第89話 少女たちとの交流2
翌日。この日、僕はフリーだったため、思考共有はできずともお互いの指示がしっかりと伝わるようにと、魔物達と交流することにした。
早速コニアさんにその件を相談すると、裏庭を使ってもいいとのこと。
僕は彼女に感謝を伝えると、1人裏庭へと向かい、すぐさま彼らの名を唱える。
「ライム、ガブ、実体化!」
するといつものように光が発生したあと、僕の眼前にライム、ガブの姿が現れた。
2匹ともこれから何をするかはわかっていないが、それでも呼び出してくれたのが嬉しかったのか、凄く楽しげな様子である。
そんな上機嫌な2匹に、僕は声を上げる。
「ライム、ガブ。今日は戦闘は一切行わず、ただ一緒に遊ぼうと思うんだけど、どうかな?」
僕の言葉に、ライムはぴょんぴょんと跳ね、ガブはぐわんぐわんと顔部分を揺らす。──どうやら大賛成のようだ。
「よし! それで、なにして遊ぼうか?」
僕がそう問いかけると、ライムが突然ピョンと大きく跳ね、それをガブが花弁でキャッチした。
「…………?」
謎の行動に、僕が首を傾げていると、ここで突然ガブがライムを投げつけてきた。
「ちょ……!」
僕は慌てて、それをキャッチする。
「ガ、ガブなにやってるの!?」
言ってガブの行動に目を見開く僕に対し、ガブと、そしてなぜかライムまでもが楽しげな感情を伝えてきた。
「…………えぇ、ライムもそれでいいの?」
両手で抱え、眼前へと持ち上げたライムにそう問いかけると、心の底から楽しいとばかりに触手で丸を作ってみせた。
「な、なら。いくよ、ガブ」
楽しいならいいかと、僕はガブに向け優しくライムを投げた。
◇
と、そんな感じで謎の遊びをすることもあったが、それでもなんだかんだ楽しい時間を過ごしていると──
「れふとくん、なにしてるの?」
ここで、裏庭に続く道からひょこりとりゅーちゃんが姿を表した。
「あ、りゅーちゃん。今ね、僕のお友達と遊んでるんだよ」
「おともだち?」
言いながら、りゅーちゃんはじーっとライムとガブを見つめる。
当然だが2匹は魔物であり、特にガブに関しては中々凶悪な見た目をしてる。
故に未だ幼い彼女は、2匹のことを拒絶するのではないか。
そう僕は予想していたのだが、りゅーちゃんはあっけらかんとした様子で口を開く。
「りゅーちゃんもあそんでいい?」
「うん、もちろんいいよ」
言って僕が頷くと、りゅーちゃんは嬉しそうにニコリと笑った。そして、一切の警戒もせず、ライムとガブの方へと近づいていく。
「りゅーちゃんだよ。よろしくね」
彼女の挨拶を受け、ライムは触手をうにょうにょと伸ばし、ガブは花弁の部分でりゅーちゃんへと触れた。
魔物の感情がわかるのは僕だけなのだが、どうやらその行動に2匹の好意を感じとったのか、りゅーちゃんは嬉しそうに笑った。
と、ここで──「りゅーちゃん抜け駆けー!」という声が聞こえてくる。
思わずそちらへと目を向けると、そこにはイヴさんを含む年少組の少女たちの姿があった。
「みんなも遊びにきたんですね」
「はい! 裏庭から楽しそうな声が聞こえたので……つい」
そう言って恥ずかしげに笑う少女に続き、イヴさんが心配そうに声を上げる。
「あの、お邪魔じゃないですか……?」
イヴさんたちからすれば、僕がここでなにをしていたのかわからないのだ。だから邪魔じゃないかという気持ちもわかる。
しかし、今回の目的は元々2匹と遊ぶだけであったため、そこに少女たちが加わったところで別段問題はなかった。
「大丈夫ですよ。一緒に遊びましょう」
少女たちが歓喜の声を上げる。
「っと、その前に紹介しましょうか」
言葉の後、僕は2匹を呼んだ。
「この子たちは僕のお友達で、グリーンスライムのライムとマンイーターのガブです。2匹ともとても優しい魔物なので、是非仲良くしてあげてください」
その声に「ガブちゃん、ライムちゃんよろしくねー」と少女たちが口々に言う。
やはりこの子たちもりゅーちゃん同様魔物相手に一切物怖じしないようだ。
それはこの場において凄く嬉しいことだが、同時に危険も孕んでいるため、僕は念のため忠告をしておく。
「この子たちは僕のお友達なので大丈夫ですが、本来魔物はとても恐ろしい生き物です。なので、くれぐれも野生の魔物には不用意に近づかないようにしてくださいね」
僕の忠告に対し、少女たちは真剣な面持ちで頷いてくれる。この様子であれば、きっと大丈夫だろう。
「じゃ、遊びましょうか」
その言葉を受け、少女たちは「わー!」と楽しげにこちらへ走り寄ってきた。
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20時ごろもう1話投稿します。
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