第2話 おてがみ 現代社会人編
おてがみ社会人編
「かえるくん、ちょっといいかい?」
ある日の午後、係長のかえるくんは、がま部長に声をかけられた。
「なんでしょう、がま部長」
「ちょっとここでは話しにくいから会議室に来てくれないか?」
「はい…(部長、なにやら浮かない様子だな)」
----会議室----
「がま部長、話ってなんでしょうか?」
かえるくんは単刀直入に聞いてみた。
「実は、お手紙が来ないんだ」
「お、おてがみ…ですか…?」
「実は我が社でもボトムアップの改革として、社員の意見を投書できる目安箱を設置したんだ。」
かえるくんは先週、目安箱の設置というタイトルの社内メールが流れていたことを思い出す。
「…それが、まだ来ていないと?」
「そうなんだ」
気を遣えるかえるくん「では、うちのチームに私から改めて周知しておきましょう」
がま部長「ありがとう、かえるくん!」
----自席----
「かたつむりくん、ちょっといいかい?」
かえるくんは自分の席に戻ると、新入社員のかたつむりくんの席へと向かった。
「かえるさん、なんでしょう?」
「忙しいところ悪いんだけど、先週がま部長から出ていた目安箱の件、何か投書して欲しいんだ。他の仕事は引き取るからなる早で頼む!」
「すぐやるぜ」
----数日後----
「かえるくん、ちょっといいかい?」
数日後、かえるくんはがま部長に再び声をかけられた。
「…はい?」
このデジャヴ感、なにやら嫌な予感がするな…。とかえるくんは思った。
----会議室----
「実は、まだお手紙が届かないんだよ」
「…すみません、すぐ確認します!(おいーー!かたつむりくんーー!!)」
会議室を出たかえるくんは、すぐさまかたつむりくんの席に向かった。
「かたつむりくんはいるかい?」
たにしくん(3年目社員)「かたつむりくんなら今日はもう帰りました、あと明日は休むそうです。旅行行くって言ってました!」
かえるくん「な、なんだってーー!」
----翌日----
かえるくん「すみません、がま部長。例の件ですが、担当内で周知してみたものの、皆なかなか考え込んでしまっているみたいでして…」
がま部長「かえるくん、そのことなんだが、昨日の夕方に投書が来ていたんだよ!かたつむりくんからだ!」
かえるくん「そうだったんですね!(よかった、昨日投書を出してから帰ってたんだ!)」
ホッと胸を撫で下ろすかえるくん。
自席に戻ると、旅行から帰ってきたかたつむりくん向けに、ホウレンソウの重要性を伝える研修の段取りを考え始めた。
ーーーー
ちなみにかたつむりくんの出したアイデアは非常に独創的で、これをがま部長が大絶賛。すぐさま社内施策としてプロジェクトが立ち上がることになるがそれはまた別のお話。
かえるくんのあとがき。
「自分の考えるすぐ、と新入社員の考えるすぐ、で認識が合わなかったのが今回のすれ違いの原因だと考えている。
がま部長は焦れていたし、私としてはクオリティはそこそこで、とにかく出せばいいというつもりだった。
しかし、新入社員であるかたつむりくんにとって、部長に対し投書を出すというのは当然だが初めてのこと。
失礼にならないように念を入れて最高のものを出そうとするのもわかる。
だからこそ、なる早でというあいまいな表現でなく、どういう目的でどのくらいのスピード感で出してほしかったかを予め伝えるべきだったと反省している。
今回の件は、私にとっても学びが多い事柄だった。」
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