第87話 キャノンフラワーの検証

 ある程度安全な草原へとやってきた僕たちは、早速検証を行うことにした。


 まずは登録した幾つかの植物のうち、最も戦闘で期待できそうなキャノンフラワーからだ。


「グラジオラスさん、よろしいですか?」


「おう、いつでもいいぞ!」


 キャノンフラワーがどのような状態で実体化されるかわからないため、誤射する可能性を考慮して、そばにはグラジオラスさんが立っている。

 しかし僕の手に触れる形でしか実体化できないことを考えると、どうしても不安は拭えず、思わずごくりと息をのむ。


 ただその不安も少しのこと、改めてそばにグラジオラスさんがいるのだと自分に言い聞かした後、僕は右手を地面に触れさせた状態でキャノンフラワーを実体化した。


 瞬間、キャノンフラワーが地に植わった状態で現れる──今にも射出されそうなほど、大きな実を生らせながら。


「グラジオラスさん、これは……」


「あぁ、刺激が加わればすぐにでもって感じだな!」


 グラジオラスさんの言葉を耳にしながら、僕は疑問を覚えていた。


「色々活用できそうで嬉しくはありますが……なぜ、この状態で実体化したのでしょう」


 これまで実体化した植物もその現れ方は様々であったが、総じて言えることは、どれも青々とした葉が生い茂っていた。

 しかし、今回のキャノンフラワーはどうか。確かに大きな実を実らせてはいるが、草花はとうに枯れてしまっている。


「確かに、謎だ!」


 そう、これはあまりにもおかしい。

 まるで、僕が最も活用しやすい姿形で現れているようで──ご都合主義と言ってしまえば簡単だが、実際に転生をして今ここに生きている以上、その言葉で片付けることはできない。


「ギフトにも、未だ僕たちの知らないなにかがあるのでしょうね」


 ──しかし、やはり現状の僕ではその理由はわからないため、ひとまず未だ不明として、話を進めることにした。


「なんにせよ、これは好都合なので、このまま検証を続けましょうか」

「そうだな! それで、どうする?」


「念のため、種を射出する様子を確認したいです。あとは威力も確認したいのですが……グラジオラスさんに再び受け止めていただくことって可能ですか?」


「おう、任せておけ!」


「ありがとうございます! よし、まずは……おいで、ライム!」


 特に意味はないが、なんとなくその名を呼びながら、グリーンスライムの魔物──ライムを呼び出す。


「ライム、ちょっと手伝ってほしいんだ。えっとね、僕が合図を出したら、こっちの方向からキャノンフラワーに触れてほしいんだ。どう、できるかな?」


 目前のライムにそう問いかけると、ライムの方から感情が伝わってくる。


 それが「まかせてー」と言っていそうであったため、僕たちは今一度茎の曲がっている方向を確認すると、射出されるであろう実の真正面へと移動。

 そして威力の比較ができるよう、先ほど種を受け止めた時と同程度の距離へと移動した。


「グラジオラスさん、いけますか?」


「【剛体グラジラ】! おう、いつでも大丈夫だ!」


 グラジオラスさんの言葉に僕はうんと頷くと、ライムに聞こえるように大きな声を上げた。


「ライム、お願い!」


 その言葉を受け、ライムがキャノンフラワーへと優しくたいあたりをし──瞬間、種が射出された。その種は空気を切りながら物凄いスピードで飛来し、グラジオラスさんの元へ到達。

 その種を、グラジオラスさんはその場から一歩も動くことなく、しっかりと受け止めた。


「グラジオラスさん!」


「おう、大丈夫だ! そんで、威力も……先ほどと相違ない!」


「それじゃー!」


「実体化したキャノンフラワーでも、威力だけなら高ランクの魔物に通用しそうだ!」


「やったー! となると、問題は射出方向がどうかですね」


 言葉の後、僕はグラジオラスさんに了承を取り、キャノンフラワーを実体化しては収納しを何度か繰り返した。

 結果──茎の曲がる方向は一定ではなく、その時々によって違っていた。


 植物は大本が自然のものである以上、そういった誤差も当然ありえるが……どうせ実が熟した状態で実体化するなら、曲がる方向も一定にしてよ! と、僕は誰でもなく1人そうごちるのであった。


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20時ごろもう1話投稿します。

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