第2話 異邦人の空

不思議だな


だってわたしもう


全部何もかも知ってしまっているんだもん


不思議だな


何でかな


いま目の前を流れている心地良い爽やかな


いまわたしを包んでる


当たり前に吹き抜けて行くこの風が


何もかも全部知ってしまっているのかな


いまこの星にいる道端の小石も小さな命も


多分すでに教えてもらっているんだろうな


わたしは明る過ぎるここで毎日暮らしてる


清潔な透き通った水槽みたいなこの部屋で


毎日毎日たくさんの人たちわたし見にくる


楽しそう


言ってたもん


「かわいいね」


「もふもふじゃん」


「癒されまくりだよ」


そして


「一緒に暮らしたいなあ」


って


もしもわたしが誰かに選ばれて


もしもわたしが誰かの家族になれたら


どんな暮らしが待っててくれるのかな


毎日毎日たくさんの人たちわたし見てる


だけどなんでかな


通り過ぎて行っちゃって


わたしは毎晩毎晩ただ清潔でそして綺麗な


お部屋で眠りにつくの


ひとりで寝るの


わたしネコだけど一人ひとり?ネコでも一人


吹き抜けて行くこの風はこの大地のみんなを


繋げてくれているみたい


だって知ってるもん


全部


そうわたしぐらいの小さな子


冬の青空みたいな無邪気な目をしたコブタ


その子いってた


「ぼくはしあわせだよ」


「ぼくはもう少ししたらね」


「ぼくの命はきっと誰かの命になるからね」


「ぼくは今度はそこで生きてくんだ」


「ぼくの命がお引越しするだけなんだね」


「だからしあわせなんだよぼく」


言ってたな


その子


なんか不思議


わたしのあしたはひとつじゃないから


どこかの誰かに選んでもらわなきゃ


わたしはどこに行くんだろう


風が吹くこの星にはいないんだろうな


お空がわたしのお家になるのかな


わたしはお星さまぐらいにはなれるのかな


なんか不思議だな


神さま以外の誰かに選ばれて


わたしはどこに行っちゃうんだろう


不思議だな


わたしはそのとき笑えてるのかな?


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