第27話 幻惑のチョコレートケーキ

「モーミン、決着をつけるのである!」


 人んで「美味うみゃ~い♪」とか言って晩飯まで食ったヤミンズが突然そんなことを言い出した。


 っていうか、いつまで俺を偽名で呼び続けるつもりなんだ?

 とっくに仮面は外して本名も教えたんだが……こいつの脳みそって書き換え不可なCD-R?


「考えて見れば、貴様との決着がついておらん。

 九割型我の勝利が確定していたが、このままではスッキリせん。

 よって決着をつけるのである」


「え~、面倒くさくね? それに俺怪我してるし」

 ヤミンズに打ち抜かれた右足をチョイチョイ指して見せる。


「その程度、狩人ハンターなら気力カバーするのじゃ」

「俺、別に狩人ハンターじゃないし」


「減らず口を叩くな~」

 まったく我がままを言うヤツである。


 ここで相手の勝ちを認めてやるのは楽ではあるが、頭の悪そうな子を上だと認めるのはしゃくに障る。

 かといって、ヤミンズの強さは身に染みているのでまともに挑戦を受けるわけにもいかない。


――だがしかし……


 俺はヤミンズを観察して熟考する。


 彼女の推定戦闘力はCカップそれなりにある。

 乳力にゅうりょくの枯渇したいまの俺には十分妥協できる品だ。

 若干しゃべりにクセはあるが、口を閉じてりゃ美人だし将来性も高い(とくにおっぱいのあたり)。


――この青田は買っても損はない


 なに中学生が相手?

 問題ない、単なる三つ下の女の子だ。


 いささか変態ロリコンが己の趣向を正当化する為の理屈みたいだが、これのどこに問題があろう?


 そこまで思考がたどり着くと、俺はヤミンズを揉み揉みする為の戦略を瞬時に組みあげる。


「ヤミンズ、おまえがどうしてもというのなら戦ってやらないこともない」

「ふふっ、ようやくやる気になったか。さすがは我の見込んだ男よ」


「だがしかし、勝負の内容はこれで付けさせてもらう!」

 そう言って持ち出したのは二体のプチゴーレムとコントローラーだ。


 キュイの訓練でやった風船割りゲームで勝負をつけようと提案する。


 未知の分野に難色を示すヤミンズだが、そこはちゃんと考えてある。


 俺は片腕になったボロボロの一号機改を使用。

 ヤミンズはピカピカのMARK2を使用。

 十回勝負で、一回でも風船を割れたらヤミンズの勝ちとする。


「さらに、もしおまえが勝利したら、キュイにも作ってやったことのない『チョコレートケーキ』を食わせてやろう」

「チヨコレイトケイキだとぉ!?

 それはもしやチヨコレイトにケイキを載せた夢のコラボではあるまいな!?」


「ふふふっ、それは俺に勝利し己が目で確かめてみるがいい」

 愚かなヤツめ、まんまと食いついてきやがった。


 すでにヤミンズの脳内は未知のスイーツでいっぱい。

 正常な判断を失った今なら追加要求も容易い。


「その代わり! 俺が勝ったらおまえのおっぱいを揉ませてもらう!!」


 ノリと勢いでOKを貰えると思ったものの、ヤミンズは俺から目を逸らして赤面した。


「エッ、エッチにゃのは、結婚するまれらめらのぉ……」

 えっ、なにその反応!?


 チューブトップにホットパンツで露出度アゲアゲなのに、そんなウブな反応で逃げようとするのは反則だろ!?


「なに、たいしたことじゃない、ちょっと揉むだけだ。

 それともヤミンズ・バンガ。おまえには勝つ自信がないのか?」

「そっ、それれも、らめなものはらめなのぉ」


 涙目になられると女子小学生をいじめてる気分になってきた。

 でも、発育がいいせいか辞めようという気にはならない。

 むしろ『こいつ相手なら、もっとやってもいいんじゃね?』という気がしてくる。


「サルキチ」

 澄んだ声で名を呼ばれ冷静さを取り戻した。


「いっ、いやちがうんだキュイ。

 これは全然本気じゃ、なくてその……冗談だから。なっ、なっ?」


 いまさらいいわけしても『メッ』は避けられない。

 そう腹を括ったんだけど、意外にもおとがめはナシだった。


 キュイは「先、寝るね」とゴブメンすらも残して、ひとり家の中へと入っていった。


「ずいぶん早くに寝るのだな?」

「まぁ、今日はいろいろあったし疲れたんだろ」


「それよりもだ、さっきの話受けてやる。

 『おっぱいを揉むというのは冗談』。

 そうあるじに宣誓した以上ウソではあるまい?」


 自分に不利な条件が消えたせいで、ヤミンズはやる気をとりもどしやがった。つくづくムカつく小娘である。

 こうなった以上、俺としても一発かましてやらないと腹の虫が治まらない。


 こうして俺とヤミンズの夜の戦いがはじまった。

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