第103話 最善の選択
ヘリオさんが開けた穴から、僕たちは廃墟の中へ入ると、視線の先に大量の血を流すコニアさんの姿があった。
「コニアさん!! マユウ! 早く!」
悲痛な表情でリアトリスさんが駆け寄り、彼女の脈を測る。するとどうやら息があったようで、彼女に続いて近づいたマユウさんが、ポツリと呪文を唱えた。
「ん、【
瞬間、コニアさんへと大量の光が集まり、だんだんと傷が治っていく。そして数瞬の後、目に見える傷が全てなくなった。その姿に、マユウさんがうんと頷く。
「ん、これなら命に別状はない」
「よかった!」
僕たちはホッと息を吐く。……と、ここで──
「……ん」
「コニアさん!」
マユウさんの回復のおかげか、コニアさんが目を覚ました。彼女は周囲を見回すと、ポツリと声を上げる。
「どうやら助かったようさね」
「よかった! 本当によかった!」
「色々と心配かけたね。……それよりもどうかイヴを助けてあげてほしいさね……」
「イヴはどこに!?」
「あたしが彼女を鎖に繋いだ後、ヴォルデがその鎖を引っ張って奥の部屋へ……」
「くそっ! ヘリオさん!」
「ああっ! グラジオラス! レフトと一緒に奥へ!」
「おう!」
「くっ……なぜこの場所が……っ! 行かせると思う?!」
言葉とともに凄まじい形相のネフィラが、複数の魔人形を召喚して行く道を塞いだ。
「ちっ! リアトリス! ならお前が──」
「ダメっ! 【転移】が使えないわ!」
「たぶん外にあった結界のせい。私たちの知る物とは大きく違うから、簡単に解除はできない」
「さすがに用意周到だな」
ポツリとそう呟きながらヘリオさんが頭を悩ませていると、ここで突然グラジオラスさんが声を上げた。
「レフト! 俺らが道を開ける! だからその隙に向こうへ走れ!」
「グラジオラスさん……はい!」
「おい、ジオ!」
さすがにその展開を、しかもグラジオラスさんの案として伝えられるとは思っていなかったのか、ヘリオさんが驚きに目を見開く。しかしそんな彼と視線をぶつけながらも、グラジオラスさんは意見を変える気はないとばかりに、はっきりとした声音で声を上げる。
「ヘリオ! それが今回の最善だ!」
「チッ、わぁったよ! マユウ、リアトリス、やるぞ!」
「ほんとに?」
やはりマユウさん、リアトリスさんも不安な表情を浮かべる。対しヘリオさんは力強く声を上げた。
「普段あまり主張しねぇジオが、ああもはっきりと言うんだ。なら、大丈夫だ」
「そうね。不安は不安だけど……やりましょう」
「ん」
言ってリアトリスさん、マユウさんが頷く。そして──
「行くぞ!」
という声と共に、皆さんが一斉に魔人形と呼ばれた化け物、ネフィラと対峙する。
流石火竜の一撃というべき華麗な連携で相手を崩していき、あっという間にスペースができる。
……今!
「……ッ! 今だレフト!」
ヘリオさんの声を浴びながら、僕はスペースに向けて走る。周囲を警戒しつつも、しかし皆さんに全幅の信頼を持ちながら走り、そして数瞬の後、ついに僕は無傷でスペースを抜けた。
「レフト、頼んだぞ!」
そのままイヴがいるという方向へと走り続けると、ここで後方からそんな声が聞こえてくる。僕はこれに「任せてください!」と力強く返すと、その勢いのままイヴの元へと向かった。
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短くて申し訳ないです。
2章ラストスパートということで、次話から1話が長くなります。
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