幸せの時計

スイートポテト

第1話 新しい隊士

いつからだろう。


僕が彼女に惹かれたのは。




いつからだろう。


君が僕よりも強くなっていたのは…




いつからだろう。


彼女を傷付けてしまうようになったのは…




なのに、どーして君は僕の前であんなにも笑顔で…


幸せの時計-1-


「1番隊、見守りに行ってまいります。」


月がぼんやりと照らす夜。


京の町は真夜中にも関わらず家からあかりが漏れていた。


「今夜は瘴気が濃いな」


こんなにも明るい町なのに、物音1つ聞こえない。それ所か人の様子も見受けられなかった。


そんな気味の悪い街を歩いていると、ふと青白い光が天から地上へと刺さった。


「な、何…?」


青白い光は瞬く間に総司の目の前に降りてきては、弾け消えた。



ふと総司は目の前を見ると、そこには自分よりも少し小さな背丈をした少女が立っていた。


「…やっと会えた…!」


彼女は総司を見ては笑を零した。


身に覚えのない総司は


「君は一体誰…?」


と尋ねた。


すると家の影に身を潜めていた浪士たちがゾロゾロとこちらに近づいてきた。


「新選組1番隊隊長、沖田総司とお見受けする。我々は攘夷浪士、貴様ら2人のお命頂戴にする。」







攘夷浪士達は各々刀を抜き、切っ先を総司と少女に向けた。すると、彼女は自分のスカートの下から小太刀を取り出すと、攘夷浪士達の後ろにたっていた。満月の光が映し出す青白い道は、赤く染った。浪士たちが次々に倒れていくと、彼女は創始の方を見たままニコリと笑みを見せて


「僕は梶夏希。君の運命を変えに来たんだ。」


少女を見た総司は、彼女を不信に思い、捕らえることにしました。彼女は全く抵抗もせず、快くロープで拘束されました。


そして、近藤らの幹部が待つ部屋に彼女を連れて行きました。


近藤らはそこの畳に座る彼女をマジマジと見始めた。見たことの無い服装、髪のゆい方など、この時代には全く見たことの無いものばかりだ。


極めつけは、スカートの中に隠し持っていた小太刀だ。この時代では見たことの無いカラクリが用いられており、刀を抜くことが出来ない。



「君…この刀はなんと言うんだ…?初めて見る刀だな…」


近藤が小太刀を手に取り、マジマジと見つめると、眉をひそめていた。彼女は飄々とした声で


「僕にその刀を返してくれれば、その刀を開けてあげるよ」


と言う。


沖田は、その言葉に不信感を抱き、抜刀すると、彼女の首元に向ける。


近藤は沖田の肩を叩き、刀を後ろで固く結ばれた手のひらに乗せた。すると、 瞬きをする間に彼女ロープを解き、刀を近藤の手に返していた。


その場にいた隊士達は目を丸くして目の前の少女を見ると、彼女は自慢げに笑う


「この小太刀は僕にしか抜けない様にカラクリを組まれている。勿論仕組みを知ったとしても、僕の右手にしか反応しない様になっているんだ。だから君達でも開けることは不可能なんだよ。」


近藤は関心したように頷くと、刀に目線を落とした。銀色に輝くその刀は切っ先は鋭く尖り、刃先も整われていた。近藤は満足したように頷いては


「良い刀だ。」


と言って彼女の手元に返した。


近藤が次の言葉をかけようとした時、一人の隊士が形相な顔で睨みつけ、少女に冷たい言葉で問いただす。


「君はどうして総司の運命を変えに来たんだ?まるでお前はこいつの事を以前から知っていて、なおこの先起こることまで分かっているような口ぶりだが…」


重い言葉に周りが沈黙する中、小太刀を鞘に収めた彼女は、胸に手を当てた。




「そうだよ。僕は彼に命を救われた。彼は覚えていないけど、あの時彼がいなかったら、僕は今頃攘夷浪士の餌食だっただろうね。だからこそ守りたいんだ。この先の未来から、彼を…!」


彼女の目には情熱が溢れ出ていた。


その姿を見た隊士達は心の底が晴れたように笑みを浮かべた。彼女の熱い演説に拍手をする者もいた。


あの形相な顔をしていた鬼の副長でさえ、肩を落として近藤の顔を見て頷いた。


「君の意気込みは分かった。君さえ良ければ是非とも新選組1番隊に入隊して欲しい。」




と告げた。彼女はぱっと笑みを浮かべては頷く。それを見た隊士達も拍手をして彼女を歓迎した。


ただし1人を覗いて…




「僕は納得できません!」




総司だ。




「こんな素性も知れない女の子を隊に引き入れて、しかも手の内も分からないんですよ!?裏切りにでも合えば誰も太刀打ち出来ないんですよ!?」




総司の言葉にその場の全員が顔を合わせた。




「総司が言うのも一理ある…だからこそ、こちらも入隊に条件をつけようと思う。」

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