テロリスト ゲーム般若の脅威! その1

 これは、ある夜の出来事


 ほぼ、日課のように通っている天狗さんの

部屋でゲームをしていると、僕のスマホから

メールの着信音が鳴った。


「すいません。 ちょっとメールチェックします」


 誰からだろう? とゲームを中断して、

スマホを覗いてみると三笠君からのメールだ。


 件名には、『ゲーム般若』 と書かれてあるけど……何のこっちゃ? 


 とりあえずは、読んでみよう。



 間宮君、『ゲーム天狗放送室!』に挑戦状の

ような動画がアップされてるよ。


 その人は、『テロリスト ゲーム般若』と名乗って、何かカタコトで喋っているよ。


とのメールであった。



 …………また、変なのが出てきたのかな?

嫌な予感を感じながら、スマホで検索してみると、それらしい動画が見つかった。


「一騎、どうしたのだ?」


「天狗さん、これを観てください」


 再生ボタンを押すと画面中央に、緑の模様の

着物ドレスの金髪の女性が立っていて、顔には般若のお面を付けている。


 海外の娘かな?

彼女の後ろには、般若のお面を手にした侍姿の昭和の俳優のポスターが貼ってある。


 どうやら、自分の部屋で撮影をしているようだ。


 一体何が始まるのかな? 

なんかモジモジしているけど、緊張してるのかな?


 そんな、静止画みたいな動画を3分位観ていると


「ゲームテングホソシツにツグ!」


 急に喋りだしたぞ。 何だ何だ?


「ヒトーツ! オマエタチは、ムヤミにゲームカイをアラシテイル、ソノツミはオオキイ」


 ゲーム界を荒らしている?

なんか大きな事言ってるけど、そんな事したかなぁ?


「フターツ! …………オマエタチは、

イツモイツモ、シチョーシャのココロをカキミダス」


 まあ確かに、天狗さんのプレイには卑怯、

姑息、汚いなんてクレームはよく来るね。


「ユエにコノワタシ、ゲーム般若がタチアガリ

『ゲームテングホソシツ!』 にチョウセン

シマス」


 そう言い終わると、短刀のような物を取り出して、振り回し始めた。


 演舞のつもりなんだろうけど、痛い娘が暴れているようにしか見えない。


 着物ドレスの裾がミニスカートみたいに短いので、パンツがチラチラと見えて、ハイキックも織り交ぜたりするので、つい目がいってしまう。


 ただ、何を表現したいのか彼女の意図が、

さっぱり分からない。

そんなのを3分程続けていたら、疲れたみたいでハァハァと息を切らした。


 汗をかいて、着物ドレスの胸元でパタパタと

空気を送っているので、下着がチラチラと見えちゃう。


 それに気付いたような素振りで、胸元を手で

隠してからカメラに向かって


「ドコミテルンデスカ! ヤラシイ」 と

言って、そこで動画は終わった。


 なんつう一人芝居してるんだ。

変なもの観たなぁ。 と思っていたら


「下らん!」


 一喝する天狗さんの怒号にビックリして、

仰け反ってしまった。


「一騎!今から動画を撮る。 用意せい!」


 怒っている天狗さんの指示を受けて、僕は

カメラをセット、その間に天狗さんはパグぞうを連れてきて、ツナギを脱いでふんどし一丁になりだす。


 そしてパグぞうを抱き抱えて、カメラの前に立つ。


 この人は、何でいちいちふんどしになって、

犬を抱えるのかな? いつも疑問に思う。


 ナルシズムから来る肉体美自慢? 


 女性リスナーへのサービス? その割には視聴者9割男性だしな。


 まあ、どうでもいいや。

撮影準備が出来たので、合図を送りスタート。


「ゲーム般若とやらに告ぐ!」


 野太い声が部屋中に響き、パグぞうは

ペロペロと天狗さんのお面を舐めっている。


「己の素顔も明かさんような、テロリストなどと言う卑怯な輩の挑戦など、受ける我ではない。 以上だ!」


 それだけ言って、パグぞうを下ろしツナギを着る。


 えー! あなたがそれを言っちゃうの?

天狗さんだって、お面で素顔を隠して名前を

明かしてないよね。


 それに、視聴者からは毎日のように卑怯って

言われているよね。


 言ってる事が矛盾してるよ。

でも、そこを突っついたら怒るんだろうな。


「一騎、今のを動画に上げといてくれ。

我は寝る!」


 天狗さんは怒ったまま、パグぞうを連れて

202号室に行ったので、残された僕は頼まれた動画編集が面倒なので、撮影したままの動画を

アップロードして、もう一回『ゲーム般若』の動画を観てから家に帰った。







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