「あんさぁ、二人とも不幸な出来事の原因を自分の価値観だけで押し付け合ってるだけじゃん?要は死んだハワードが一番悪いじゃんね。愛するお母さんと恋人を残して、先に死んじゃったんだから」シュリの言葉を聞いて、ハワードの母親とジョディは顔を見合わせた。

「ジョディ?あなたはハワードが亡くなって悲しい気持ちを持ってくれてる?」母親の言葉にジョディは両手で顔をおおった。

「当たり前です。私を…私を大切にするって言ってたのに、ハワードは嘘つきだわ」そう言うジョディを、母親は背中からそっと抱擁した。

「あなたも辛かったのね。ごめんなさい。本当にごめんなさい」ジョディは自分を抱擁する母親の手を握り締めた。

「で?どうすんの?新人探偵さん?」シュリは制服の上着ポケットからキャンディを取り出してくわえた。

「二人とも分かり合えて良かった。これで僕のが役に立ったって言えるだろう」そう言うと、シュウはシュリにウィンクした。


こうして一応の解決をみたこの事件。二人の探偵は、メリーに報告した。

「分かったわ。ありがとう。シュリだけ残ってくれる」メリーはシュウを部屋から出し、シュリのみを部屋に残した。

「で?どうだった?新人探偵さんは」メリーは座ったままシュリを真っ直ぐに見つめた。

「まぁ能力は上々じゃん?代表が言う通り、グレゴリーと組んで前線でウチらをサポートする役目が良いトコじゃん?」シュリはコリコリとキャンディを鳴らした。

「アンタの見立てはそんなもんか。分かった。もう少し試す必要はあるわね。もう良いわ。ご苦労さま」シュリが部屋から出ると、メリーはデスクの引き出しから出した資料を、ペラペラとめくり出した。そしてある一枚で手を止めた。

「次はこれ。そうね…ニコラスと組ませるか」メリーは不敵な笑みを浮かべた。

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