第7話氷の女王とウキウキショッピング

カンカンカン、トントントントン手際よく黒兎は料理を進めていく。

今日の朝ご飯は、ホットサンドだ。

今ホットサンドのレタスを切っている。


「あら、もしかして黒兎くんってお料理上手なのかしら?」

「まぁ、出来なくもないよ」

「とても手際が良くて見直しちゃった」

「ありがとよ。あと気になってたんだけど、その感情のない声色どうにかならないのか?」

「そうね…努力するわ」

「努力って…あと表情とかもっと笑ったりとか出来ないのか?」

「やってみるわ」


にィっと引きつった笑顔を雫はする。もはや笑っているということすら分からないような笑顔だ。


「どう?できているかしら」

「うん。できてないね」

「あら?どうしてなのかしら」

「まあ、表情とか出すようにした方がいいぞ」

「どうして?」

「せっかくの可愛い顔が台無しだろ。せっかくクラス内でも人気が高いのにもったいないぜ」

「月影くんって本当に…とんだたらし野郎ね」

「なんでだよ!」


そんなことを話してる間にホットサンドができ上がる。


「召し上がれ」

「いただきます」

「美味しいわ」

「あらどうも、でも感情こもってないよ」

「私としては込めているつもりなのだけど」

「そうですかい」

「感情がこもってなかったとしても美味しいのは本当よ」

「そりゃ、よかった」


素直に自分の料理を食べて美味しいと言ってくれるのはくすぐったい気もするが、言われた本人は嬉しいものだ。

あと、表情のない子かと思っていたが、ご飯は美味しそうに食べるんだなとも思った。

いかんせん表情は固いが。


「それじゃ準備してくれ冬矢」

「準備?」

「着替えとか、財布とか」

「着替えもねぇ、財布もねぇ、お金はそもそも持ってねぇ」

「吉幾三風に言ってもな」


今どきの女子高生で吉幾三って。


「忘れてた。どうすんだ?女物の服なんてこの家にはないぞ」

「そうねぇ、なら制服はどうかしら」

「制服?」

「土曜日なら制服を着ていても、土曜日もある学校とかもあるから不自然ではないと思うのだけれど」

「まぁ、それでいいか」

「月影くんも制服着てね」

「なんで」

「私だけ制服は不自然よ」

「そうだな。仕方ないし着てやるか」

「ありがとう。これで傍から見たら制服デートね」

「余計なこと言わんでいい」

「私、楽しみだなー制服デート」

「感情こもってないですよー」


こんな風に雑談していると思うかもしれないがこれは2人なりの距離感の探り合いなのだ。


雫と制服に着替えちょと隣の駅まで歩く。

その時に周りの視線が集まるのはやはり、雫はとても綺麗だということを物語っている。

見る人見る人、すれ違う度みな、雫を見ている。


「月影くん、視線気になるかしら」

「ん?まぁな」

「そう、まぁ私、自分でも身なりには自信あるもの」

「そんなもんなのか?」

「ええ、見る人皆私に釘付けよ」

「自分で言うか?それ」

「逆に、「そんなことないですよ。私、顔とか自信ないしー」みたいな感じの方が私は嫌なのだけれど。自分の容姿に自信があるならそれを認めるくらいの度量がなくっちゃ。ぶりっ子みたいなのが1番イタいのよね」

「まぁ確かに。それにお前はその方がいいよ」

「どうして?」

「なんか自信あるお前の方が見ていて清々しいよ」

「まぁ、ならこれからもこのスタンスを貫くわ」

「あとはだな…」

「感情出せ、でしょ」

「そうだよ。せっかくの美少女っぷりが台無しだぜ」

「やっぱりあなたは、たらし野郎よ」

「なんでだよ!」


雑談しながら歩いていると駅に着いた。いつもは1人で駅まで黙々と歩いていたが、誰かが隣にいると意外と隣の駅も早いものだと思った。


「さぁーこれからお楽しみの制服デートよ」

「こころこもってないですよー」


それから2人は電車に20分ほど揺られ都会の方のショッピングモールに着いたのだった。

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