第6話 村長の娘と結婚フラグ
このゲームは所持金が1万Gでスタートする。なぜ1万Gからなのか不思議に思った人が多く、『門番のオッサン』への賄賂が1万Gだからだという説が濃厚だ。俺も、プレイヤー・運営オフ会で
『あ、いえ、適当ですよ。門番のオッサン賄賂と同じ金額? それに合わせたつもりも実は無いんですよ。あの金額も適当です。それぞれの金額決めたの別の人ですし』
ゲームスタート時の所持金が、門番のオッサン賄賂よりも少なかったら、門番のオッサンを賄賂でクリアできなくなるじゃないか。そう思うものだが、『はじまり』先生の性格だ。ガバガバ仕様のままで『あ、そうっすね。まぁいいや』で終わっていただろう。そういうもんだ、あいつが作るゲームは。
「しかし不思議だな、お父さんに会ってくださいというセリアのセリフを途中でぶった切って外に出たのに、追いかけてこないな。なんかこういう所はNPCっぽいんだよな。防具屋のおばちゃんに会ったら、さっき店の樽を壊したこと、覚えてるんだろうか」
俺は明日起きるイベントを思い出しながら宿屋を探す。所持金は今の所潤沢にあるので、今日はとっとと宿取って寝ようと思う。寝て起きたら、この世界から目覚める可能性もあるし、わりと気になる。
『はじまりの精霊の冠』は2万Gかかる。村長の娘、セリアから預けられた3万Gから差し引いて1万G残るんだが、通常は1Gも返さない、5千Gだけ返す、お釣り全部の1万G返すという選択肢がある。1Gも返さない場合は1万Gネコババでき、5千Gの場合はセリアは返したお釣りを謝礼としてくれない。お使い頼んだくせにお駄賃渡さないとはなかなか失礼だ。
「おいあんた」
そして正直に1万G渡した場合、お釣りはそのまま先程みたいに1万Gお駄賃として戻ってくる。じゃぁ1Gも返さないのと変わらないじゃないかと思うのだが…セリアに対する好感度フラグが立つ。これは後々重要なのだ。
この世界では結婚システムというのがあって、NPCともプレイヤーとも結婚できる。ちなみにゲームなので何人でも重婚OKだ。当時は重婚しすぎて刺されたプレイヤーがいるというのを聞いたことがある。社会現象になるほどのゲームだったのだ。ここはおそらくゲームではなく、こういう異世界の現実世界なんだと思うが、まぁたぶん重婚OKだろう。こっちの世界で刺されるかもしれないが。
「おい!」
つまり、後々セリアと結婚するためにはここで好感度フラグを立てる必要がある。お釣りを返してないと結婚はできない。他のイベントでも好感度は上がるが、結婚はできないのだ。恋愛シミュレーション的な要素があるみたいだ。RTA勢は必要な好感度上げイベントだけこなして、他はヒロインキャラを無視したりする。そういうゲームあったな。
―― バコーン!
『マダム・ボーグの攻撃。テイルはクリティカル30ダメージを受けた。テイルは麻痺している』
「うぉ!?」
しまった、不意打ちか?マダム・ボーグって誰だ?攻撃力高いし状態異常付加かかってるじゃないか。
「あんたさっきうちの樽壊したでしょ!」
「樽?いや、樽そこにあるじゃないですか」
「あんたさっきうちの樽壊したでしょ!」
あぁなんだ防具屋のおばちゃんか。というかマダム・ボーグって名前なのか。このそのまんまのNPC名、絶対『はじまり』先生がつけた名前だな。樽は戻ってる。ゲームと同じだな。壊してもマップ読み込みなおせばまた出てくる。しかし…
「あんたさっきうちの樽壊したでしょ!」
「あんたさっきうちの樽壊したでしょ!」
同じことしか言わなくなってしまった。困ったな、既に戦闘モードに入ってるし、麻痺してる上に挟まれて抜け出せない。まさか防具屋のおばちゃんに殴られて第二の人生を終わらせたくはない。金ならいくらでもあるんだ。
「すみませんでした。弁償します。1万Gです」
「あぁ!?」
「……2万Gです」
「あぁあ!?」
「……5万Gで「あぁあ!?」」
「……10万Gです」
「またいつでもうちにおいでよ!」
10万Gもぼったくられた。まぁともかくいつのまにか麻痺が解除されてる。早く宿屋に行こう。セリアとの結婚計画のためにも、いろいろと今後の進め方を考えておかなければならない。
まぁあれだ、一目惚れだ。
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