👺ゲーム天狗放送室!

道化のサムシング

僕と天狗と紅美ちゃんと


 僕の名前は間宮一騎、大学1年生

僕はゲームが好きで、よくゲーム実況動画を

よく観るんだけど、中でも特に観るチャンネルがあるんだ。


 そのチャンネルは『ゲーム天狗放送室!』

天狗の面を着けた男がゲーム実況を配信してるんだよ。


 彼のゲームの腕はなかなかなもので、特に

アクションロールプレイングや対戦格闘ゲームを中心にプレイしている。


 正直、天狗には興味が無くて彼の姑息で地味なゲームスタイルに感心出来ないのだけど、

何故このチャンネルを観ているかというと、

アシスタントの女の子が目的で観てるんだ。


 彼女は紅美と呼ばれていて、天狗と一緒に

ゲームをして楽しそうに遊んだり、彼の似てない物真似や、つまらない冗談で笑っている。


 僕は彼女の無邪気な笑顔を見ているのが好きで、彼女に恋をしていた。


 ある夜の生放送配信での出来事

その日は蒸し暑く部屋の中なので下着姿で、

ダラダラとベッドの上で過ごしていたんだ。


 配信時間になったのでノートパソコンを開いてチャンネルを合わせたら、いつものように

天狗の面を着けた男が画面の真ん中で立っている。


 だが、隣にいるはずのアシスタントの紅美

ちゃんがいない。


 彼女がいないので、ガッカリして他のチャンネルに変えようとしたら突然


「えー、今日の配信でゲーム実況はしません」

と言うので気になってチャンネルを変えないで観ていたら


「暑い日も続くなか、視聴者の皆にサービスとして目の保養をして頂きたいと思います」


目の保養って何するんだ?


「紅美、こちらへ」


 呼ばれた彼女はモジモジとしながら入って

来た。


 なんと!彼女はピンクと白のチェックの水着を着けていて、天狗の隣に立つと恥ずかしそうに水着の上下を手で押さえ隠している。


「おおーーぉー!」


僕は声を上げて興奮!

何て可愛らしいんだ!


 手で水着を隠しているが彼女のスタイルの

良さが分かる。


 欲を言えば手で隠さないでほしい

画面の中の彼女が近いのに遠くて何とも何とも

もどかしい。


「天狗ちゃん、恥ずかしよぉ」


か細い声で恥ずかしがっている。


「さあ紅美、押さえいる手をどけて視聴者の皆に見せるんだ!」


「こう?」


 天狗にうながされて、ゆっくりと手を後ろに

組んで水着姿を披露したが、顔はうつむいて

斜め下に視線が向いている。


「いいぞ紅美!

さあ、カメラに向かって今の気持ちを喋るんだ!」


「…凄く恥ずかしいです」


 紅美ちゃんは、モゾモゾと顔を真っ赤にして今にも泣きそう。 そんな天狗の行為に段々腹が立ってきた。


 やりすぎだ、これは注意しよう。

僕はキーボードを叩き天狗に注意を促す。


 ゲーム天狗さん、さすがにやりすぎですよ。

もう止めましょう、とコメントを送る。


 天狗はパソコンに顔というか、お面を向けている。


 どうやら僕と同じ様に何人かが、コメントを

送っているようで、彼はそれを確認しているようだ。


 そして視聴者を挑発するかのように、紅美

ちゃんの水着の胸の紐を引っ張りながら中を

覗こうとしている。


 テンション高く笑いながらなおも続けて、

しまいには自分のツナギを脱ぐと、ふんどし

一丁になりだした。


「やめて!天狗ちゃん」


「フハハハハ!」


 ついに彼女はしゃがみこんで泣きだした。


 ヤメロ天狗、ヤメロ天狗、ヤメロ天狗!

ヤメロヤメロヤメロと

僕はキーボードを叩く!

カタカタ叩く

荒々しく叩く

一心不乱に叩く!


 天狗は再びパソコンのコメント欄をチェックすると、テーブルの上に置いてあるピンクの

スマホを取り、何を思ったのかカメラモードで

カシャカシャと彼女を撮りだした。


「いいぞ!エキサイトだ!」


 天狗の下衆な行為に憤慨する。

この天狗許せない!

彼は僕の感情を逆撫でするかのように

彼女に迫り両腕を大きく広げると紅美ちゃんに覆い被る。


「いやーー!」


「やめろーーー!」


 僕がモニターに叫ぶと彼女の悲鳴と

『フハハハハ』と天狗の笑い声が混じり合い、そこで配信が終った。


 クッソー!とにかく不愉快で、どうしようもなく腹がたった。


 あの変態天狗め! もし会ったらただでは置かない。


「一騎、大きい声出してどうしたの?」


階段下から母さんが声をかけてきたので


「何でもないよ」と返事をすると


「ご近所に迷惑だから少し控えてね」

と大学生にもなって恥ずかしながら注意を受けてしまった。


「クソ、あの天狗のせいだ!」


 パソコンの電源を切り、ゴロンとベッドに横たわって窓の外を見上げると、夜空に浮かぶ星が綺麗だ。


 同じ空の下のどこかに君がいるのに…

僕は何も出来ない。


 君のいる所が分かれば……

僕が駆けつけて守るのに


「ちくしょう!」

ああ、もういい! もう寝よう…。


 この後、寝ようとしたけど怒りが収まらず、

なかなか寝つけなかったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る