第108話氷の女王と冬休み
ついに冬休みに入った黒兎たち、もちろん課題はなかなかの量が出たが、計画的にやっていけば問題はない。
いつも通りというか、何も変わらず、今日もダラダラこたつに入ってみかんを食べる。
そんな冬休みもいいものだが……。
「突然ですが問題です」
露がいきなり、手に持ったみかんを食べるのをやめて言った。
「なんだよ。びっくりするから大声だすなよ」
「まあまあ、落ち着いて落ち着いて」
「いや、結構落ち着いてるけどね?落ち着きすぎて寝そう」
「そんなあなたにはこれよ」
突然、みかんを食べながら雫が言った。
「つめっ、冷た、なにこれ!?冷たっ」
「私の足よ。冷え性なの、温めて欲しいわ」
雫が靴下の上からも感じられるほどに冷たい足を黒兎に絡ませる。
「はいはい、イチャコラしてないで、問題、モンダイ!」
露が呆れたような表情を見せた後に本題に戻る。
「わかった、わかったよ。で、問題は?」
「うんうん。そうこなくっちゃ。ということで問題。この冬休みにはあるイベントがあります。さて、なんでしょう」
冬休みにあるイベントなんてものは限られる。
クリスマスに、年越し、そしてお正月。
今日は12月20日なので、年越しやお正月の話にしては気が少し早い感じがする。
そういうことで、もっとも近々にあるクリスマスが妥当なところか。
そして、それを問題にして何をしたいのか分からないがとりあえず答えておくことにした。
「クリスマス」
「うーん。おしい。おしい!そうなんだけどそうじゃない!」
(クリスマスだけどクリスマスじゃない?ナゾナゾかよ。まあ、クリスマスイブって所かな。てか、それしか思いつかないしな)
「クリスマスイブ」
「おっっっしぃー!」
「それ以外にクリスマスじゃなくてクリスマスなんてものあんのかよ」
「違う違う。クリスマスだけどクリスマスじゃないの。クリスマスじゃないの!」
「いや、言ってること変わってねぇわ」
「てか、ドン引きだよ黒兎。まさか、ここまで言われて気づかないの?露ちゃんショックー」
「うざ、あざとさうざ」
「それが私の可愛さなんだよ。まったく、わかってないなぁ」
「てか、そんなことより答えはなんなんだよ」
「いいのー?聞いても。私だけじゃなくて、雫まで悲しんじゃう」
雫の方を見ると、涙を浮かべている。
嘘泣きではない。本当に涙を浮かべている。
(あの、雫が涙を浮かべるなんて!相当のことをやってしまっているのか!?いかんいかん。未来の旦那が妻を泣かせては……)
思考がキモイのは置いておいて、あの雫か涙を浮かべるなんてことは、相当のことをしたに違いないと、今までの言動を振り返る。
しかし、思い当たる節がない。
もう一度雫をみると、涙が頬をつたっていた。
「あーあ、じゃあ、答え言っちゃおうかなぁー」
露がイタズラをする時のニヤニヤとした笑いをうかべ、完全に黒兎をからかっている。
「……もう少し考えさせてください」
「えー、ほんとに答え出るの?これで答え出なかったら、余計に雫泣いちゃうかもよー?彼氏……じゃなかった、未来の旦那がそんなことをして奥さん泣かせていいの?」
「そ、それは……っておい!それ、未来の……ってやつ!なんでそれを!!」
「えー、たまたま寝言で聞いちゃった。ほんとに夢でも雫を見てるなんて、一途だなぁ。キモっ」
「傷ついた……てか、なんで寝言知ってんの?部屋、別でしょ?」
「このお家壁結構薄いからね。それは、それは、色んな音が壁に耳を当てると聞こえちゃうんだよ。色んな……ねぇ?」
「含みを持たせた言い方やめろ。てか、壁に耳当てて人のプライバシー侵害するな」
「それはご愛嬌ってことで」
「そんな愛嬌いらねぇよ」
「ってことですけど、どうします?未来の奥さん」
雫の方を見ると、涙を流したままだが、頬を赤らめ、静かに答えた。
「旦那……さん。まあ、まあ、それでいいわ。ぐへ、旦那なんて大袈裟なのよ。ぐへへ」
「姉ながら引くわ。このカップル。そんなことはいいの!結局答え!」
「んんんんんんわからんっ!」
「ンンンンンン正解はね!12月22日は私の誕生日!」
「んんんんんんそうなのか!」
「ううううううそうなの」
「んんんんんんをしれっとううううううって言ってるよな」
「んうんうんうんなんでバレた」
「んんんんんごっほごっほっ、ゲホッ、しんどこれ」
「おヴぇ、しんど」
「今可愛い女の子が出しちゃ行けない声出てなかった」
「えっ?全然」
「さすがだよ、ほんと」
そんな会話をしていると、雫がまた涙を浮かべているのが視界に入った。
「そ、そうだよ、雫が泣いてるのなんでなんだよ」
「それは、ねぇ?」
「もったいぶるな」
「もったいぶるつもりはないけどね?つい、楽しくて。まあいいよ。24日、クリスマスイブは雫の誕生日です!」
「な、なんだってー」
「どもども、寒いリアクション、どもども」
「それで、雫は気づいてくれなくて泣いてたのかよ、可愛いかよ。ごめんな、雫」
雫の方を再度見ると雫は涙を流していた。
「ごめん、雫。俺の気が利かないせいで」
「……」
「嫌いにならないでくれよ」
「みかんの汁、目に入った」
「んえっ?」
「みかんの汁、目に入った」
「はえ?」
「トイレ、トイレ、みかん食べ過ぎたわ。」
雫は大量のみかんの残骸を残してトイレへ駆けていった。
(殴ってやろうか、まじで)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます