第3話 CASE1.ストーカー調査②

 シュウとシュリはジョディと初めに待ち合わせた喫茶店でジョディと落ち合っていた。

「あれから色々と調べたんだが、ジョディの身の周りに最近、バイク事故で亡くなった人間はいないかい?」ジョディはシュウの言葉を聞いて目を大きく広げ、こめかみを滲ませた。

「ハ…ハワードの事?」シュウはやはりと思った。あの後、サイコメトリーを続けた結果、映像の被害者はハワードと言う若者である事まで分かっていた。しかしこのハワードと言う人物が、何者かまではサイコメトリー出来なかった。

「あぁ、そのハワードと言うのはジョディにとって、どんな人物なんだい?」ジョディは目を伏せがちにして話し始めた。

「ハワードは私の恋人よ。あの日、事故が起こった日、私たちはヨハネ通りのカフェで待ち合わせをしていたわ。でも彼は来なかった。待ち合わせ場所に来るまでに事故にあったのよ。それだけ、ただそれだけよ。まさか彼の亡霊がストーカーだとでも言うの?」ジョディはどんな感情か分からない涙を流した。

「亡霊だとは言わない。そのハワードの親類だとか、そう言う関係の人間が犯人である可能性が高いって事なんだ」シュウはジョディをなだめるように静かに話した。

「私は彼と付き合う中で、彼の家族とは一度も会ってない。もし知ってたとしても、私は何も悪くないじゃない。彼が勝手に死んだんでしょ!」ジョディは興奮気味に声を荒らげた。

「まぁ落ち着けよ、ジョディ。犯人を捕まえるにしたって止めるにしたって、その犯人の正体が分からない事には、僕たちもどうしようもない。それをあぶり出す為にも、僕たちに協力してくれないか?」

「それは私がやる事じゃないわ。アンタたち探偵でしょ?その為にお金を払ってるんだから、アンタたちでやってよね」結局、シュウの言葉も、火に油を注ぐだけの結果となってしまった。ジョディはいきどおりのみを残して喫茶店を後にした。

 シュウたちは切り替えて、ジョディの尾行を続ける事にした。しばらくして、ヨハネ通りを曲がったところで、ジョディは忽然と姿を消した。

「どう言う事よぉ。消えちゃったじゃん?…そうだ!アンタ確か未来予知が得意とか言ってたよね?ジョディの行き先を予知しなさいよ」シュリから言われて、シュウは目を閉じて予測した。

「58番!ヨハネ通りの58番の袋小路だ!」シュウの言葉を受け、シュリはキャンディを噛み砕いた。

「シュウ、アタシの腕を摑んで!」シュウはシュリの言う通りに腕を掴むと、身体が浮き上がるような感覚を覚えた。すると、そこはシュウが言うヨハネ通り58番だった。

「何?誰もいないじゃん?」そこは通りから離れた、寒風吹きすさぶ、吹き溜まりのような袋小路の一角であった。

「それはシュリの移動が早過ぎ…シーッ、誰か来る」シュウが言って間もなく、女性の口を塞いで首筋にナイフを付き立てる女が現れた。

「なんだい?お前らは?」ジョディの身柄を押さえるその女は、どこにでもいそうな中年主婦であった。

「アンタこそ何者だ。その女性を離せ!」シュウは自分が経験した事がないこの状況に、戸惑ってしまった。その時、シュリが何やら耳打ちをしてきた。シュウがうなづくと、シュリは両手を組み、何やら念じ始めた。するとシュウは一瞬で女とジョディの元に移動し、シュウは女が持つナイフの刃の部分に人差し指でタッチした。

「さぁ、彼女でも僕でも、刺せるものなら刺すが良い」シュウの言葉を聞き、女は憤ってジョディの首元目がけてナイフを突き刺した。しかしナイフの刃は、まるでゴムのおもちゃのようにフニャッと曲がって刺さらなかった。

「これこそが、シュリック(シュウのトリック)」シュウはマジシャンとしての自身の決め台詞をウィンクして言った。

「ち…ちきしょう!」女は逃げようとしたが、シュウが簡単に捕縛してしまった。

「さぁ、全てを話してもらおうか?」シュウの言葉に、女は観念したように捨て台詞を述べた。

「こんな女に…こんな女にさえ引っかからなかったら、ウチの息子は死ぬ事はなかったんだ」女の言った言葉の真意とは?女とジョディとの関係は?シュウは探偵としての初めての仕事で、探偵としての資質を試される時を迎えていた。

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