第109話氷の女王と誕生日会
雫がトイレに行っている間に、クリスマス会兼、雫、露の誕生会を行うことになった。
「あら?楽しそうに何の話をしていたのかしら?」
トイレから帰ってきた雫が尋ねる。
「いやぁ、クリスマス会兼、お前ら姉妹の誕生日会をしようかなぁ、と」
「あら、それは嬉しいわね。あまり誕生日なんてもの祝われたことないものだから、なんだか緊張するわね」
そう言って雫は嬉しそうに頬を緩めた。
それを見て、対照的に露は表情を曇らせた。
露も、確かに大変な家庭であったが、誕生日は祝われたことがあった。
母からも、友達からも。
そのどちらにも祝われず、祝われることを許されなっかった雫のことを思っているのだろうか。
それを察知したように雫は露に静かに語りかける。
「姉さん、それは気にしなくて良いわ。これはお互い様。私も辛かった、けど、姉さんも十分辛かったのよ。それに今は黒兎にみんなもいる。大丈夫。それに、これは姉さんの誕生日会でもあるのよ。ね?黒兎?」
雫にそう言われ、黒兎は一言答えた。
「もちろんだ」
そう答えると、雫は満足そうに頷いた。
「うん。そうね。そうとなれば、咲良たちも誘おうか」
ということで、イツメンを誘ったところ、二つ返事でOKだった。
日にちはもちろんクリスマス当日。
時間は陽が昼まで来れないとのことなので夕方からになった。
「そうと決まれば……プレゼント選び!」
ということで、黒兎たちも互いのプレゼント選びをして、過ごすことになった。
そして誕生日会当日。
黒兎は朝からディナーの準備をしていた。
クリスマスらしくチキン的な料理が良いと考え、最終的にみんな大好き唐揚げをすることにした。
食べ盛りの高校生、さらに食欲モンスターの雫もいるのでたくさんの量が必要になり、朝からスーパーで鶏肉を買い占めてきた。
そんな大量の鶏肉たちを今は下味をつけるタレを作り、順次漬けていく作業だ。
「朝早くから大変ね」
「唐揚げ?美味しそう」
雫と露が仲良く二人で降りてきた。
「大変だなんて他人事みたいに……それに露、今食べても美味くないし、腹壊すからやめとけよ」
そういうと雫は少し怒ったように答えた。
「わっわかってるわよ!それに雫じゃないんだから、そんなことしないわ!」
「それもそうだな」
「ちょっと2人とも、後でベランダまで。わかってるわよね?ねぇ?」
「「すいませんでした」」
「まぁ、良いわ。誕生日だし、多めに見ましょう。誕生日じゃなかったらこ○してたわ」
「誕生日でよかったぁ。てかこ○ろされんの?あらやだ、物騒」
「黒兎は特別に、私の好きな人として特別に、こ○してあげるわ。」
「そんな特別いらねぇ!!」
「ほら、死ぬならいっそ好きな人からって思わない?」
「それは最後の選択肢ね。まだあるから、それが最善じゃないから、最悪手だから!それに好きな人が死んだら悲しいだろ?」
「それはそうね。けど、ここでこ○してしまえばずっっっっっと好きな人を好きな状態で独り占めできると思わないかしら」
「サイコ!!」
「はいはいナチュラルにイチャつくな」
「「イチャついてない!」
「どこがなんだが」
「それより手伝いましょうか?」
雫が言う。
「いや、大丈夫」
「遠慮しなくて良いのよ」
「いや、遠慮とかなくて……」
「何よ、手伝うわ。黒兎ばかりにさせるのも悪いし」
「いやいやホント大丈夫だから、お、おい、触るなやああぁぁぁぁああああ!」
黒兎ブチ切れ案件。
これには雫も納得の様子。
「ちょっと、なによ」
「触るな、ホント、お願いいたします」
「それ失礼でしょう?そこ!姉さんも賛同しないの」
「いやホント雫触んない方が良いよ。私からもお願い」
「姉さんも失礼しちゃうわ、じゃあ、愛する私の唐揚げと自死ならどちらを選ぶの?」
雫がそんな質問をしてくる。
「そんなの考えることないだろ?」
「ええ。その通り、ね?黒兎」
二人は息を合わせたみたいに同時に答えた。
「「自死」」
「二人ともそんなに死にたいならころしてあげる」
「やめろ!包丁おけ!あと、せっかくつけてた○取れてるから!」
「じゃ、私はこれで……」
「ねぇ……さん……」
「やめて!こないで!包丁持ってこっちこないでー!」
2人はこってり雫にしぼられた。
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