国語の教科書 現代社会人編
たkる@小説垢
第1話 走れメロス 現在社会人編
走れメロス 現代社会人編
「メロスくん、この失態、どう責任を取るつもりかね?」
かの傍若無人な社長は言った。
「土日を返上してでもトラブル収束に努めるべきではないのかね?それともクビを飛ばすか?」
「クビになるのは構わない。しかし、土日には妹の結婚式がありそこは外せない。」
メロスは答えた。
「だから、このトラブルの収束は、我が同期にして元同僚、プライベートにおいては竹馬の友でもあるセリヌンティウスに頼みたい」
王はそれを承認した。
***
「いいだろう、期限はお客様の業務が始まる月曜の朝9時までだ。それまでに直らなければ2人ともクビだ!
…いや、待てよ?メロスよ、貴様が遅れてくれば貴様のクビだけは飛ばさずに置いておいてやろう」
「な、何を!?」
「少しだけ遅れて来るがよい。月曜の朝9時過ぎにログインしろ。そうすれば助けてやる」
「私は必ず戻ってくる。社会人の常識として5分前行動を心がけてな!」
※※※中略※※
結婚式会場
「ほう、メロスさんはあの有名な〇〇社の社員さんなんですね」
「・・・まあ、一応(月曜日にはクビになっているかもしれないが・・・)」
※※※中略※※
月曜早朝
「電車が止まっている…!台風の影響で橋が落ちたんだ…!こうなったら泳いで河を渡るしか…。しかし、会社支給のPCを濡らすわけには…。どうすれば…!」
※※※
月曜朝8:55。
「やはり、あの男は帰って来なかったか…。」
セ「メロスは必ず戻ってくる」
そのとき、フロアに声が響きわたる。
「メロスは帰ってきたぞ!」
…しかしメロスの姿は見えない。
「メロス、一体どこにいる!?」
「ここだ!」
声の聞こえる方には一台のPCが。そこにはメロスの姿が映し出されている。
「メロスはリモートログインで帰ってきたぞ!セリヌンティウスと連携し、トラブルも収束済みだ。」
「なるほど、テレワークか…!」
王は感心し、2人を昇級させた。
ーーーー
王のあとがき
「私はこれまで何人もの人間を見てきた。しかしそのほとんどは口ではやります、できますと言っても、苦しくなると責任を押し付け逃げ出すものばかりだった。
それは私の仕事ではありません、私の責任ではありません。その言葉を何度聞いたことか…。
しかし、組織や体面、責任の範囲ばかりを気にして、肝心のトラブル時に逃げ出すような日和見な人間に管理職は務まらない。
その点、メロスくんとセリヌンティウスくんは素晴らしかった。組織の垣根を超え、社の一大事に駆けつけ見事課題を解決した。
彼らのような人間にこそ、我が社の事業と社員を任せるにふさわしい。よって昇格。
以上で我が社恒例の「管理職昇格試験」を終了とする。」
第一話 走れメロス 現代社会人編 完!
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