第6話 あの日の記憶②
「なら、あれが欲しい」
少年はパッと、目が合った"モノ"を指さした。
石畳を行く雑踏に紛れしかして注目すらもされないモノ。
人とは呼べない、呼んではいけない生物。
薄汚れた麻布を纏う数人の少年少女。みな一様に生をあきらめたような面持ちで下を向き、重い鉄の枷を引きずって歩いている。
それらの名前は奴隷。王子とは天地ほどの身分の差があるモノ達だった。
「奴隷? 使用人ならばいくらでもいるし、中には貴族もいよう。なぜアレなのだ?」
父はその生物を見ようともせず、息子に真意を聞いた。
少年は変わらず一点を直視して、こう言い放った。
「あれは不思議です。活きた目をしている。僕を見て視線を逸らすこともしない、気骨のあるモノの目だ」
「なるほど、それは無礼な奴だ。よかろう、生殺与奪の権利を買おうというのだね。だが私たちは天に近しい皇帝とその子だ。買わずとも、斬ればよい」
「それではダメです。小手先の死は生温い。罰は死ではなく、苦痛の果てにある絶望だとわからせてやる必要があります。この国の、未来のために」
少年は平然と言い放った。国の未来の為、その言葉を聞いた皇帝は大喜びし、すぐにそのモノを買い与えた。
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