第9話氷の女王とオシャレのセンス


家具屋で家具を買ったあとは服を買うことになった。雫は私服を1着も持っていないので今日、ごっそり買うつもりだ。


「あそこの服屋にしよう」

「いいわよ」


黒兎たちが入ったのは自由という有名チェーン店だった。


「まずはここで春服と夏服を買おう」

「そうね、そうしましょう」


店内に入ってすぐに雫の私服探しが始まった。


「冬矢、お前はどんな服がいい?」

「そうね、着れればなんでもいいのだけれど」

「まぁ、せっかくだしオシャレしてみたら」

「せっかくだし、言葉に甘えさせていただくわ」

「それがいいよ」


雫は淡々と服を選んでいく。黒兎は服のセンスがあまりいい方とも言えないので、服は雫のセンスに一任する予定だ。

表情は硬いがどこか楽しげに服を選ぶ雫を見て思わず、自分の頬が緩む。


「あら?どうしてそんなにニヤニヤしているのかしら」

「いや、なんでもない」

「なんでもない人はニヤニヤしないと思うのだけれど。ちょっと気持ち悪いわ」

「その声で気持ち悪いって言われると結構傷つくね。いや、なに、楽しみそうに服を選んでいるお前を見ると、なんかいいなって」

「気持ち悪いわね。………ほんとそういう所がたらしなのよ」

「おい、気持ち悪いのあとなんか言ったか?」

「言ってないわよ。鈍感主人公」

「誰が鈍感主人公だ!」


雫はなんか言ってた気がするがどうせいつもの俺の憎まれ口だろうとスルーする。


「おい、そろそろ選べたか?」


雫が服を見始めて、40分ほど経った。


「ええ、いいわ」

「よし買うか、ちなみにどんなん買ったんだ?」

「こんな感じかしら」


雫か見せてきたのは、オシャレに自信がない俺でもわかる絶妙にダサいTシャツだった。

よく分からないキャラがプリントされている。


「あの…冬矢さん…これ、本気で言ってます?」

「私はいつだって本気よ」


そう、雫はオシャレのセンスが黒兎よりなかった。どこまで世間離れしているのかと呆れる反面、氷の女王がこんな感じという素の部分を見れて、自分だけ優越感に浸っている。そしてそんな雫を可愛いとも思ってしまった。


「まぁお前のセンスはもうそれでいいよ。元からお前に任せるつもりだったし、だから俺が少し服をプレゼントしてやる」

「まぁ、ステキ、見直しちゃった」


相変わらずの感情のない声で黒兎を煽てる雫だが、黒兎は単純に雫に服をプレゼントするのではなく、雫の買う服だけだとどこかに出かける時に、雫がバカにされそうだったからだ。

何故かそれは黒兎が嫌な気持ちになるのでただの自己満である。

そう言って黒兎は、普通のジーパンと、Tシャツ、それにラフめなパーカー、それに雫が欲しいそうに見ていた麦わら帽子を買ってやった。


「その帽子が欲しそうってなんでわかったの」なんて雫が聞いてくるので、「何となく見てればわかる」と言うと「あなたってそういう所あるわよね」とよく分からないことを言っていたが、雫は嬉しいそうに(雰囲気)していたので黒兎としては満足だった。



「月影くん今日はありがとう」

「締めに入ってるけど、まだ寝巻きとか下着を買わないといけないぞ」

「下着は月影くんに選んでもらおうかしら」

「どうして?」

「そりゃ月影くんも自分好みの下着を使って色々したい…でしょうし…」

「あの、それ自分で言ってちょっと恥ずかしがらないでください。こっちも恥ずかしい。あともう風呂場のことは許して!」

「恥ずかしいがってなどいないわ。私はいつでもクールビューティよ」

「クールすぎるから氷の女王なんて言われるんですよー」

「そんなことより次はどこに行くのかしら」

「そんなことよりって…。そうだな次は寝巻きだ」

「それじゃ行きましょうか」


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