第2話入隊をかけた戦い
土方は竹刀を2つと小太刀型の刀を総司と少女の目の前に置いた。
「入隊には条件が3つある。
まず1つはその小太刀。それには妙な細工をしているな。どんな小細工を使ったか知らないが、目を離した隙に縄が解けるわけがない。それにお前しか使えないと言うのも気になる。こちらも手の内が見えなけりゃ信用出来ねぇ…だから屯所内ではその小太刀はこちらで預からせていただく。遠征に行く場合は身を守るために返す。
そして2つ目。これから1番隊の雑務をしてもらうが、それなりに刀を扱えなければならない。もしも攘夷浪士が俺達がいない時に襲撃しに来て、お前に襲いかかった時に、小太刀がなければ戦えないじゃ話にならねぇ。だからお前の実力を見るためにもここで総司と戦って貰う…!」
そこまで聞くと、少女は竹刀と小太刀を手に取り、総司に向き直した
「良いよ。僕はその条件で…でもその代わり、勝ったら僕にも1つ。条件がある…」
総司は彼女の余裕気な表情を見ると、竹刀を手に取る。そして竹刀の先を少女に向ける。
「良いよ。そんな口二度と聞けないようにするから…!」
夜の道場には、小さなあかりがてんてんと並べられ、カエルが泣いている。
静かにふたりは道場に入ると、向かい合い、竹刀を腰に持っていた。
小太刀を型の竹刀を指先で回すと、切っ先を総司に向けた。
「ねぇ、本気の立ち会いだから、どんなてをつかってもいいかぃ?僕も君相手なら本気じゃないと勝ち目が無さそうだから…」
沖田はその言葉に挑発するように不敵な笑みを浮かべる
「いいよ。女の子である君にハンデなしなんて、格好がつかないからね。好きにするといいよ」
総司は竹刀を相手に向け、深く腰を下ろした。
少女もニヤリと笑いかけると小太刀型の竹刀を手に握り、腰に手を当てる。右手で竹刀を相手の竹刀に交わらせると、腰を落とした。
近藤が間に入る。
「これより入隊試験を行う。立会人は私が行う。」
そう言うと近藤は手を胸の前で伸ばし、天井に向かって手を挙げ、「はじめぇ!」っとさけぶ。
総司と少女は大きく叫び声を上げると、総司が竹刀を振り下ろした。
すかさず少女は竹刀と小太刀を交差させ、総司の竹刀を受けた。
「へぇ、やるじゃん。」
総司が彼女にそう告げると、刀を振り上げるげ、彼女の左手めがけて竹刀を振り下ろす。彼女はあしらおうとするも、総司の力には及ばず、総司の竹刀を避けた。
しかし、総司は彼女の左手に何度も竹刀を振り下ろしてくる。この一方的な様子を見た隊士達は、次々と彼女に批判の声を上げた。
「どーゆー事だ…!小太刀をつかうなら、片手であろうと相手の竹刀の鍔(つば)に小太刀型の竹刀を添えれば動きは封じれるはず…なのに何故彼女はそれをしないんだ…!」
「やっぱりあの妙な力がなければ、ただのおなごか」
土方は固く閉じていた口を開いた。
「あいつは小太刀使いじゃない。」
その場にいる誰もが土方に顔を見て、驚いた。
「彼女の自前の刀は小太刀だったはずです。何故土方さんはそう考えるのですか?」
一人の隊士がそう疑問を投げかけると土方は小太刀を見せた。
「この小太刀の刃先は綺麗に整えられていた。」
「それがどうしたって言うんですか?」
土方は眉をひそた。
「お前達もよく剣を手入れする時に思わないか?攘夷浪士との斬り合いの後に、血痕が残っていると…なのに奴の小太刀の刃先は、血痕1つなかった。それどころか小太刀の刃は、整えた後のような美しい輝きを見せた…小太刀のカラクリを使った後に総司に縄で拘束され、手入れをする暇すらなかったにも関わらず…だ。」
その場にいた隊士達の多くがハッとした様子を見せた。
沖田が竹刀を少女の手に振りかざすと、少女は二、三歩後退りした。すると挑発するように飄々とした表情で彼女にこう告げた
「ねぇ、君本当は小太刀何て使った事ないでしょ。ここで好きな武器使ってもいいから、そろそろ本気だしなよ。」
それを聞いた彼女はニヤリと笑みを浮かべると、竹刀を振り上げた。それを見た総司も竹刀を構えると彼女は竹刀から手を離した。空中に浮かぶ竹刀を総司を含む全隊士達は呆然とただ見ていた。すると彼女はしゃがみこみ、総司の竹刀目掛けて思いっきり蹴りあげた。
総司は宙に浮いた竹刀を取ろうと、手を伸ばすが、彼女の足が首の後ろにまわり、床を思いっきり手で押すと、総司の後頭部を地面にたたきつけた。総司の額に小太刀型の竹刀を軽く当てると、目を真っ赤に光らせ、不敵な笑みを浮かべた。
「よく気付いたね…君たちの言う通り、僕は小太刀を剣術としては使わないんだ…」
彼女は総司の耳に冷たい声で"暗殺で使うんだよ"と囁いた。
近藤がそこまで!と、2人に声をかけると、周りは拍手をして、彼女の周りを囲んだ。
土方はしてやられたと言わんばかりに口角を上げると、彼女の元へと向かう。
「おめでとう、今日からお前をこの新選組の1番隊隊士として迎え入れる。」
その言葉を聞いた隊士達は、彼女を祝福する言葉で溢れた
総司は少し気に食わなさそうにふてくし、彼女を見ていた。
「入隊する前にお前の望みを聞こう…何が欲しいんだ?」
「…僕は…」
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