第7話 檻の外の混沌③
「た、助けてくれ!!」
地面にしりもちをついて、怯えた視線で、こちらに助けを求めてくる男がいた。
それは兵士だった。アウグストも良く見慣れていた、番兵という役割を司る兵士。
きっと国の非常事態とあって、魔物の掃討に駆り出されたのだろう。
目の前には羽の生えた山猫のような空を飛ぶ魔物が二体。
「助太刀する」
……飛ぶ相手は、基本は弓で応戦するのがいいだろう。
ただ、この番兵は剣しかもっていなかった。故に、相手が空を飛べば勝てる道理はない。
アウグストはその点単純で、弓など持ったことが無かった。
しかし、戦うべき獣は必ずアウグスト自身を狙ってくるのだから――
敵意を向ける、悪意を向ける。
それだけで獣は気づく。鋭い爪を光らせて、鳥のように素早く、こちらの喉元を狙い振りかざすだろう。
だからこそだ。
「ふんっ!」
アウグストはその素早く飛来する殺意の塊を文字通り、一刀両断した。
こちらに向かってくるのだから、来た時に迎撃すればいい。
単純明快な話だ。しかし、それを行うには相当な修練、目の良さ、胆力がいる。
一歩間違えれば首を割かれて死ぬ。その攻撃を、ギリギリまで引き付けて、割かれる前に割き返すのだから――
「ガァッ!!」
獣のように声を上げて、襲い来る二頭目の飛来物を二つに割く。生暖かい返り血が肌を濡らし、外気に触れて消えていく。
後に残るは人のみ。アウグストは鋼鉄の剣を右手に携えたまま、番兵に駆け寄った。
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