第46話 勢揃い、ライスジャー!
「どうだ!」
「おおおー!」
男達がどよめく。
姿を表した麦野に、衝撃を受けているのだ。
……胸元が縮んでいるような?
「アクション用のね、しっかり固めてちょっと小さく見せるブラを使っているの」
自慢げな麦野。
だが、男達は少しだけがっかりした顔だ。
実用性よりもロマンなのだ。
「もしかしてそれって、米倉さんつながりでゲットしたやつ?」
「そう! 着物を着て動くためのブラだって。胸が大きいと着物合わないもんね」
スーツも体に密着するから、胸が大きいと目立ってしまう。
そこをカバーするために着物用の下着を使ったということらしい。
「なるほどー。日舞とヒーロースーツが繋がっていた……」
「春菜もちょっとだけ、舞ちゃんと稲垣くんを見直したよ。色々応用できるものなのね……。ってか、稲垣くんやるじゃん。あんた、ちゃんと体作ってきたのね。すっごく見栄えする。思ったよりいい体してんのね」
麦野が俺の胸板をぺたぺた触る。セクハラでは?
そしてセキハンジャースーツに身を包んだ麦野は、かっこいいというより可愛かった。
彼女は背が低いから、クロマイジャーである俺よりもちびっこいセキハンジャーになっている。
番組よりも、ちょっとむちむちしてるかも知れない。
でも、舞香と一緒にアクションの練習をして体を引き締めてはいるのだろう。
佃、布田、掛布は三人で協議を始めた。
「果たして小さく見せることに意義が?」
「小さくてもいいじゃないか南海は小さい」
「布田の意見は聞いてないぞ。全部水戸ちゃんになっちゃうだろ」
「おらー男どもー! 何をぐだぐだ言ってるんだー!」
そこへ登場、水戸ちゃん。
振り返った俺達が見たものは……。
ライスジャーTシャツに、活動的なミニスカートの水戸ちゃんだった。
「普通」
「宇宙一可愛い」
「普通」
三者三様な意見だな。
うち二人は一緒だけど。
「ええっ!? その悪のカリスマに満ちたなんか超かっこいいスーツのイケメン、もしかして唐人なの!? うわ……あたしの彼氏イケメンすぎ……?」
「司会のお姉さんの南海……可愛すぎて俺は改心してしまいそうだよ……! 光のオーラを感じる……!」
「もしかしてあたし達って最強のカップル……!?」
「最強……!! 俺達最強!!」
「うぇーい!」
いかん、バカップルが盛り上がっている……!!
他の男達二人は、しゅんとなって静かになった。
いかん。
「そうだよなあ。俺達は所詮戦闘員だもんなあ」
「特別になれるかと思ったけど、俺だって戦闘員その2だよ……」
「佃、掛布! まだまだ終わってないって! 大事な人を忘れてないか?」
俺は場を盛り上げるため、二人に声をかける。
佃はじっと俺を見てから、
「ヒーロー様はポジティブだぜ……。俺を見ろ。なんかバッタの覆面被って、イナゴーって叫ぶんだぞ?」
「くっ、佃が思った以上にダウナーになってやがる。だが、佃、掛布。昨日のFINEを思い出せ」
「昨日の……!?」
ここで、二人の目に生気が宿った。
どうやら思い出したようだな。
米倉舞香のスーツ姿を。
「米倉さん!!」
俺が彼女の名を呼ぶ。
すると、真っ白な影が姿を表した。
「とーう!」
走って現れた彼女は、前方宙返りからの着地を見事に決める。
どよめく俺達。
現れたのは、ハクマイジャーヘルムをしっかりと装着した舞香だったのだ。
あの長い黒髪は一体どこに!?
ヘルメットの中なのか?
「白き王道の戦士! ハクマイジャー!」
声は舞香の可愛らしいものだが、精一杯凛々しい声を作っている。
いけるいける!
ポージングも完璧。
俺は思わず叫んでいた。
「ブラボー!!」
一人で盛大に拍手をする。
これが興奮せずにいられるか。
普段の姿なら、ハクマイジャー大好きっ子な美少女JKの舞香だが、スーツを身に着けたならそれはもう別の存在なのだ。
ここにいるのは、もう一人のハクマイジャーだった。
ちょっと体の線が艶めかしすぎるけど。
周りも、わーっと盛り上がった。
昨日はFINEの舞香がエッチすぎるのでは無いかと議論を交わした男達も、今ばかりはヒーローの登場に沸き立つ。
舞香はしばらく、動きを止めていた。
ぷるぷるしている。
あれは感激しているのだ。
感動しているのだ。
俺には分かる。
「ああ……夢が叶った……」
ぼそっと言ったのが聞こえた。
良かったなあ……。
そして、ヘルメットを外す舞香。
彼女の髪は、ボリュームが出ないよう、お団子にしてまとめられていた。
上手くそれが収まるよう、ヘルメットも工夫されてるみたいだな。
これはきっと、麦野のヘルメットも同じになるだろう。
舞香はしばらく余韻に浸っていたが、その後すぐに俺に気付いた。
目をきらきら輝かせて、こちらへパタパタ駆け寄ってくる。
「クロマイジャーの稲垣くん……!! かっこいい……! ちゃんと体つくって来たんだね……!」
胸板をぺたぺた触られた。
ははは、もっと触っていいですよ。
「なんか春菜に触られたときよりも嬉しそうじゃない?」
麦野が解せぬ、という顔をしたのだった。
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