うんこの未来
すでおに
うんこの未来
これからうんこの時代が来る。かもしれない。
ふざけているのではないし、何かの隠語でもありません。
私は尻の穴から噴出されるあのうんこの時代の到来を予感しているのです。
下ネタでもありません。
ITバブルの波に乗って成功を掴んだ先人たちに負けじと、まだ見ぬビッグビジネスの種を探し求めている若人もいると思いますが、そんな人に私はうんこをオススメします。
うんこは大きな可能性を秘めている。そう思いませんか?
子供の頃ずっと抱いていた疑問がありました。
どうして大人は天気の話をするのだろう?
近所のおばさんと顔を合わすと決まって「今日はいい天気だね」とか「暑いね」とか「寒いね」とか「雨降りそうだね」とか。おばさんたちは足並み揃えて天気を話題にしました。
夏は暑いし冬は寒い。分かり切ったことをどうしていちいち口にするのか、子供心に疑問だったのですが、自分も大人になって理解できました。
天気は人類共通の話題なんです。
万人に関係することだから、頭の上に同じ空が広がっているのだから、会話の取っ掛かりにはもってこい。
これは私が東京出身だからであって、大阪だったら阪神の勝敗だったりするのかもしれませんが。
ちなみに子供の頃遊びに行ったおばあちゃんの家での食事中「しょっぱいものも食べたいでしょ」と塩昆布を出されたことがありますが、塩気への欲望は微塵もありませんでした。
少し逸れましたが、天気と同じかそれ以上に多くの人が関心を抱いている話題が『健康』です。健康はもはやブームではなく、生きる上でのテーマと言っていい。
食事にせよ運動にせよ、おおよそ健康に関わる話題には多くの人が飛び付きます。テレビでも情報番組からバラエティまで頻繁に取り上げられます。
だからこそうんこなのです。
私は医学の素人ですが、うんことは物心つく前からの付き合いなので、知らない仲ではありません。
口に入れた食べ物は、胃や腸といったいった中継地点を通過し、ゴールゲート(肛門)でフィニッシュする。消化器マラソンの完走者。それがうんこです。
体内を巡回したのち、姿を変えて再び現世に降臨される有難いお方なのです。
消化器を巡ってきたうんこは体からメッセージを受け取っているはずです。うんこに訊けば、栄養バランスから健康状態まで、体のことを知れるのではないか。
「ビタミンBが足りていない」とか「肝臓が弱っている」とか。女性なら妊娠にいち早く気がつくかもしれない。
もしうんこの気持ちを代弁できる(大便ではなく)機械が開発されたら人間の寿命はぐっと伸びるでしょう。『うんこスピーカー』。夢のような発明です。
うんこの声を聴いてみたくないですか?
浅草の三社祭で法被を羽織っているのに神輿を担がず酒ばっかり呑んでるおっさんのようなだみ声をイメージしますが、実際にうんこがしゃべるわけではなく、あくまでも人間の言葉に変換するだけなので、おそらくは「ナビダイヤルに接続します」みたいな声で再生されるでしょう。声質ではなく中身が肝要です。
「はじめまして。あなたのうんこです。肝機能の低下をお知らせします」
「おはようございます。今日は下痢気味です。寝不足が続いて胃腸が弱っています」
「今日のラッキーアイテムは梅干しです」等々。
毎日あなたの健康状態を知らせてくれる、主治医のように頼もしい存在になるでしょう。
もちろんいいことばかりとは限りません。
いつものようにうんこをしてスピーカーをオンにしたら「直接お伝えできませんので、家族を呼んでください」と強張った声。
トイレに集まった家族を前に「胃に悪性の腫瘍があります。もって1年です」とまさかのうんこからの余命宣告。
流石にそこまでうんこには判断出来ないでしょうが。
日々の体調の変化を教えてくれるうんこスピーカーは人類に偉大な進歩もたらしてくれるでしょう。
うんこが産声をあげる日も近いかも知れません。
令和2年3月8日
うんこの未来 すでおに @sudeoni
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
初詣いきますか?/すでおに
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
コンビニ多すぎませんか?/すでおに
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます