◆エピローグ◆

「そういや、文化祭の準備ってどうなってます?」


 俺は新築の宿を掃除しながら水花先生にたずねる。

 小さくなったままの先生は量産型に腰掛けたまま手伝おうとはしない。


 最初から期待しちゃいないけど、堂々とさぼられてるとやっぱムカつく。


「喫茶店をやりたいという意見は多いが、他のクラスも同じらしくてな。

 ならばそこに個性をつけ加えようって流れだな、いまのところ」


 それは豚田が意図的に流した情報なのではないだろうか。

 他のクラスとの差別化という名目で自分の目的である『メイド喫茶』へクラスの意見をまとめようとする。


 くっ、あのヘンタイめ、俺がいないからって好き勝手なことを……。


「さて、他人のことはいい。おまえ、自分の選択に後悔しないか?」

「異世界で進路調査ですか?」


「誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ?」

「先生の監督不行き届きでしょ?」


「ほう、私は危険物は生徒の手が届かない場所に保管しておいたんだがな」

 うわっ、やぶ蛇だった。


「それでおまえは本当にここに残るんだな?」


「はい」

 キッパリとした返事にこれみよがしにため息をつかれた。


「まぁいい、おまえの幸福はおまえが決めろ。

 ただし、家族に連絡はしとけよ。

 私がなんとかつながるようにしてやるから」


「うちは放任主義だから大丈夫ッスよ。

 むしろ学校の女子たちが悲しみそうで心が痛いッスね」

「自分で言ってて悲しくならないか?」


「先生の胸で泣かせてください!」

「つぶれるわ、ぼけ」


 それだけ告げると、先生は量産型を操作しどことはなしに消えていった。

 

 

 

 俺は本人の了承を得て、もう一度キュイと暮らすことにした。

 なにも覚えてないキュイだけど、俺の要求に心地よく応じてくれた。


 今度こそキュイを黒化させずに育ててみせる。


 その報酬として元の世界に返してもらおう。

 それが途方のない道のりでもかまわない。


 確かにおっぱいは幸せの証である。


 だがしかし、おっぱいだけが幸せというわけでもない。今回、家族を失いかけたことでそれを実感できた。


 まぁ、もっともすべてのおっぱいをあきらめたわけでもまたない。

 チーチラさんのようなEカップテンシの存在があるし、Gカップメガミだって魔女とはいえここの出身だ。


 栄養状態さえよくなれば、この十三番目の植木鉢プランターの巨乳率は確実に向上していく……ハズ!


 チーチラさんにも確認をとったが、狩人ハンターによる肉の提供が少ないせいもあって、ここの住人は痩せ形が多いという。

 すぐにどうこうという話ではないが、まだ見ぬ巨乳おっぱいの為にも、俺は地道に環境を改善していこうと心に強く心に誓った。



 これらの目標に対して、まったく問題がないわけじゃない。

 この植木鉢プランターでは多数のトラブル(しかもそのほとんどが俺がらみ)が起きている。

 そのせいで次の接合ハンドシェイク時にはさらなる住民の流出が予測される。

 それを防ぐ為に、いろいろ奔走しなきゃいけない。

 その一環として星界樹スターツリー中層で宿を開くことにした。

 ここで宿を運営することで狩人ハンターたちを助け、人々の働きを活発化させようとするのだ。

 活気はキュイの栄養にもなるので一石二鳥だ。


 それをキュイに手伝わすのはいささか不安だったけど、次の接合ハンドシェイクまではソウジが居てくれるらしいのでとりあえずは大丈夫だろう。


「ところで、今日のオヤツはなにが出るんだい?」

「うっせ、おまえも掃除手伝え」


「ボクは用心棒だろ。

 それにいろいろと根回しをしてあげたよね?」


 それを言われると弱い。

 貧乳ちっぱいの癖にデカい面しやがって……いつか覚えてやがれ。


 そうこうしているうちに宿の扉が開いた。

 俺たちの店に客が入ってくる。


「モーミン、我に早速チヨコレイトを献上するがいい」


 客第一号は、頭の軽い金髪娘だった。

 お供にチーチラさんもついてきている。


「いいけど、ちゃんと金払えよ。

 あと買い占めしようとしたら出入り禁止にすっからな」


「なんだと!? だとしたら我はなんのために貴様らに出資したのだ!?」

「出資したのは、ヤミンズ個人ではなく、バンガ家のヤミンズチームからです」


 リーダーの我がままを、財布の紐をにぎるチーチラさんがいさめる。

 『ナイスおっぱい!』とウィンクで賞賛を送るが冷静に避けられてしまった。


 それにしても、今回、バンガ家にはたくさん世話になっている。

 星界樹スターツリーの異変はヤミンズが収めたことになってるし、資金提供も受けてこの宿はバンガ家の経営する宿屋ということになっている。


 狩人ハンターでありながらバンガ家の名を知らないヤツはいないので、後ろ盾になってもらったようなものだ。

 それでもヤミンズには感謝の念なんてわかないけどな!



「サルキチ、これ、似合う?」

 奥で着替えていたキュイがオモチから作った給仕服で出てくる。


 そしてその姿に絶句する。


 デザインは本人ができると言うので任せたのだが……その姿はミニスカメイドだった。

 しかもちょっとパンツが見えちゃってるよ!?


「キュイちゃん、あの……その服何処から……?」ってそりゃ、俺のエロ本(2冊目)からだよね!?


 ゴブメンが「そんな格好で人前に出てはなりませぬ!」と注意しているが、まるで聞いちゃいない。


 女性三人は彼女の服装に評価を出しかねている。


 ちょっとエッチではあるが、まちがいなく可愛い。

 なのにある一点が冷静な判断を狂わせているのだ。


 それはキュイの胸に搭載された不釣り合いな巨乳。


 ちゃんと服の中に納めてるけど、それって以前俺が創作したGカップだよね!?

 プリンに変えて食べちゃったのに……ひょっとして新たに作り直した!?


「サルキチ、これ、好き……だよね?」

 顔を赤らめたキュイがモジモジと俺にたずねる。


「(おいソウジ、キュイの記憶って消えたんじゃないのかよ!?)」

「(話した感じだと大部分は消えてたみたいだけど……キミのインパクト、強すぎたんじゃない?)」


「そんなことねー!」

「ねー、どう?」


 回答を求めたキュイが俺に歩み寄るが、不慣れな重りを抱えていたためバランスを崩した。

 それを助けようと伸ばした手が、偶然にも心地よい弾力を受け止めたのは不可抗力であるとここに明記しておく。

 

(ちゃんちゃん)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オモチもみゅ? HiroSAMA @HiroEX

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ