第11話氷の女王と前科持ち

「着いたわね」

「着いたな」

「行きましょうか、月影くん」

「俺は外で待ってるよ。自由に選んできな」

「遠慮しなくたっていいのよ。私も月影くんに選んでもらいたいし」

「ははは、それは光栄なことだが遠慮させて頂くよ」


現在地女性物下着店前。(漢字って並ぶと中国語みたいだよね)

そう、黒兎は今女性物下着店の前にいるのだ。


「恥ずかしいがってないで、入りましょうよ月影くん」

「嫌だよ!俺入りたくない!」

「私のブラで遊ぼうとしておいてよく言えるわね」

「それは、謝るから!許してよー!」


黒兎は別に女性物下着店に入るのを恥ずかしがっている訳では無い。ただ雫というパッと見美少女の付ける下着を一緒に選ぶとなると話は別だ。

なぜならその下着を一緒に選ぶということは、相手の付けている下着を見ることと何ら変わらないからだ。確かに相手の下着は見たいと思うこともあるし、自分と一緒に下着を選んでいくれるくらい信用してくれている雫にも感謝だが、だからこそ自分の欲に勝てなくなった時が怖い。もう、雫の信用を裏切りたくないのだ。


「もう、頑固ね月影くんは」

「ほらいいから、選んできな、下着」

「そうね、じゃあ、こうするわ」


グイッと黒兎の腕に雫が男女が腕を組む形で、しがみついてきた。その時に雫の胸が、体に押し付けられる。

天国かと錯覚するも、今から同居人の下着選びという地獄が待っていることに気づいた時にはもう、遅かった。


「諦めて、選ぶの手伝いなさい」

「お前はいいのか?男に下着見られても」

「私は構わないわ」

「そういや、お前風呂上がり下着だったな」

「誰でも下着を見せていいとは私は思はないわ。痴女では無いもの」

「どういう意味だ」

「あなたにならいいと思ってるの」

「え?」

「あなたは、ほとんど初対面の私に帰る場所をくれた、部屋をくれた、服も、ベッドも、クローゼットに、ネグリジェも…あなたには感謝しているの。その上で信用もしていいとも思っているからこそ今付き合わせているよ」


それを聞いた黒兎は胸の中が、ジーンと熱くなるのを感じた。雫は黒兎のことを信用してくれている。その事が黒兎にとってとても嬉しかった。人付き合いの苦手な黒兎が、初対面の雫という超問題だらけの美少女と同居することになって、黒兎は不安だった。

しかし相手は信用してくれている。なら自分は相手の信用に答えなくてはならない。1年という長い様で短い期間せっかくなら楽しく2人で過ごしていきたい。

ならここで一緒に下着を選ばない選択肢はない!


「あぁ、分かったよ。選んでやる」

「ほんと?助かるわ。人の意見も大事だもの」

「どんなのにするんだ?」

「そうね、大人っぽいのにしようかしら」

「なっなんで?」

「あなたが好きそうだから」

「おい」

「冗談よ、普通の下着にするわ。」

「そうしくれると助かる」


雫は下着を何着か手に取っていく。


「こんな感じかしら」

「まあ、いいんじゃないか。俺、あんまり女性物下着とかわかんないし」

「まあ、そうよね。あと1つ下着欲しいんだけれど」

「いいぞ。どれにする?」

「あまり見られたくないと言ったら?」

「どうして?」

「月影くん、ひとつ言いたいのだけれど」

「なんだ?」

「私は月影くんを信用しているわ。でも女の子には見られたくない下着だってあるのよ。しかもあなた一応前科持ちでしょ?お風呂場のことがあったからこそ、この下着を見られたくないと言っているの」

「大変申し訳ありませんでしたー!」


そう言えば俺前科持ちだったと思いながら見られたくない下着があるとの事なので、お金を雫に渡して会計を待つ。


「今何時かしら」


会計から戻ってきた雫が言う。


「そろそろ3時だな」

「お腹すいたわね」

「そうだな、時間も時間だし、ハンバーガーでも食べて夕食にするか」

「問題ないわ」


遅めのお昼に有名チェーンのハンバーガーを食べて家に戻ることにした。朝からの買い物だったがどっと疲れた黒兎だった。しかしそれと同時に買い物を楽しんでいる自分に気づく。

普段黒兎は買い物はさっさと済まして家に帰りたがるが、今回はそんなことを思う暇さえなかった。それは、今日は2人で買い物だったからなのか、それともなにか理由があるのか…。


電車に揺られ黒兎は考える。そうしてるうちに駅に着き、その後帰路に着いた。

家に戻ると2人ともクタクタですぐに夕食にして、寝ることで決まった。

夕食の材料は帰りのスーパーで買ったのでもう買い出しに行く必要はない。

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