第8話氷の女王と住めば都
ショッピングモールに着いた2人はとりあえず、黒兎の家で雫が生活できるように日用品を買うことにした。
「月影くん。まずはどの日用品を買うのかしら」
「そうだな、まずは…ベッド買うか」
「ベッド!?ベッドだなんて…そんな///やらしいわ」
「文字使って雰囲気出そうとしてもバレてますよー。感情こもってないからって文字に頼らない」
「文字?あなたは何を言っているのかしら」
「しらを切るのだけは上手いよな、お前」
「まぁとりあえず寝るところの支度は大事よね」
「そうだな、家具屋行くか」
「ニ☆リね」
「☆トリだな」
「隠してる意味ないのだけれど」
「お前は一体何を言ってるんだ」
「あなたも相当上手いわよ、しらを切るの」
そんなことで最初に見るのは家具屋のニト☆になった。 えっ?なんで今日そんなにメタイのかって?深夜だよ。
話し合いの末、家具屋では、勉強のできるテーブル、ベッド、枕、ライト、それと1つ小さめのクローゼットを買うことになった。
雫の部屋は元が物置部屋なのでそこそこ広い。
収納なども元からあるので最低限の家具で支障は無さそうだ。
「ベッドはどれがいい?」
「寝れればそれでいいわ」
「なんともまぁ淡白な答えだこと」
「実際ベッドにこだわりはあまりないのよね。
硬さも慣れれば問題ないわ。住めば都よ」
その後「まず屋根があるところで寝れること自体都よね」なんてブラックジョークが飛び出したけどスルーの方向で。
雫にいちいち突っ込んでいるとキリがないのだ。
「それじゃ冬矢が気に入ったの買えよベッドの予算は3万円だ。俺の両親がお前の日用品代を出してくれるとよ」
「まあ、嬉しいわ。あなたの両親には足を向けて寝れないわ」
「そんな時でも感情でねぇーな」
「私のアイデンティティみたいなものだから」
「そんなことアイデンティティにしてどうすんだよ」
「ダメ…かしら?」
「なんでそれは可愛いく言えるんだよ」
「私は可愛く言ったつもりは無いわ。私の素が可愛いのよ」
「そこまで言われるとなんも返せねぇな」
「ふふっ」
「あっ今笑った!」
「笑ってないわ」
「笑ってただろう?」
「しつこい男は嫌われるのよ」
「まだ2回目なのに」
雑談しながら雫はベッドを選んでいく。
ふとした時に出る雫の表情や温度のある声に少しドキッとしてしまう。どうもあの氷の女王から生まれる笑顔はそれだけで男子の理性を崩壊させる兵器なのだ。
「月影くん、このベッドがいいわ」
そう言って雫が選んだのはTheスタンダードタイプのベッドであった。
「ん?そんなんでいいのか?」
「ええ、これがいいのよ」
「なんで?まあ、冬矢がいいならいいけど」
「そうね、強いて言うなら、感謝を忘れないようにかしら」
「感謝を忘れない?」
「今までは、その場しのぎで寝ていたのよ、だからこそこうやって普通のベッドで普通に寝ることの出来るありがたみを知るためね」
「そういう事か」
「あと、高いベッドにするともし、月影くんが狼になって襲って来た時汚してしまうともったいないわ」
「うん。その言葉のせいで今までのしみじみした雰囲気が壊れたね。もったいないね」
しかし黒兎は気づいている。最後のは照れ隠しであり、本心は、感謝を忘れないようにというものであることを。そんなことを聞いてしまえば雫に優しくしてやりたくなる。雫は無表情の冷たい奴ではなく、ただ感情を出すのが苦手なだけで感謝や、人をいたわることを忘ない良い奴なのだ。
雫と過ごしてまだ1日しか経っていないが、雫は決してただの冷たい奴ではないことが良く分かる。
「月影くん枕はこれがいいわ」
「了解」
「テーブルはこれにしようかしら」
「いいと思うぞ」
「ライトはこれでいいわね。LEDのやつよ」
「へいへい」
雫は残りの家具を淡々と選んでいく。
しかしどれも普通のもので、決して欲張らず、ただ必要最低限のものだけを選んでいく。
「クローゼットはこれでいいかしら」
「そうだなー…」
「何か問題があるのかしら。言ってくれたら直すわよ」
「そうだな。このクローゼットにしろ」
俺が選んだのは少し高めの可愛いクローゼットだった。
「そのクローゼットは予算を超えてしまうわ」
「いいよ別に」
「でも結構いい値なのだけれど」
「いいよ」
「月影くんの両親に迷惑はかけられないわ」
「なら俺にかけろ。俺がそのクローゼット買ってやる」
「どうして?」
「お前も女の子だ。だからこそ部屋にひとつくらい可愛いものがあってもいいだろう?余計なお世話かな?」
「…そんなことないわ。嬉しい。ありがとう」
「あなたって本当に…」と何か雫は言っているが今家具の運搬の話をしているのでよく聞こえなかった。
その後買った家具は家までトラックで運んでもらうことにした。明日の昼頃には届く予定だ。
「次はどこに行くのかしら」
「服を買うか」
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