急展開!天狗との遭遇

数日後の夕方


 僕は大学の帰りにゲームセンターに足を運んでいた。

うだるような暑さに歩くのも嫌になるが、

それでもなぜ、ゲームセンターに行くかというと、太陽が眩しかったから……なんてね。


 本当は冷房の効いた店内でゲームをするのが

好きなだけなんだけどさ。


 そういえば、もう少しで夏休みだな。

休み中は昼間まで惰眠して午後はここで遊ぶんだ。

そんなことを考えてたら目的地に着いた。


『ゲームセンター狼達の午後』


 ここは個人経営の店なんだけど、地元の猛者が集まるので有名で、ゲームの腕を磨くのにはもってこいなんだ。


 店内に入ると涼しくて快適

やっぱりゲームセンターは居心地がいいんだよなぁ。


 そして店内に響き交わるゲームの雑音は、僕の心をざわつかせ燃え上がらせる!

なんてね。


 そんな事を思いながら一通り店内を眺めると、掲示板に貼ってあるポスターが目を引いた。


 『シャドウオブウォーリア』店舗大会

集まれ猛者達よ!!と書いてある。


 『シャドウオブウォーリア』とは、ファンタジー世界の戦士や魔術師等が、3人一組のチームを組んで戦う格闘ゲームで、その大会では

プレイヤーが三人一組になって1人1キャラで戦うルールなので出場するには3人いなければならない。


「3人かぁ」


 けっこう得意だし出場したいけど、僕には友達がいないしなぁ。

残り2人もなんて、集められないや


「ハァー」と軽く溜め息が漏れてしまう。

出れないものは仕方ないので、諦めて気を取り直し何のゲームで遊ぶか見て回ることにした。


今日は何で遊ぼうかな?


 そうだ、新作の格闘ゲームが出たはずなので、それにしようと探していたら、ピンクのラインが入った白の薄いパーカーに短いデニムパンツの少女が目の前を通り過ぎた。


 ショートヘアーのかわいい娘で僕のタイプだなと思って見とれてしまう…が


 ん?、何処かで見たことがあるぞ!

気になったので少し考えてみる。


 ………あれ、もしかして?

いや、間違いない彼女だ。

『ゲーム天狗放送室!』の紅美ちゃんだ!

この町に住んでいたのか?


 そうだ、声をかけなければ「この前は大変でしたね」

僕がいれば君を守れたのに…と


「あ、あの、すいません。」


 僕は勇気を出して紅美ちゃんに声をかけてみる。


「『ゲーム天狗放送室!』の紅美さんですよね。」


 突然声を掛けたのでキョトンとした彼女は、

少し間を置いてから「あー」と言って


「天狗ちゃんの動画、観てくれてるんだね。

嬉しいな。」


 と僕の手を握ってくれた。

ああ、堪らない。


「ああー」


 感動して思わず声が溢れ出ていた。

本当に嬉しくてたまらなかったが、

僕は前回の放送での天狗の行為に腹が立っていたので、気を取り直して彼女に


「この前の放送は大変でしたね。

天狗さんに色々いかがわしいこと要求されて」


そう言葉で伝えると


「?」


紅美ちゃんはまたキョトンと数秒

「あー」と声を上げて


「この前の水着のときの?」


「そうです、あんなのは許されない!

水着を脱がそうとしたり、あちこち触ったりして」


 それを聞いた紅美ちゃんは笑いながら


「アハハハ!

天狗ちゃん、そんなことしないよ。

顔見れば分かるでしょ」


 ん?イヤイヤ天狗の面着けてるのに顔を見ても、天狗の面なので分からないと思いますが…

あと、そんなことしてたよね。

僕は困惑してしまう。


「あれは視聴者さんにサービスで演技しただけだよ。

ホントにはやってないんだよ」


「え!?でも」


 例え、それが演技だったとしても許せない。

僕の勝手な気持ちだとしても

上手く言葉に出来ないのを言葉にしようと考えていると、紅美ちゃんは何かに気づいたようで僕の後ろ奥に視線を向けている。


「あっ、噂をすれば天狗ちゃんだよ。

天狗ちゃーーん」


 紅美ちゃんは、手を振って呼んでいる。

ん、あの天狗もいるのか?

店の入り口から長身の男がこちらに向かって

ズンズン近づいて来る。


「紅美どうした?」


 天狗が現れた。

デカイ!

彼は185cm位はあろうか、かなりの長身で

黒のタンクトップを着て、引き締まった体型

なのが分かる。


「ん!?」

 何、この人!?普段も天狗の面着けてんの?


「天狗ちゃん、この人ね。

天狗ちゃんのチャンネルの視聴者さん

だってー。」


 紅美ちゃんは天狗に僕を紹介すると、彼は僕を品定めするようにジッと見下ろしている。

天狗の鼻がまるで、僕を指差しているような

感じがして正直不愉快だ。

……

数秒の沈黙が終わると

「ほう」と言ってから


「ゲーム天狗だ、よろしく」


 と握手を求め右手を出してきたので


「間宮一騎です。」


僕も握手を返す。


 いざ天狗を目の前にすると緊張してしまうし、威圧感を感じてしまう。

…だけど、彼女を守ると決めた僕は勇気を振り絞って注意する。


「天狗さん、この前の放送はやりすぎだと思います。」


「何のことだ?」


「紅美さんに、セクハラまがいの嫌がらせを

したことです。」


「紅美さん、あんなに嫌がってたじゃないですか!」


「あれは視聴者を獲得する為の手段で、

紅美の了承を得てやったことなのだが…」


 天狗は困惑してるが構わず続ける。


「だけど、そんなことは許されてはならない!」


「それは我(われ)と紅美との話でお主の出る幕では無いであろう」


「それでも道徳的に駄目なんだ!」


 あくまでも冷静な天狗に対して熱くなる自分がいる。


 僕等のやり取りは注目を浴びたみたいで、

何だ何だと周りには人が集まって来た。


 周りからは、男女関係のいざこざで紅美ちゃんの取り合いで揉めていると思われているようだったが、僕には紅美ちゃんを守るという確固

たる信念があったので関係無かった。


 僕は天狗を指を差して


「そんなことは僕が断じて許さない!!」


 周りのギャラリー達からは、「おお!」と言う歓声が上がり


「いいぞ兄ちゃん」


「頑張れよー!」


 笑いと茶化したような声が飛んで来た。

そんな喧騒の中、天狗の隣の紅美ちゃんが僕の前に出て来て


「いい加減にして、あなたに関係無いじゃない!

天狗ちゃんを困らせないで」


「えっ、僕は君を守るために…」


「そんなこと頼んでないし」


 どうやら、紅美ちゃんは僕が天狗に注意をしていることに怒っているようだ。


「紅美」と天狗は、彼女を手で制して後ろに

下がらせると僕に


「では、どのようにしろと」


「だったらゲームで勝負しろー!」


 僕は天狗にゲームで挑む。

これなら僕にも勝ち目があるし、

ここはゲームセンターだ。

ゲームで白黒つけようじゃないか


「ほう、よかろう。

ならば対戦するゲームは我が決めるとしよう」


しまった!

僕の決めたゲームで勝負しろ、と言うべきだったが既に遅かった。


 どうしよう、何を選ぶのかな?

スポーツゲームは苦手だし…

パズルゲームも困っちゃう。

天狗の選んだゲームは以外にも


「『シャドウオブウォーリア』でどうだ?」


と言ってきたので良かった。

僕の得意なゲームでホッとした。

これなら勝ち目がある。


「よし、いいだろう。

僕が勝てば紅美ちゃんを解放しろ!」


「ん?よく分からんが分かった。」


 天狗は釈然としてない様だが取りあえずは

納得した。

納得したってことは約束したも同然だ。


「いいか!

男と男の約束だぞ!」


 後で言い逃れ出来ないよう約束を取りつける。

この、男と男の約束ってのがポイントよ。


「よかろう、もし我が勝てばお主は『ゲーム

天狗放送室!』の一員となり我の為に働くのだ!」


 こうして天狗の選んだ『シャドウオブウォーリア』で戦うことになった。


 『シャドウオブウォーリア』とは、ファンタジー世界の戦士や魔術師達が3人1チームでパーティーを組んで相手チーム戦う対戦格闘ゲーム


 専用カードを使って職業をベースに自分のキャラクターをエディットしたり、勝利ポイントや課金でアクセサリーと交換して装備をし自分好みのキャラクターに仕上げていく

もちろんキャラを作らなくても遊べる。


 僕は『シャドウオブウォーリア』の筐体に座りコインを投入

筐体からチャリンと音が鳴り反対からも

チャリン♪と音が響く

天狗もコインを入れたな。


 キャラ選択画面に移ると僕はソードマン、

ソーサラー、マジックナイトを選んでスタートスキルにソーサラーの炎エンチャントを

ソードマンに付与した。


 これでソードマンは炎攻撃が追加になって

高い攻撃力で戦える。

一方、天狗はプリースト、ランサー、

アーマーナイトを選んでいた。


1ラウンド目


僕のソードマン対天狗のプリースト


 ゲームがスタートすると天狗は動かないので、僕は飛び込んで攻撃を仕掛けに行く。

初撃はガードされたがエンチャントした炎攻撃で削り攻撃を与える。


 天狗のガードが固く、削り攻撃のダメージしか与えられず、上段攻撃下段攻撃を的確に守る。


 僕は攻撃の手を休めずに攻め続けながら画面端に追い詰めて、必殺技やエンチャントした炎攻撃でガードの上から削ってダメージを与えるけど削り攻撃でしかダメージが入らない。


「どうだ僕の攻撃は!

手も足も出ないようだな!」


 ガードは上手いが僕の攻撃に手が出せないようで、天狗は大した攻撃も出来ずに体力ゲージの1/3を残してタイムオーバーになった。


 1ラウンドは僕の勝ちだ。

これなら勝てる勝てるぞ!


「天狗ちゃん、大丈夫?」


 不安そうな顔で紅美ちゃんは天狗を心配して

声をかけると「フム」と一言だけ

フフフ、格好つけて余裕な態度でいられるのも今のうちだ。


 2ラウンド目に突入する。

1ラウンドでソードマンの炎エンチャントは

切れているが関係無い。

僕は攻める果敢に攻める。

天狗のランサーは後ろに下がるが


「無駄だよ、同じ事の繰り返しだ!」


よし、また攻め続けてやる。


攻撃を与えようとしたら天狗のランサーは少し下がり絶妙な距離からピシッと軽い槍攻撃を

一撃入れてきて、そして逃げる。


「クソッ、ムカつくなぁ」


 僕は追いかけて攻めるが天狗は間を開けて少し攻撃を入れてからピョンピョン後ろに飛んで

逃げる。


 僕の攻撃範囲外から的確にチクチクと槍攻撃で、ダメージを重ねてくるので画面の端に追いやろうとするけど、巧みに場所を入れ替えられて距離を取られる。


「卑怯者め、いつまでも逃げられると思うなよ!」


 その調子でランサーを追っかけたが、攻撃を

一撃も入れれずにタイムオーバーで2ラウンド目は天狗が勝った。


「天狗ちゃん、すごーい!

あの人なにも出来なかったね。」


 天狗の隣で喜んでいる紅美ちゃんに

違う、あんなのは勝ちじゃないんだと伝えたかった。


「クソッふざけやがって!」


3ラウンド目

 開始早々に距離を取ってソーサラーで魔法攻撃を撃っていく。

これならどうだ!


 僕もチクチクと遠間から戦ってやる。

様子を伺いどう動くのか見てやるさ

だが天狗は攻撃魔法を器用にかわしながら

近づいては、ピシッ、と槍攻撃を入れてくる。


 ヤバイ!何とか離れてソーサラーの距離を取らないと今度は僕が逃げる。

逃げながらも魔法攻撃を撃つ、天狗は的確に

ガードをするが魔法の削り攻撃で地道に体力を減らす。


 そんな攻防でお互いの体力ゲージは同じ位に、あと5秒でタイムアップで引き分けかなと

思っていたら


「あの人、逃げてばっかりだね。」


「え?」紅美ちゃんの思いがけない一言に

気を取られてしまい惰性で魔法を撃つと、

天狗のランサーはタイミングを合わせて槍を

飛ばし、魔法攻撃を打ち消し貫通してきた。


「しまった!」


 ガードは間に合ったが体力ゲージを少し削られたので慌てて追いかけるも、天狗のランサーは槍を拾うこともせず逃げ切りタイムアップで

負けてしまった。


「何だよ、逃げてばっかりいるのは、天狗の方じゃないか!」


しかし、この天狗と闘っていると疲れるな。



4ラウンド目

 僕は最後のキャラのマジックナイト

このままでは駄目だ。

攻撃のタイミングをずらしてテンポを変えてみよう。


ジャンプで飛び込むと着地後を狙って攻撃を

してくる。


「やはりな」


 天狗の攻撃をガードすると少し隙を見せてから攻撃で追いかけてみる。


「やった!」


 1ラウンド目のように画面端に追い詰めて後は逃れられなくする。


天狗は僕の攻撃を的確にガードするが、

マジックナイトの魔法剣で押し削り、そして少しだけ距離を取り反撃する余裕を与えると思惑通りの行動をしたので


「お見通しなんだよ!」


槍攻撃に合わせ飛び込んでコンボを入れると、やっと連続攻撃が入った。


 テンポをずらしてフェイントを混ぜると、

天狗のガードのテンポが合わなくなったようで、攻撃が入る。


「分かったか!これが本当の僕だ。」


 さっき逃げていたのは天狗につられただけなんだ、見ててくれ紅美ちゃん。

少し反撃を受けたが相手のランサーを倒した。

この調子で行けば勝てるぞ!


そして最終ラウンドが開始

 相手はアーマーナイトか

タワーシールドを持つ防御力の高いユニットだ。


「だから何だって言うんだよ。

動きの遅いアーマーナイトなんてマジックナイトの魔法剣で翻弄して勝手やる。」


 開始早々、虚と実を混ぜて前後に動き遠距離魔法を撃つ

天狗のアーマーナイトはガードで攻撃を受けるが、ん?魔法攻撃で体力ゲージが削れない。


「何故だ?」


 今度は飛び込んで魔法剣の技攻撃を当てると

天狗はガードを固めているので、

その上から連続攻撃を入れて削ってみるが、

ダメージが全く入らない。


 そうか、スタートスキルでアーマーナイトに

プリーステスの守備魔法のプロテクションを

かけていたからだ!


 そのせいでガードをされると技や魔法の削り

攻撃が受け付けなくなっている。


「クソッ、だが盾さえ破壊すればなんとでもなる。」


 やることは一緒だ。

どうせガードを固めてタイムアップを狙うんだろ

果敢に攻めようとしたとき、アーマーナイトは盾を構えて突っ込んできた。


 《シールドバッシュ》だ!

お互いの攻撃が当たったが、マジックナイトが

吹き飛ばされてダメージも僕の方が受けていて

天狗のアーマーナイトはジワジワ歩み寄り、

近すぎない所でしゃがんで待っている。


「嫌な距離を取るな」


 少しだけ歩いてフェイントをかけながら飛び

越し背後を攻めてやる。

アーマーナイトの攻撃の届かない所でタイミングを計って


「よし今だ!」


 狙いを定めてジャンプするとアーマーナイトも後方にジャンプして剣を出していた。


攻撃は受けたが、こちらは手を出さなかったので着地硬直がなく相手の近くに降りれたので、

ここぞとばかりにラッシュを入れる。


 いくらか直接ダメージを入れたが守備に

特化したユニットの為、全てのコンボが入らず

アーマーナイトは持ち直してガードを固める。


 盾さえ破壊できれば、そう思って一心不乱に攻撃を与えていくと

バン!という破壊音が聞こえた。


「よし壊せた!」


 盾がないなら、いくらガードが固くても

魔法剣で削ってやるさ

ラッシュを入れようとしたらアーマーナイトの動きに違和感を感じる。


 そうだ、シールド無くなったアーマーナイトは少しだけ動きが速くなるのを忘れていた。


 このまま守り逃げ切るのかなと思っていたら

天狗は攻撃を仕掛けてきて、お互いの攻撃が

当たる。


単発の攻撃力は相手の方が上なので、ますます不利に


「マズイなぁ」


 考えるんだ。

あえて相手の攻撃範囲に入って攻撃を誘発し、

距離を見切って後ろに下がり連続攻撃を当てよう。


 慎重に詰め寄ってくるアーマーナイト

距離が段々と近づいて来る。

攻撃範囲に入るが直ぐには手を出さない。


「それも計算の内さ」


 相手は業を煮やして攻撃を出してきたので、

やった!僕の読みが当たった。

とっさに後ろに避けて攻撃を入れる。


 この連続攻撃が決まれば体力ゲージは逆転して勝てるぞ!

初撃を入れたところで筐体の向こう側から


「よーし、勝った!」


力強い大声が聞こえてきたので、

え?なんだと一瞬手を止めてしまう。


 しまった!と思ったときには既に遅く連続攻撃は途絶えてアーマーナイトは、その隙に逃げて追いかける間も無く、そこでタイムアップで

僅かの差で負けていて、天狗にあと一歩の所で及ばなかった。


「天狗ちゃん、すごーい!」


 紅美ちゃんは天狗に抱きついて彼の勝利を喜んでいる。

こんな負け方あるものか


「チクショーーー!」


 僕は悔しさが溢れだすと、ガクッと四つん這いになり人目もはばからずに絶叫した。


「アーーー、チクショーーー!!」


再び叫んだ。

悔しいただ悔しい。


 周囲の人が何事かと騒ぎ出すが恥ずかしさよりも悔しさが強かった。


「天狗ちゃん、あの人こわいよ」


 紅美ちゃんは天狗に耳打ちしている。

どうやら僕の行為に引いてるようだった。


 筐体の椅子から立ち上がった天狗は、フーっと一息つくと四つん這いの僕に近づき右手を差し出して


「さあ約束だ、我の仲間になるんだ。」


「いやだ!

僕はアンタの仲間になんてならない!」


 あんな卑怯な手まで使ってきて約束なんて守れるか。


パシッ!

天狗の差し出した手を払うと


「天狗ちゃん、そんな約束守らない人なんて

放っておきなよ。」


クッ、紅美ちゃんの一言がキツく刺さる。


天狗は僕に近づいて肩に腕を回すと耳元で囁く


「我の仲間になれば紅美と会える口実も出来るではないか?」


「だけど…」


「あの通り紅美は可愛い。

正直、我もいつ手を出すか分からんぞ。

そんな我を監視できるのは悪い話ではない、

どうだ?」


「紅美ちゃんの為?」


「そうだ。」


 紅美ちゃんを見ると彼女は明らかに嫌そうな顔を僕に向けている。

嗚呼、無理だ。

完全に嫌われた。

もう泣きたい。


 天狗は僕の気持ちを察してくれたのか小声で

こう囁く。


「心配するな、紅美には誤解だと上手く伝えておく」


「本当?」


「ああ、本当だとも」


 天狗は僕の右手を強く掴み立ち上がらせると

観戦していた皆に紹介しだした。


「みんな聞いてくれ、新しく『ゲーム天狗放送室!』に加入した間宮一騎だ!」


 周りからは拍手が鳴り響く、正直紅美ちゃんをダシに上手く乗せられたような気がするけど

彼女に会える口実が出来るならそれも構わない。


「間宮一騎です。」


 照れながら自己紹介をすると何の事だか分からないけど盛り上がる観戦者に祝福?の拍手を

送られる。


 こうして僕は『ゲーム天狗放送室!』の一員になった。

これから天狗さんやゲームを通して色んな人に出会い様々な体験をしていく事になるんだけどそれはまた別のお話で

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